この記事では、日本を代表する鉄鋼メーカー「日本製鉄株式会社」とその株価について解説します。この記事を読めば、日本製鉄の会社概要、2024年10月時点での株価、今後の見込みなどが分かるはずです。
日本製鉄ってどんな会社?
そもそも、日本製鉄はどのような会社なのでしょうか。「鉄を作っている会社」だということは知っていても、あまり詳しく知らないという人も多いでしょう。ここでは、日本製鉄という会社について解説していきます。
世界で4番目に大きな鉄鋼会社
日本製鉄は、日本国内で最も売上高の大きい鉄鋼メーカーです。2024年3月期の連結売上高は8兆8680億円となっています。2位のJFEホールディングスの売上高が5兆1764億円なので、3兆円以上の大差をつけて国内トップの座に君臨しているということになります。
世界的に見てもかなり大きな鉄鋼メーカーであり、世界の粗鋼生産ランキングで4位につけています。ちなみに、同ランキングの1位は中国の「中国宝武鋼鉄集団」で、2位はルクセンブルクの「アルセロール・ミッタル」、3位は中国の「鞍山鋼鉄集団」となっています。
粗鋼生産ランキング第4位の日本製鉄は、まさに日本を代表する世界的な鉄鋼メーカーであるといえるでしょう。
鉄鋼業界の現状
日本製鉄が属する鉄鋼業界は、現在どのような状態なのでしょうか。鉄鋼業界に大きな影響を与えているのは、国内の人口減少です。人口が減れば鉄を必要とする住宅やマンション、自動車などの需要が低下します。1990年には9,400万トンもあった国内向けの鋼材も、2019年には5,900万トンにまで減少しています。
今後も人口減少は続くとみられるので、鋼材の国内市場は先細りしていくと予想されます。そのため、日本製鉄をはじめとする日本の大手鉄鋼メーカーは海外展開を積極的に進めています。
日本製鉄の海外展開
日本製鉄はインドに合弁会社「AM/NSインディア」を保有しています。2022年には、4,100億ルピー(約7,300億円)を投じ、インド西部のハジラ製鉄所に高炉2基を新設する計画を発表しました。人工が増え続けているインドでは、今後も鋼材需要の増加が見込まれまれており、日本製鉄にとって非常に重要な市場となっています。
日本製鉄は、数十年前から中国で事業を展開していましたが、大きな動きがありました。世界最大手の鉄鋼メーカーである「中国宝武鋼鉄集団」の傘下にある「宝山鋼鉄股份有限公司」との間に合弁会社を設立し、自動車向け鋼板の製造や販売を行っていたのですが、2024年の8月に合弁事業から撤退しました。
中国で電気自動車が普及するにつれて日本の自動車メーカーが販売に苦戦するようになり、そのような状況を踏まえ、中国における事業の成長が難しいと判断したとみられています。
今後は、アメリカやインド、東南アジアでの事業により注力していくようです。
アメリカのUSスチールを買収する計画
2023年、日本製鉄はアメリカの鉄鋼メーカー「USスチール」を買収するという計画を発表しました。かなり大々的に報道されたので、知っている人も多いのではないでしょうか。
USスチールの売上高は約3兆円なので、日本製鉄の売上高約8兆円と合わせると、10兆円を超える鉄鋼メーカーが誕生することになります。
しかし、買収が順調に進むという保証はありません。アメリカ大統領選に出馬しているドナルド・トランプ候補(共和党)とカマラ・ハリス候補(民主党)の両名が日本製鉄によるUSスチールの買収に反対を表明しているからです。
トランプとハリスのどちらが当選しても、買収が頓挫してしまう可能性があります。新しいアメリカ大統領がどのような動きを見せるのか、注視していく必要があるでしょう。
日本製鉄の株価の現状
2024年10月11日11:30時点での日本製鉄の株価は3,139円となっており、前日の終値に比べて5円安くなっています。
現在の日本製鉄の株価は、数年前に比べて高いといえるのでしょうか。それとも低いのでしょうか。
ここでは、日本製鉄の株価の推移について解説し、配当利回りや株主優待についても詳しく説明します。
株価の推移
日本製鉄の株価は、長期的に見れば上昇しています。2020年10月2日時点の株価は1,006.5円でした。4年後の2024年10月11日11:30時点での株価が3,139円なので、株価が4年間で約3倍になったということが分かります。
配当利回り
2024年10月11日現在の日本製鉄の配当利回りは5,09%(会社予想)となっています。同時期の日経平均の平均配当利回りを見てみると、1.92%(予想)となっているので、日本製鉄の配当利回りは平均よりかなり高いといえるでしょう。
株主優待
日本製鉄の株には、株主優待の制度が設けられています。具体的にどのような優待が受けられるのでしょうか。
【見学会・説明会】
1,000株以上所有している場合、日本製鉄の製鉄所の見学会に参加することができます。また、日本各地の都市で開催される経営概況説明会に参加することが可能です。どちらも抽選があるので、必ず参加できるというわけではありません。
【各種優待】
5,000株以上保有している方は、日本製鉄が出資している鹿島アントラーズの試合に招待されます。また、東京の紀尾井ホールで開催される室内管弦楽団の定期演奏会などにも招待されます。どちらも抽選になる場合があるので、必ず招待されるというわけではありません。
日本製鉄の株はどうなるのか?
ここでは、日本製鉄の株が今後どうなるかについて解説していきます。現時点で株を保有している方や購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本製鉄の株価はどう動くか
日本製鉄の株は2024年の8月5日に2,859.5円まで下落したものの、すぐに持ち直しました。9月11日には2,945円まで下落しましたが、それほど時間をかけずに3000円台に回復し、2024年10月11日の時点でも、比較的堅調な動きを見せています。
日本製鉄の株価に最も大きな影響を与えそうなのが、USスチール買収に関する動きです。もしも買収が失敗するようなことがあれば、株価が大きく変動する可能性もあります。買収計画に影響しそうな出来事はニュースで大きく取り上げられるので、投資家の心理状態にも大きな影響を与えると考えられるからです。
また、自動車業界の動きもチェックしておきましょう。日本製鉄は自動車メーカーとの付き合いが深く、製造した鋼材の多くが自動車に使われています。自動車業界で大規模なリコールが起きたりすれば、株価が変動する可能性があります。
アメリカの新大統領が株価を左右する可能性も
2024年の11月5日にはアメリカ大統領選の投票が行われ、新しい大統領が決まります。そして、新大統領の発言や政策が日本製鉄の株価に影響を与えるはずです。
日本製鉄によるUSスチール買収計画は大統領選の大きな争点になっており、現時点ではトランプ候補もハリス候補も買収に反対する姿勢を示しています。しかし、反対はあくまでも選挙向けのパフォーマンスであり、選挙後に態度が軟化している可能性もあります。新大統領が日本製鉄によるUSスチール買収に対してどのような姿勢で臨むのかを注視する必要があるでしょう。
もしも、新大統領が買収を容認するような姿勢を見せれば、日本製鉄の株価が大きく変動する可能性があります。
日本製鉄の株は買うべき?
日本製鉄の株を買うべきかどうかですが、「焦って買う必要はない」というのが本記事の結論になります。
USスチールの買収が成功するかどうかも不透明ですし、仮に買収に成功したとしても日本製鉄の将来が安泰というわけではありません。「USスチールの立て直しには苦労するのではないか」という専門家の見方もあります。日本製鉄は、いま買わなければ損をするような銘柄ではないといえるでしょう。
日本製鉄の株は100株から購入することができます。2024年10月11日11:30時点での株価は3,139円ですから、100株を買うとしたら31万3,900円が必要になります。一般の方が気軽に買えるような金額ではないからこそ、焦りは禁物です。
日本製鉄に限らず、株の売買はさまざまな情報を収集したうえで慎重に決断することが重要だといえるでしょう。