新型コロナウイルス感染症の影響で、経済的なダメージを受けた観光業。国や地方自治体は、観光業を立て直すため、まずは国民の観光需要を喚起するために、旅行助成金を出すことを決めました。今回は、旅行助成金に関係するキャンペーンについてご紹介します。
旅行助成金とは? 国と自治体それぞれが実施するものがある
「旅行助成金」とは、国などが旅行会社に対し、旅行商品の何割かを助成する制度です。これにより、旅行者は通常よりも格安価格で旅行を楽しめます。2016年には熊本地震の復興支援策としてこの制度が活用され、旅行者を九州に呼び込んで観光産業の支援を目指しました。
新型コロナウイルス感染症の流行においても、観光産業は甚大な影響を受けています。そこで、国は旅行助成金を計上し、観光産業の支援を行うことになりました。今回は国だけでなく、地方自治体も助成事業を行っています。それぞれについて、概要を見てみましょう。
①国による助成事業「Go To Travelキャンペーン」
観光庁による「Go To Travelキャンペーン」は、日帰り・宿泊旅行に対して旅行代金の1/2(旅行者1人あたりの上限額あり)を支援するというものです。旅行者は旅行代理店や予約サイトを通じて申し込むか、宿泊施設に直接予約を行い、申し込んだ業者を通じて割引を受けられます。
「Go To Travelキャンペーン」は7月22日から開始されました。実施期間は6か月を想定していますが、予算が尽きると終了となります。支援額の内、7割は旅行代金の割引に、3割は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与されます。1人一泊あたり2万円が上限となっており(日帰り旅行については、1万円が上限)、連泊制限や利用回数の制限はありません。
なお、このキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症で大きな経済的損失を受けた産業を国が支援する「Go To キャンペーン」の一環として行われています。「Go To キャンペーン」の概要や「Go To Travelキャンペーン」の詳しい仕組みについては、後述します。
②地方自治体による観光補助事業
観光産業が大きなウェイトを占める地方自治体を中心に、全国各地の自治体では国に先行して観光補助事業をすでに開始しています。北海道では、道内在住者を対象に旅行代金を割り引く「どうみん割(観光誘客促進道民割引事業)」が7月1日から始まりました。
宿泊割引や飲食店や商店街で使える商品券の販売を行う地方自治体の事業は、6月24日現在で99にのぼっています。対象者を「県内在住者」などに限定しているものが多いですが、なかには対象を限定していない事業もあります。申込方法については、旅行会社を通じて申し込むものもあれば、利用する宿泊施設に直接申し込むもの、自治体にハガキなどで申し込むものなど、事業ごとに異なります。
地方自治体が行う観光補助事業の詳細については、一般社団法人 日本旅行業協会が公表している「地方自治体観光補助事業一覧」をご参照ください。情報は随時更新されるので、こまめにチェックしましょう。
国が行うGo Toキャンペーン事業
新型コロナウイルス感染症の流行は、観光をはじめとするさまざまな地域の産業に大きな被害を与えています。そこで、国は流行の収束後に地域経済を再生させるため、特に大きな影響を受けた観光・運輸・飲食・エンターテインメントの各産業を支援する官民一体キャンペーン「Go To キャンペーン」を立ち上げることを決定しました。
ここでは、「Go Toキャンペーン」の概要を紹介するとともに、観光に関係する「Go To Travelキャンペーン」について現在判明している詳細を紹介します。
①「Go To キャンペーン」の概要
「Go To キャンペーン」は「Go To Travelキャンペーン」をはじめとする4つの事業で構成されています。総事業予算は1兆6,794億円。そのうち、「Go To Travelキャンペーン」には1兆3,500億円が割かれる予定です。
・Go To Travelキャンペーン
国土交通省の観光庁が担当。旅行業者などを通じて旅行商品を申し込んだ消費者に、割引・クーポンを付与。
・Go To Eatキャンペーン
農林水産省が担当。飲食店予約サイトを通じて飲食店を予約・利用した消費者に、飲食店で使えるポイントを付与するかプレミアム付き食事券を発行。
・Go To Event キャンペーン
経済産業省が担当。チケット会社経由でイベントなどのチケットを購入した消費者に、割引・クーポンなどを付与。
・Go To 商店街キャンペーン
経済産業省の中小企業庁が担当。商店街などで開催するイベントや観光商品開発などに対する支援。
②「Go To Travelキャンペーン」の仕組み
では、「Go To Travelキャンペーン」を消費者が利用する仕組みについて、詳しく見ていきましょう。
対象となるのは国内旅行です。個人旅行・団体旅行を問わず、日帰り・宿泊いずれも旅行代金の1/2に相当する金額を国が支援してくれます。ただし、いくつかの留意点があります。
- (1)旅行代理店・予約サイト経由、または宿泊施設への直接申し込みを行うことが条件。
- (2)対象となるのは、(1)の手段で申し込んだ「交通費+観光体験やランチなどの日帰りセットプラン」「宿泊+交通機関などのセットプラン」「宿泊のみ」「夜行フェリーや寝台列車、クルーズ船など宿泊に準ずるもの」「修学旅行」「社員旅行」。個人で手配した交通費は割引対象外。
- (3)連泊制限や利用回数の制限はないが、支援額は1人一泊あたり2万円(日帰り旅行は1万円)が上限。
- (4)支援額は現金ではなく、支援する額の7割程度を旅行代金の割引、3割程度を旅行先の加盟店で使える地域共通クーポンで構成する。地域共通クーポンは、旅行代理店や宿泊施設で配布する。
たとえば、ある観光地を旅行するために、宿泊予約サイトを通じて1人一泊2万円のホテルを予約し、新幹線などの交通機関は自分で手配した場合を例に取ってみましょう。
この場合、Go To Travelキャンペーンの対象になるのは宿泊代金のみです。宿泊代金の2万円に対し、1/2の1万円が支援額となります。1万円のうち、7,000円は宿泊代金から割引され、3,000円分のクーポンが配布されるので、旅行者は1万3,000円を支払うことになります。
旅行者が旅行先の土産物店や飲食店、観光施設、交通機関で地域共通クーポンを使うことで、観光地の地域振興にもつながります。
自治体が行う代表的な旅行助成金
先述したように、全国の自治体ではすでに独自の観光補助事業を始めています。そのなかで、宿泊などの旅行に対する助成金を出している事例をいくつか紹介しましょう。
①どうみん割(観光誘客促進道民割引事業)
北海道内在住者を対象に、道内の旅行代金が最大1万円補助されます。「宿泊旅行」「交通付き宿泊旅行」「交通付き日帰り旅行」「アウトドア体験などの日帰り旅行」の4プランがあり、旅行代金によって割引額が異なります。たとえば、交通付き宿泊旅行の商品を購入する場合、購入代金が6,000~9,999円なら3,000円、2万円以上なら1万円が割引されます。
「どうみん割」のサイトから対象となる旅行代理店や宿泊事業者、観光協会などを調べ、ネット・電話などを通じて直接申し込みます。対象となる利用期間は2020年7月1日~2021年1月31日。
②栃木県民限定「県民一家族一旅行」キャンペーン
栃木県内在住者を対象に、県内の宿泊旅行を割引するもの。6,000~1万円未満の宿泊旅行は1人一泊3,000円、1万円以上の宿泊は一泊5,000円が割引されます(1人最大2泊まで)。
対象となる県内旅行会社を「とちぎ旅ネット」から調べ、電話で申し込むか、宿泊予約サイトから予約します。対象となる宿泊利用期間は、県内旅行会社経由の申し込みは2020年6月下旬~10月30日、宿泊予約ネット経由の申し込みは2020年6月16日~9月29日。
③「福岡の魅力再発見」九州キャンペーン
九州在住者を対象に、福岡県内の対象宿泊施設で使える宿泊券を半額で発行したり、福岡県を目的地に含む旅行商品(宿泊・日帰り)の割引を行ったりします。宿泊券の購入や旅行商品の申し込み期間は2020年7月1日~7月31日。利用できる期間は8月31日チェックアウトまでです。
キャンペーンの利用方法は、九州内のコンビニ・宿泊予約サイト・旅行会社の3つ。九州のコンビニでは、5,000円・1万円の宿泊券をそれぞれ半額で販売しています。宿泊予約サイトでは、宿泊施設で使える九州在住者限定電子クーポンを使い、宿泊施設を予約することで一泊最大5,000円の割引を受けられます。
また、「福岡の魅力再発見」キャンペーンのサイトに掲載されている旅行会社に旅行商品を申し込むと、宿泊旅行で1人あたり最大5,000円、日帰り旅行で1人当たり最大3,000円の割引を受けられます。
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まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響で、大きなダメージを受けた観光業。地方自治体は新型コロナウイルス対策の関係から地域を限定しながらではありますが、消費者を観光地に呼び込むキャンペーンをすでに始め、国も7月22日にキャンペーンを開始しましたが、感染者の多い東京が除外されるなどの変更もあり、今後もさらに変更される可能性がありますのでチェックが必要です。「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式」を守りつつ、こうしたキャンペーンをうまく利用しながら旅行も楽しみましょう。
なお、国・地方自治体ともに予算の枠が決められているため、実施期間を設けているものの、予算を消化した時点で終了となるので注意しましょう。
▼参照サイト
- https://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin200630.html
- https://www.jata-net.or.jp/virus/pdf/2006_lclgvrnmntspprtbsnsslist.pdf
- https://www.kankokeizai.com/%E6%94%BF%E5%BA%9Cgoto%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3%E4%BA%8B%E6%A5%AD-%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%B1%80%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%8B%E7%9B%B4%E3%81%97%E3%80%80%E3%80%8C%E9%96%8B/
- https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001351403.pdf
- https://douminwari.jp/
- http://www.pref.tochigi.lg.jp/f05/kanko/kanko/ichikazoku.html
- https://rediscover-fukuoka.jp/index.html