「景品表示法」の改正で何が変わったのか 企業活動への影響は? | MONEYIZM
 

「景品表示法」の改正で何が変わったのか 企業活動への影響は?

2023年5月に「景品表示法」(「不当景品類及び不当表示防止法」)が改正され、24年10月1日から施行されています。時々耳にする法律ですが、そもそもどんな内容で、どこが変わったのでしょうか。事業者が考慮すべきポイントをまとめました。

「景品」と「表示」に関する法律

景品表示法は、その正式名称が示す通り、「過大な景品類を提供すること」や、「商品やサービスの品質、価格などを偽って表示すること」を規制して、消費者を保護するのが目的の法律です。

不当表示の禁止

私たち消費者は、品質や価格などを考慮して、モノを買ったりサービスを受けたりします。しかし、そこに実際よりも優良、有利であると見せかける表示がなされていると、正しい選択の妨げになるでしょう。
 
そのため、景品表示法では、次のような「不当表示」が禁じられています。

  • 優良誤認表示:商品・サービスの品質、規格など内容についての不当表示
  • 有利誤認表示:商品・サービスの価格など取引条件についての不当表示
  • 指定告示:不当表示として内閣総理大臣が指定するもの

景品類の制限および禁止

景品類の提供自体は合法ですが、それが過大だった場合には、やはり商品やサービスの購入に際して、消費者の自主的、合理的な判断が惑わされる可能性があります。そのため、景品表示法では、景品類の総額や最高額を規制しているのです。

主な改正事項は3点

今回の景品表示法の改正は、一般消費者の利益をより一層強化することを目的としたもので、違反した場合の罰則などが強化されました。ただし、同時に、事業者が速やかに改善措置などを講じれば、行政処分の対象とならない仕組みが新設されています。中小企業経営者も、こうした趣旨をよく理解したうえで、法令順守に努める必要があるでしょう。
 
主な改正事項は、次の3点です。

  • 事業者の自主的な取り組みの促進
  • 違反行為に対する抑止力の強化
  • 円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等

それぞれについて、みていきましょう。

事業者の自主的な取り組みの促進

「確約手続」の導入

今回の改正の最大のポイントといえるのが、「確約手続」の導入です。不当表示などの違反行為がある場合に、事業者が自主的にそれを解決するための対策を行うことで、早期の問題解決を図る仕組みです。
 
改正前の景品表示法では、違反行為が認められた場合、事業者に対して、ある意味機械的に

  • 措置命令:違反行為に対する差し止めなどを命じる行政処分
  • 課徴金納付命令:違反行為に対する課徴金納付を命じる行政処分

が課せられました。
 
しかし、今回の改正で、「優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととする」制度ができました。これが「確約手続」です。
 
速やかに問題解決が図れることで、消費者にメリットがあるのと同時に、意図せず不当表示を行ってしまった事業者にも一律で措置命令などが下される、といった従来問題視されてきた点も改善が期待されています。つまり、景品表示法違反を認め、是正を図ろうとする企業にとっては、有益な制度が新設されたということです。
 
確約手続は、概要、以下のような流れで完了します。

  • 消費者庁が景品表示法違反の疑いを持った場合、事業者に是正措置計画等(確約計画)の認定申請ができる旨を通知(確約手続通知)
  • 確約手続通知後、事業者は60日以内に確約認定申請を提出する
  • 消費者庁が確約計画を認定すれば、違反行為の是正が完了し、措置命令や課徴金納付命令は適用されない

なお、計画に従って是正措置が実施されていない場合や、虚偽または不正によって認定を受けたことが判明した場合には、認定が取り消され、あらためて措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。

課徴金制度における返金措置の弾力化

課徴金納付命令の対象となった商品またはサービスについては、消費者から申し出があった場合、その購入額の3%以上の金銭を返金する措置(課徴金制度における返金措置)があります。所定の手続に沿って返金措置を行った場合には、課徴金額から消費者へ返金した金額が減額されることになっています。
 
この返金措置には、従来、金銭を交付する方法しか認められていませんでしたが、電子マネーなどでもOKとされました。消費者への迅速な対応を可能にするのが目的です。

違反行為に対する抑止力の強化

一方、違反行為に対する抑止力を強化するため、課徴金制度の見直しや罰則の新設が行われています。

課徴金制度の見直し

課徴金の対象となる売上額の推計

不当表示を行った事業者に課徴金が課せられる場合、その額は課徴金の対象となる商品やサービスの売上額の3%として算出されます。ところが、消費者庁の課徴金調査に対し、その対象となる商品の売上額のデータが把握されていない、などのケースのあることが問題になっています。
 
そこで、適切に売上額を報告しない事業者に対しても迅速に課徴金納付命令を発出し、制度を有効に機能させることを目的に、課徴金の計算の基礎となる売上額などを推計することができる規定が整備されました。

課徴金の加算

また、違反行為から過去10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対しては、課徴金の額を1.5倍(売上額の3%→4.5%)に加算する規定が新設されました。

罰則規定の拡充

優良誤認表示や有利誤認表示を行った事業者のうち、表示と実際が異なり、消費者を誤認させることを認識しながらした不当な行為を行ったような悪質なケースについては、直罰(100万円以下の罰金)が新設されました。措置命令・課徴⾦納付命令と合わせて適⽤することも可能、とされています。
 
ちなみに「直罰」とは、違法行為があった場合に、行政指導や行政命令を出して自主的な改善を促すといった過程を経ることなく、即時に罰則を適用することを定めた規定のことをいいます。課徴金制度の見直しと合わせ、安易な気持ちで表示を誤魔化したりすると、今まで以上に重いペナルティを受けることになります。

円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等

国際化の進展への対応

海外の事業者が日本の消費者を誤認させるような表示を行った場合などに対応するため、内閣総理大臣が、外国の当局に対して、その職務の遂行に資すると認める情報を提供することができるようになりました。

適格消費者団体による開示要請規定の導入

「適格消費者団体」とは、消費者の利益擁護を目的に、消費者契約法に基づく差止請求権を行使するための適格性を持つ消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受けた法人をいいます。今回の改正では、適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対してその事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者はその要請に応ずる努力義務を負う旨の規定が新設されました。

まとめ

改正景品表示法には、違反した場合の課徴金の増額規定や、直罰が盛り込まれました。一方で、違反があっても、速やかに改善の手立てを実行することで、措置命令や課徴金納付命令を免れる制度も導入されています。
 
不当表示などに対する社会の目は、厳しさを増しています。法改正の内容を理解したうえで、適切な対応を心掛けるようにしましょう。

マネーイズム編集部