会社が固定資産を購入したら、減価償却をする必要があります。実は、仕事で使うスマホも、場合によっては減価償却が必要となることがあります。特に、購入したスマホが最新のものである場合は、減価償却が必要になる可能性が高いです。
そこで、この記事では最新スマホを会社で買った場合の減価償却方法について解説します。
そもそも減価償却とは 定額法と定率法
1つあたり10万円以上のものを購入した場合は、購入金額を一括で経費にすることができません。いったん固定資産に計上し、複数年にわたって少しずつ経費にしていきます。このように複数年にわたって少しずつ経費にすることを、減価償却といいます。
減価償却の代表的な方法に、定額法と定率法の2つがあります。そこでまずは、定額法と定率法について詳しく見ていきましょう。
定額法の計算方法とは
定額法とは、簡単にいうと毎年同じ金額を減価償却していく方法のことです。
たとえば、100万円の資産を10年で減価償却する場合は100万円÷10年=10万円を毎年、減価償却費として計上します。何年で償却するかは、金属製の事務机なら15年、エアコンなら6年など、資産ごとに税法で決まっています。この年数のことを「耐用年数」といいます。
実際には、耐用年数ごとに「償却率」が定められていて、購入金額(取得価格)に償却率を乗じて、その年の減価償却費を計算します。定額法の計算式は次のようになります。
上記の例でいくと、耐用年数10年の定額法償却率は0.100です。
となります。
個人事業主の場合は、原則として定額法を使って減価償却をすることになります。
定率法の計算方法とは
定額法とともに代表的な減価償却方法が、定率法です。
定率法は定額法と比べて、計算方法の難しい減価償却方法です。簡単に言うと、初年度に大きな金額の減価償却費を計上し、その後、年とともに、減価償却費は減少していきます。
定率法も、償却率を基に減価償却費を計算します。定額法と異なるのは、取得価格に償却率を乗ずるのではなく、未償却残高(減価償却していない部分)に償却率を乗ずることです。定率法の計算式は次のようになります。
たとえば、100万円の資産を10年で減価償却する場合の1年目と2年目の減価償却費は次のようになります。
・1年目
次年度未償却残高 100万円-20万円=80万円
・2年目
法人の場合は、建物など一部資産を除き、原則として定率法を使って減価償却をすることになります。
最新スマホ代金が10万円以上20万円未満の償却方法
ここまでは、一般的な減価償却方法を見てきました。それでは、スマホは何年で償却するのでしょうか。
実は耐用年数の一覧表には、スマホは記載されていません。近いものとすれば、電話設備その他の通信機器では、デジタルボタン電話の場合は6年、その他のもの10年です。スマホを電子計算機と考えても、最短で4年となります。しかし、現実には、そこまで長くスマホを使うことは少ないでしょう。
そこで、利用したいのが「一括償却資産」の特例です。一括償却資産とは、取得価格10万円以上20万円未満の資産を、3年間で均等に償却する方法です。取得価格10万円以上20万円未満の資産が複数あれば、それを一括して3年間で均等に償却するため、一括償却資産と名前が付いています。
たとえば、12万円の最新スマホを購入した場合、10年で均等償却すれば毎年12,000円の減価償却です。一括償却資産の特例を適用すれば、12万円÷3年=4万円の減価償却費を計上することができます。
最新スマホ代金が30万円未満の場合の償却方法
一括償却資産の特例とともに、多くの会社や個人に用いられている減価償却費の特例に、取得価格が30万円未満の場合に適用できる「少額減価償却資産」の特例があります。
少額減価償却資産の特例は、とても有利な特例ですが、注意点もあります。そこでここでは、少額減価償却資産の特例について詳しく見ていきます。
少額減価償却資産とは
少額減価償却資産とは、取得価格が10万円以上30万円未満の資産のことをいいます。少額減価償却資産の特例とは、取得価格が10万円以上30万円未満の資産を一定の要件の下、取得年度に全額経費にできるというものです。
たとえば、12万円の最新スマホを購入した場合、その年に12万円すべてを経費にすることができます。一括償却資産の特例の場合は、12万円÷3年=4万円しか経費にできないため、少額減価償却資産の特例の方が有利です。
少額減価償却資産の特例の適用を受けるためには、少額減価償却資産について「消耗品費」などの経費処理をする必要があります。また、原則として確定申告書等に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付する必要があります。
少額減価償却資産の注意点
少額減価償却資産の特例は、取得価格の全額を経費にできるため、法人税や所得税の節税には、有利になる制度です。しかし、次のような点に注意する必要があります。
- ①青色申告をする必要がある
少額減価償却資産の特例は、個人・法人ともに青色申告をしていることが要件となっています。白色申告の場合は適用できないので、注意が必要です。 - ②年間300万円の上限がある
少額減価償却資産の特例は、10万円以上30万円未満の資産の取得価格の全額を経費にすることができます。
ただし、無制限に取得価格の全額を経費にできるわけではなく、年間300万円の上限があります。全額を経費にできるからといって、30万円未満の資産をたくさん購入すると、上限を超え、経費にできない部分がでてくる可能性があるので注意が必要です。 - ③一括償却資産にも該当するものは、どちらを選択するのかを見極める必要がある
20万円以上30万円未満の資産は、少額減価償却資産の特例のみ使えますが、10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産、少額減価償却資産のどちらかの特例を選択して使うことができます。
最新スマホにも、10万円以上20万円未満の価格帯のものはたくさんあります。この場合、一括償却資産、少額減価償却資産のどちらの特例を使うのかをしっかり検討する必要があります。
たとえば、今年が赤字の場合は、無理に取得価格の全額を経費にする必要がないため、一括償却資産の特例を選択し、翌年に減価償却費を残すとよいでしょう。今年が大きな黒字の場合は、少額減価償却資産の特例を選択するのが得策です。
その他にも「償却資産税」の問題があります。実は10万円以上の固定資産には、固定資産税の1つである「償却資産税」が課されます。償却資産税は、一括償却資産には課されませんが、少額減価償却資産には課されます。
つまり、一括償却資産は所得年度に全額が経費にならないため、法人税や所得税の面では不利ですが、償却資産税の面では有利です。一方、少額減価償却資産は、法人税や所得税の面では有利ですが、償却資産税の面では不利です。
このように、利益や税金について十分吟味し、どちらを選択するのかを決めましょう。
まとめ
最新スマホは、取得価格が10万円を超えるものあり、会社で所有した場合は減価償却が必要になります。減価償却では、スマホ代金を毎年、少しずつ経費にしていきます。ただし、この記事で解説してきたとおり一括償却資産や少額減価償却資産の特例もあります。特例を使うのかどうか、使う場合はどの特例を使うのかをしっかり検討する必要があるでしょう。
▼参照サイト
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html
- https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340M50000040015#47
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm