クレジットカードには、法人のカードと個人のカードの2種類があります。
法人カードのなかには、法人だけでなく個人事業主でも作れるカードもあり、「事業者向けのクレジットカード」だと言い換えることができます。
個人事業主の場合、個人用のクレジットカードでも十分だという方もいるかもしれませんが、個人事業主も法人カードを持っていると、さまざまなメリットがあります。
本記事では、個人事業主が法人カードを持つメリットやデメリット、審査基準などについて解説していきます。
個人事業主が法人カードを持つメリット
個人事業主が法人用のクレジットカードを持つメリットは、主に以下の6つです。
- ビジネスとプライベートの支払いを区別できる
- 経費の管理が楽になる
- 支払いの度にポイントやマイルが貯まる
- ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実している
- 資金繰りを安定させられる
- カードの利用限度額が大きい
経費精算の手間を減らせるだけでなく、ポイントやビジネス向けの優待などお得なメリットも多数あります。
ビジネスとプライベートの支払いを区別できる
個人事業主がビジネス用に別のクレジットカードを持っていれば、プライベートとの支払いを区別できて便利です。プライベートとビジネスの支払いのどちらも1枚のカードで済ませてしまうと、後日確認するときに判別しづらくなってしまいます。経費になる支払いをする際はビジネス用のクレジットカードを必ず使うようにすれば、すぐに経費の詳細や総額が把握できます。
経費の管理が楽になる
個人事業主がクレジットカードを持てば、経費の管理が楽になります。例えば、経費精算システムとカードを連携させれば、カードを使うたびに自動で仕訳までしてくれます。
経理業務を効率化して、本業の時間を最大化することが可能です。
支払いの度にポイントやマイルが貯まる
ビジネス用のクレジットカードを持っていれば、支払いの度にポイントやマイルが貯まってお得です。そのポイントやマイルを使って、事務用品や出張のための航空券を買えば、多少の経費削減ができます。
例えば、ポイント還元率1%のクレジットカードで月30万円分の仕入れをしたとしましょう。すると3,000円分のポイントが貯まります。このポイントを足りない事務用品や商品の仕入れなどに使えば、その分コストを下げられます。
開業したての個人事業主であれば、可能な限りコストは下げたほうがよいので、支払いはクレジットカードに統一するとお得です。
ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実している
個人事業主向けのクレジットカードのなかには、ビジネスに使える付帯サービスや優待が充実しているものがあります。実際にある付帯サービスや優待の例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 会計ソフトや福利厚生サービスを優待価格で使える
- 出張時に空港内のラウンジが無料で利用できる
- 接待で使える高級レストランのコースを1名分無料にできる
- ビジネスに便利な指定サービスの支払いに利用でポイント還元率アップ
ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実しているカードを活用すれば、事業を有利に進めることが可能です。
資金繰りの改善に繋がる
個人事業主がクレジットカードを持っていれば、決済から実際の支払いを遅らせられるため、資金繰りを安定させることができます。決済から支払いまで約1カ月の期間があるので、キャッシュが減るタイミングを遅らせることが可能です。
開業したてだったり、まだ事業規模が小さかったりする個人事業主であれば、クレジットカードを活用して健全な資金繰りを行うとよいでしょう。
カードの利用限度額が大きい
法人カードは、個人カードよりも利用限度額が大きい傾向です。一般的な個人カードの利用限度が最大100万円前後ですが、個人事業主向けの法人カードであれば最大500万円程度のものも珍しくありません。ステータス性の高いカードになれば、そもそも上限が決められていないものもあります。
多額の仕入れが必要な事業をしている個人事業主でも、安心してクレジットカードで支払いができます。
個人事業主が法人カードを持つデメリット・注意点
個人事業主が法人用のクレジットカードを持つデメリット・注意点は、主に以下の6つです。
- 個人カードに比べてポイント還元率が低め
- 年会費がかかる場合が多い
- リボ払いや分割払いなどができない場合がある
- クレジットカードを使ったら正しく記帳する必要がある
- プライベートの支払いに使うと仕訳が面倒になる
- 1枚のクレジットカードを他の人と使いまわしてはいけない
個人用のクレジットカードと比べると、ポイント還元率や年会費などで少し劣ります。また、ビジネス用のカードとして利用するので、個人用との使い分けが重要です。
個人用のクレジットカードに比べてポイント還元率が低め
個人事業主向けの法人カードのポイント還元率は、個人用のカードに比べて低めです。
個人用のカードのポイント還元率は1%が目安となりますが、個人事業主向けのカードは0.5%が目安です。ポイント還元率の差が0.5%あると、仮に10万円分の支払いをした場合、もらえるポイント数は500ポイントも減ってしまいます。
とはいえ、個人事業主向けのクレジットカードの中でも、リクルートポイントが1.5%の還元率でたまる「Airカード」など、高いポイント還元率のものもあります。
年会費がかかる場合が多い
法人カードは、個人カードに比べて年会費がかかる場合が多いです。年会費は経費にできますが、一定のコストになってしまいます。
とはいえ、個人事業主向けのクレジットカードでも、「三井住友カード ビジネスオーナーズ」など、年会費が永年無料のものもあるので安心してください。少しでもコストを減らしたい個人事業主は、年会費が永年無料のカードを選ぶとよいでしょう。
リボ払いや分割払いができない場合がある
法人カードは、リボ払いや分割払いなどの一括払い以外の支払い方法に対応していない場合があります。決済と支払いのタイミングが違うとしても、一括払いしかできないと、逆に資金繰りが悪化してしまうかもしれません。
実際にクレジットカードを申し込む前に、どのような支払い方法が使えるか確認しておきましょう。
クレジットカードを使ったら記帳の方法に注意が必要
法人カードを利用したら、確定申告の申告方法にあわせて正しく記帳する必要があります。
具体的には白色申告をするのか、青色申告をするのかで変わります。白色申告をする場合は単式簿記、青色申告をする場合は複式簿記での記帳が必要です。
→収支のみを記録する単純な記帳方法
複式簿記
→借方と貸方を用いながら複数の勘定科目を使って行う記帳方法
単式簿記の記帳はシンプルですが、複式簿記は慣れていない場合手間がかかります。例えば、単式簿記であれば、以下のように取引の日付と金額、概要さえあれば問題ありません。
■単式簿記:6月1日に7,000円のオフィス用品をクレジットカードで購入した
日付 | 金額 | 概要 |
---|---|---|
6月1日 | 7,000円 | オフィス用品 |
上記の形式で、取引を記録していくだけです。
しかし、複式簿記の場合は、取引の内容を借方と貸方に分け、勘定科目を用いて記帳する必要があります。また、カードの利用したタイミングと利用料金の引き落とし日のタイミングで、仕訳は別々にする必要があります。
■複式簿記:6,000円のオフィス用品をでクレジットカードで決済した日
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 6,000円 | 未払金 | 6,000円 |
■複式簿記:クレジットカードの利用料金が普通預金の口座から引き落とされる日
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 6,000円 | 普通預金 | 6,000円 |
複式簿記は多少面倒ですが、青色申告をすれば最大65万円の特別控除を受けられて節税につながります。個人事業主向けのクレジットカードを作って利用したら、複式簿記で記帳して青色申告をするのがおすすめです。
なお、法人カードの利用分が事業用口座から引き落とされる場合は、「未払金」として処理する必要はなく、以下のように仕訳を簡略化できます。
■複式簿記:6,000円のオフィス用品をでクレジットカードで購入した日
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 6,000円 | 普通預金 | 6,000円 |
ただし、引き落としが年をまたぐ場合は簡略化できないので注意してください。
プライベートの支払いに使うと仕訳が面倒になる
個人事業主向けのクレジットカードをプライベートの支払いに使ってしまった場合、仕訳が面倒になります。具体的には、その支払いだけ「事業主貸」という勘定科目で仕訳しなければいけません。
通常は「未払金」という勘定科目で済むにもかかわらず、一部だけ「事業主貸」にする必要がでてきます。個人事業主向けのクレジットカードは、プライベートの支払いに使わないようにしましょう。
逆に、個人カードを事業の支払いに使った場合は、「事業主借」で仕訳をしなければいけません。こちらも手間が増えてしまうので注意しましょう。
1枚のクレジットカードを他の人と使いまわしてはいけない
1枚のクレジットカードを、従業員などの他の人と使いまわさないようにしましょう。名義人以外がカードを利用してしまうと、カード会社との契約違反となる可能性があります。最悪、詐欺罪に問われるかもしれないので厳重に注意してください。
他の従業員にもカードを渡したい場合は、必ず追加カードを作成するようにしましょう。なお、従業員用のカードを作るのが有料だったり、作成可能な枚数が限られていたりすることもあるので、事前に確認しておくのがおすすめです。
個人事業主向けの法人カードの審査基準
個人事業主向けのクレジットカードの審査基準は、主に以下の3つが重要視されています。
- 本人の信用情報
- 営業年数
- 業績や財務状況
本人の信用情報がみられるのは個人用のカードと同様です。ただし、他にも営業年数や業績、財務状況など、ビジネス用のカードならではの審査項目があります。
また、法人カードには、ビジネスカードとコーポレートカードの2種類があります。
・従業員20名未満を目安とした中小企業や個人事業主向けのカード
・個人用のカードよりも利用可能額が大きく、追加カードも発行可能
・事業主の信用情報が審査に大きく影響する
(コーポレートカード)
・従業員20名以上の企業や大企業向けのカード
・ビジネスカードよりも利用可能額が大きく、追加カードも発行可能
・法人の財務状況や業績なども審査に大きく影響する
個人事業主の方であれば、ビジネスカードが選択肢に入ってくるので、次に解説する審査基準も参考しながら、検討してみてはいかがでしょうか。
本人の信用情報
ビジネスカードでは、事業主本人の信用情報が審査結果に大きく影響します。
→ クレジットカードやカードローンなどの信用取引の申込履歴や利用履歴
信用情報に傷があると、クレジットカードの利用金額をしっかり支払ってくれないのではとカード会社に思われてしまい、審査に落ちる可能性が高くなります。
もし以下のようなことを過去にしてしまった経験がある方は、信用情報に傷がついているかもしれません。
- クレジットカードやローンの支払いを延滞・未払いした
- 携帯料金の分割払いを延滞した
本当に傷がついているか確認したい方は、インターネットから信用情報機関に開示請求をすれば知ることができます。
営業年数
個人事業主としての営業年数が長くなるほど、今後も安定して事業が続けられるとみなされて審査に有利に働きます。
とはいえ、開業したばかりだとしても、審査に通る可能性は十分あるので安心してください。開業間もなくても、ビジネスカードに申し込んでおくのをおすすめします。
業績や財務状況
業績や財務状況が良い状態が続いていれば、クレジットカードの利用金額の支払いも滞りなく行われると思われて、審査が有利になります。
とはいえ、赤字が続いていたとしても、必ず審査に落ちるとは限りません。他の審査基準もみられるので、まずは一度申し込んでみるとよいでしょう。
個人事業主におすすめのクレジットカード4選
個人事業主向けのクレジットカードは非常に種類が豊富で、どのカードを選ぶべきか迷ってしまう方も多いでしょう。ここでは、4枚のおすすめできるビジネスカードを紹介していきますので、是非、参考にしてみてください。
上記のカードはどれも高いスペックを誇っており、開業したての個人事業主にもおすすめです。それぞれのカードについて、詳しく解説します。
また、上記はあくまで厳選した4枚で、他にもおすすめできるカードがあります。詳しくは以下の記事で紹介しているのでぜひ参考にしてください。
三井住友カード ビジネスオーナーズ:年会費無料
カード名 | |
---|---|
年会費 | 永年無料 |
ポイント還元率 | 0.5% |
ETCカード | あり |
付帯保険 | 海外旅行:最高2,000万円 ※その他6種類の保険に変更可 |
締め日・支払い日 | 15日締め・10日支払い 月末締め・26日支払い |
優待サービス | ・福利厚生代行 ・ビジネスサポート |
カードブランド | Visa、Mastercard |
おすすめできる人 | ・年会費無料のカードがほしい ・従業員へのカード発行を考えている |
詳細 |
三井住友カード ビジネスオーナーズは年会費無料かつポイント還元率0.5%、海外旅行の付帯保険もついていて、バランスの良いビジネスカードです。
さらに、レンタカーや事務用品などのビジネスで役立つサービスを割引価格で使える優待もついています。
クレジットカード選びに時間をかけたくない人は、とりあえず三井住友カード ビジネスオーナーズを選べば損はしません。
Airカード:基本のポイント還元率1.5%と高い
カード名 | |
---|---|
年会費 | 5,500円(税込) |
ポイント還元率 | 1.5% |
ETCカード | あり |
付帯保険 | 海外ショッピング:最高100万円 |
締め日・支払い日 | 15日締め・10日支払い |
優待サービス | ・リクルートのサービスでの利用でポイントアップ |
カードブランド | JCB |
おすすめできる人 | 基本のポイント還元率が高いカードがほしい |
詳細 |
Airカードは、基本のポイント還元率が1.5%と高い点が魅力です。加えて、じゃらんやホットペッパーグルメなどのリクルート系のサービスの支払いに利用すると、さらに多くのポイントが貯まります。クレジットカード決済額が多い方にとっては、非常にお得です。
利用に応じてたまるリクルートポイントは、リクルート系のサービスやAmazonの支払いに使ったり、dポイントかPontaに交換したりできるので使い道に困ることはないでしょう。
ただし、2年目以降、年会費が5,500円かかってしまうので、利用想定額を考えながら、検討する必要はありますが、とにかくポイント還元率が高いカードがほしいという方は、Airカードがおすすめです。
ライフカードビジネスライト・プラス(スタンダード):最短3営業日で発行可能
一般的なカードは申し込みから発行まで1週間ほどかかりますが、ライフカードビジネスライト・プラス(スタンダード)は、最短3営業日という短期間で発行できる点が特長です。
また、年会費が無料なので、余計なコストがかかることもありません。
他にも、福利厚生サービスや海外アシスタンスサービスなどビジネスに便利な付帯サービスが複数ついています。
ライフカードビジネスライト・プラス(スタンダード)は、できるだけ早くクレジットカードが手元にほしい人におすすめです。
マネーフォワード ビジネスカード:マネーフォワードのサービス利用でポイント還元率3%
マネーフォワードビジネスカードは、経理業務の効率化に役立つマネーフォワード関連のサービスの支払いに利用すると、ポイント還元率が3%まで上がります。マネーフォワードクラウド会計は代表的な会計ソフトの1つですので、個人事業主にとっても非常に便利です。それをお得に利用できるので、おすすめできる1枚となっています。
ただし、付帯保険がついていなかったり、ETCカードが発行できなかったりする点がデメリットなので、他のカードで補うようにするとよいでしょう。
マネーフォワード関連のサービスを使う方は、マネーフォワードビジネスカードを持っておくのがおすすめです。
まとめ
個人事業主にとっても、クレジットカードを作るメリットは多数あります。経費管理が楽になるだけでなく、ポイントや付帯サービスなどで有利に事業を進めることも可能です。
開業したてでも審査に通る可能性はあるので、検討してみてはいかがでしょうか?ぜひ本記事で紹介したカードに一度申し込んでみるのをおすすめします。