新型コロナウイルスは、日本の多くの企業に影響を与えました。業績を落とした企業も多く、株価も下落しました。新型コロナウイルスの影響がどこまで続くかわからない中で、企業の株を売却した人も多いでしょう。
そこで、ここでは新型コロナの影響で株を売却した場合の税金や確定申告の方法について詳しく解説します。
新型コロナの影響で、日本の株価はどうなった?
まず、新型コロナの影響で日本の株価がどうなったのかを見ていきましょう。
新型コロナウイルスは、日本の株価にとても大きな影響を与えました。コロナ特需と呼ばれる一部の企業を除き、ほとんどの企業が新型コロナウイルスの影響で株価を下げています。
日経平均株価を見てみると、2020年1月には23,000円台を超えていましたが、新型コロナウイルスの影響で徐々にその値を下げ始め、3月中旬頃には、一時16,000円台にまで落ち込みました。
その後は徐々に値が回復し始め、6月に入ると22,000円台まで回復しています。しかし、今後、新型コロナウイルスの第二波が来た場合などは、再び値が下落する可能性もあるため、注意が必要です。
新型コロナの影響で、株を売却した場合の税金と確定申告
新型コロナウイルスで株価の変動が激しくなっているため、この機会に株を売却した人も少なくないでしょう。では、個人が所有している株を売却した場合には、税金や確定申告はどうすればよいのでしょうか。
ここでは、新型コロナの影響で、株を売却した場合の税金と確定申告を見ていきます。
新型コロナの影響で、株を売却した場合の税金
個人が株を売買した場合の所得は「譲渡所得」になります。ただし、株を売買した場合の譲渡所得は、給与所得や事業所得と分けて税金を計算する必要があります。これを「分離課税」といいます。
分離課税では、譲渡所得の金額に一定の税率を乗じて、納める税金の金額を計算します。株の売却による譲渡所得の金額は、次の計算式で求めます。
株の売却に対する税率は、20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)です。例えば、株の売買による譲渡所得金額が100万円の場合は、100万円×20.315%=203,100円(100円未満切り捨て)の税金を納めることになります。
新型コロナの影響で、株を売却した場合の確定申告
つぎに、個人が株を売却した場合の確定申告について見ていきましょう。
通常、株の売買については証券会社などを通じて行います。その際、証券会社で特定口座を開き、税金が源泉徴収をされている場合は、すでに税金を納めているため、さらに確定申告をする必要はありません。
証券会社で特定口座を開いていない、または特定口座を開いているが、源泉徴収していない場合は、確定申告が必要となります。
確定申告で必要な書類は確定申告書の「第一表」「第二表」「第三表(分離課税用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」です。
確定申告書の「第一表」「第二表」は通常の確定申告で必要な書類のため、株を売買したときに追加で作成が必要な書類は、確定申告書「第三表(分離課税用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」になります。
確定申告書「第三表(分離課税用)」は、株の売買にかかる税金を計算する書類です。「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」は、株の売却金額や取得価格、支払った委託手数料等の金額を記載し、譲渡所得を計算する書類です。
株を売却して、赤字が出た場合の税金と確定申告
新型コロナウイルスの影響で、多くの企業の株価が下がりました。また、今後の影響がどうなるのかが定かでないために、赤字であってもこれ以上損失が大きくならないうちに、株を売却した人も多いでしょう。
そこで、ここでは株を売却して、赤字が出た場合に税金や確定申告がどうなるのかを見ていきましょう。
株を売却して、赤字が出た場合の税金
株には、大きく分けて上場株式と一般株式の2つがあります。株を売却して赤字が出た場合には、もちろんどちらも税金は発生しません。
しかし、上場株式の場合は、売却で出た赤字を翌年以降3年間に繰り越すことができます。
株売却の赤字を繰り越すことで、翌年以降の株売却で出た黒字と相殺することが可能です。
例えば、本年度の株売却の赤字が△50万円、翌年度の株売却の黒字が100万円だったとします。本年度の赤字を繰り越さなければ、翌年度は株売却の黒字が100万円に対して、203,100円の税金がかかります。
これに対して、本年度の赤字を繰り越した場合は、翌年の黒字と相殺できるため、翌年度の黒字100万円-本年度の赤字50万円=50万円に対して税金がかかります。納める税金の金額は、50万円×20.315%=101,500円(100円未満切り捨て)となり、本年度の赤字を繰り越さない場合と比べて10万円程度低くなります。
また、上場株式の配当がある場合は、その配当金額と上場株式売却の赤字を相殺することができます。
上場株式の配当にも、20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税金がかかります。税金の金額は配当金の支払い時に源泉徴収されているので、実際振り込まれている金額は税金の金額を差し引いた後の額です。配当金額が10万円の場合は、2万円程度の税金が差し引かれ、差額の約8万円を受け取ります。
例えば、本年度の株売却の赤字が△50万円、配当金額が10万円(2万円の税金が源泉徴収済み)、翌年度の株売却の黒字が100万円の場合は次のようになります。
①本年度の株売却の赤字と配当金額を相殺し、差額を翌年度に繰り越す
翌年度へ繰り越す赤字額=本年度の株売却の赤字が△50万円-配当金額10万円=赤字△40万円
配当金額の10万円は、株売却の赤字と相殺されたため、源泉徴収された税金2万円が還付されます。
②翌年度の黒字と繰り越した赤字を相殺する
翌年度は、翌年度の黒字100万円-繰り越された赤字40万円=60万円に対して税金がかかります。
株を売却して、赤字が出た場合の確定申告
では、株を売却して、赤字が出た場合の確定申告について見ていきましょう。
株を売却して赤字が出た場合は納める税金がないため、確定申告をする必要はありません。しかし上場株式を売却した赤字を翌年以降に繰り越す場合は、赤字であっても確定申告をする必要があります。
この場合に確定申告で必要な書類は、確定申告書の「第一表」「第二表」「第三表(分離課税用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」です。
株を売却して黒字になった場合に作成する書類に「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」が加わっています。
「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」は、翌年以降に繰り越される上場株式を売却した赤字の金額を計算する書類です。上述した配当金額との相殺もこの書類で計算します。
まとめ
新型コロナウイルスは、日本の企業の株価に大きな影響を与えました。その結果、株価は一時的に大きく下がりました。
新型コロナウイルスの影響で株価が大きく変動したために、株を売却した人も多いことと思います。今後、新型コロナウイルスの終息までに長期化すれば、また株価は大きく変動するかもしれません。そうなるとさらに、株を売却する人が増えるでしょう。
株を売却したら、確定申告が必要なケースも出てきます。自分に確定申告が必要かどうかを見極め、正しい処理を行いましょう。