新型コロナウイルス感染症により、中小企業の経営がさらに深刻化しています。収入が急激に減少した場合、真っ先に表面化する問題の1つが、「当面の家賃をどう工面するのか」ということ。この状況に対応するため、国会では野党が共同で法案を提出するなどの動きを見せていましたが、このほど自公両党が「家賃支援給付金」の創設を決定し、5月27日の閣議決定を目指す第2次補正予算案に盛り込まれる見通しとなりました。概要を説明します。(5月20日現在の情報です)
「最長6ヵ月間、毎月最大100万円」を補助 ※2020/7/7訂正
報道などで現在までに明らかになっている「家賃支援給付金」のポイントは、以下の通りです。
◆対象事業者は、「中堅・中小企業」もしくは「個人事業主(フリーランス)」
「中堅・中小」の範囲は、具体的に明示されていません。ただ、すでに実施されている「持続化給付金」(※)の内容(資本金10億円未満、従業員2000人以下の法人)を踏襲する、との見方が強いようです。
2020/7/6追記
対象事業者:
資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者
◆給付対象となるテナントの業種に制限は設けない
◆給付対象になるのは、「新型コロナ」によって大幅な減収に見舞われた事業者
具体的には、「単月の売上が昨年同月比で5割減った」ないし「3ヵ月の売上合計が昨年同期に比べ30%減った」ことが条件となります。
◆毎月の家賃の2/3を最長6ヵ月間補助する。ただし、以下の上限がある
- 中堅・中小企業=毎月50万円→最大300万円
- 個人事業主=毎月25万円→最大150万円
2020/7/6追記
上限は下記に拡大されました。
- 中堅・中小企業=毎月100万円→最大600万円
- 個人事業主=毎月50万円→最大300万円
支給額は、申請時の直近1カ月の月額支払賃料を基に月額の給付額を算定し、それを6倍した額です。
◆「持続化給付金制度」との併用も可能
早ければ6月中にも支給開始か
閣議決定された第2次補正予算案は、今のところ6月中旬に成立の見通しとなっています。申請はそれ以降ということになりますが、早ければ6月中に給付が始まるものとみられます。逆に言えば、支給は少なくともそれ以降になります。
現在のところ、申請にどのような書類が必要なのかなどについては不明です。ただ、この問題を検討してきた「与党賃料支援プロジェクトチーム」が5月8日に公表した「テナントの事業継続のための家賃補助スキームについて」には、「給付にあたっては従前の賃貸借契約書(家賃額、契約期間)を確認の上、家賃への使用を確保しつつ、複数月分をまとめて支給するなど、実務面で簡易な方法とする。」という記載があります。さきほど説明したような売上減少が給付の条件となっていますので、速やかに申請を行うためには、それを証明できる帳簿類なども準備しておくべきでしょう。
2020/7/7追記
7/14(火)より申請受付開始となります。
今後、変更・追加の可能性もありますが、現時点では下記の書類が必要となっています。
- ①賃貸借契約の存在を証明する書類(賃貸借契約書等)
- ②申請時の直近3ヵ月分の賃料支払実績を証明する書類(銀行通帳の写し、振込明細書等)
- ③本人確認書類(運転免許証等)
- ④売上減少を証明する書類(確定申告書、売上台帳等)
「新型コロナ」による大幅な減収などの要件を満たせば、法人は200万円以内、個人事業主は100万円以内の給付を受けられる
「減収世帯」への家賃補助も、幅が広がった
一方、「コロナ禍」で収入が減少した世帯も、家賃で苦しんでいます。このため、国は経済的に困窮した人に対して家賃を補助する「住居確保給付金」の支給要件を緩和しました。
この制度は、もともと離職したり廃業したりして住む場所を失った、またはその恐れがある人に対して家賃補助を行うことにより、安定した住居を確保し、自立をサポートする目的で設けられました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、大幅な減収を余儀なくされる人が増加したため、そうした世帯も対象に含めることになったのです。具体的には、「離職・廃業後2年以内の者」とされていた支給対象に、「給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にある者」という条件が加わりました。
支給の内容は、次の通りです。
◆支給期間は、原則3ヵ月
求職活動などを誠実に行っている場合は3ヵ月延長可能(最長9カ月まで)。
◆支給額は、自治体によって異なる
例えば、東京23区の目安は、単身世帯で5万3700円、2人世帯で6万4000円、3人世帯で6万9800円などとなっています。
収入、資産には要件がある
一方、支給要件は、次の通りです。
◆収入要件:世帯収入合計額が、市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12+家賃額(住宅扶養特別基準額が上限)を超えないこと
例えば、東京23区の目安は、単身世帯で13万8000円、2人世帯で19万4000円、3人世帯で24万1000円。
◆資産要件:世帯の預貯金の合計額が、以下を超えないこと。ただし100万円を超えない額
例えば、東京23区の目安は、単身世帯で50万4000円、2人世帯で78万円、3人世帯で100万円。
◆離職している場合は、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと
ただし、従来設けられていた「申請時のハローワークへの求職申込」という要件は撤廃されました。「新型コロナ」の感染が拡大する下では、それは困難だという判断からです。
支給額や要件については、東京特別区を例に説明しましたが、家賃には地域差があるため、これらは自治体によって異なります。
問い合わせ、申請などは、お住まいの市町村の「自立相談支援機関」が窓口になります。
まとめ
「新型コロナ」の感染拡大で予期せぬ減収となり、家賃の支払いがピンチになってしまった。そんな時には、給付金の活用を検討しましょう。なお、企業、個人事業主が対象の「家賃支援給付金」については、申請方法などがこれから公表されます。法案の成立までに、制度の細部が見直される可能性もありますので、最新の情報に注意してください。