法人で不動産を購入すると税金はどうなる?不動産購入と税金の関係

[取材/文責]長谷川よう

事務所や営業所、店舗など、法人はさまざまな目的で不動産を購入することがあります。不動産を購入すると、購入したときにかかる税金、所有していることにかかる税金、そして法人税など、さまざまな税金の影響を受けます。ここでは、不動産購入と税金がどのような関係にあるのかを徹底解説します。

不動産を購入したときに必要な税金を知ろう

法人の不動産購入には、不動産取得税がかかる

不動産を購入したときには、その取得に対して一度だけ不動産取得税がかかります。不動産取得税は各都道府県に支払う税金です。不動産取得税の計算式は以下のとおりです。

 

①通常の不動産取得税

不動産取得税=固定資産評価額×税率

 

②平成30年3月31日までに宅地を取得した場合

不動産取得税=固定資産評価額1/2×税率

 

税率
取得日
2018年3月31日まで 2018年4月1日以降
土地 3% 4%
家屋 住宅 3%
非住宅 4%

 

固定資産税評価額は、各自治体が管理する固定資産課税台帳に登録されている価格です。市区町村等で閲覧できるほか、固定資産税の納税通知書などにも記載されています。

法人の不動産購入には、登録免許税がかかる

不動産を購入したときには、法務局で不動産の所有権移転登記を行う必要があります。その所有権移転登記にかかる税金が登録免許税です。登録免許税の計算式は以下のとおりです。

 

登録免許税=固定資産評価額×税率

 

・税率
登記の種類 税率
2019年3月31日までの登記 2019年4月1日以降の登記
所有権移転 売買 土地 15/1,000 20/1,000
建物 20/1,000

上記は、あくまで不動産の売買における所有権移転の税率です。新たに建物を建築した所有権保存登記などの場合では、税率は変わるので注意してください。

法人の不動産購入にかかるその他の税金

ここでは、不動産取得税や登録免許税以外の不動産購入にかかる税金を見ていきましょう。

①印紙代

不動産を購入したときの売買契約書や領収書には、印紙を貼る必要があります。印紙代は記載されている金額や添付する書類の種類などで金額が異なります。不動産購入に関する印紙代は以下となります。

 

・不動産売買契約書
記載された契約金額 税率
2018年3月31日まで 2018年4月1日以降
1万円未満のもの 非課税 非課税
10万円未満のもの 200円 200円
50万円以下のもの 200円 400円
100万円以下のもの 500円 1,000円
500万円以下のもの 1,000円 2,000円
1,000万円以下のもの 5,000円 10,000円
5,000万円以下のもの 10,000円 20,000円
1億円以下のもの 30,000円 60,000円
5億円以下のもの 60,000円 100,000円
10億円以下のもの 160,000円 200,000円
50億円以下のもの 320,000円 400,000円
50億円超のもの 480,000円 600,000円
契約金額の記載のないもの 200円 200円
・領収書
記載された契約金額 税率
5万円未満のもの 非課税
100万円未満のもの 200円
200万円以下のもの 400円
300万円以下のもの 600円
500万円以下のもの 1,000円
1,000万円以下のもの 2,000円
2,000万円以下のもの 4,000円
3,000万円以下のもの 6,000円
5,000万円以下のもの 10,000円
1億円以下のもの 20,000円
2億円以下のもの 40,000円
3億円以下のもの 60,000円
5億円以下のもの 100,000円
10億円以下のもの 150,000円
10億円超のもの 200,000円
契約金額の記載のないもの 200円

②消費税

不動産の購入には、消費税のかかるものとかからないものがあります。具体的に言うと、建物には消費税がかかり、土地は消費税がかかりません。不動産購入の経理処理では建物と土地の金額を分けなければならないため、契約時には、契約書等に建物の金額、消費税額、土地の金額が記載されているか確認しておきましょう。

不動産を所有していると、固定資産税がかかる

不動産を購入し、所有していると毎年、固定資産税と都市計画税がかかります。固定資産税は、固定資産を所有していることに対してかかる税金です。一方、都市計画税は道路事業や公園事業など財源にあてるための税金です。固定資産税と都市計画税の計算式は以下のとおりです。

 

固定資産税=固定資産評価額×1.4%

都市計画税=固定資産評価額×最大0.3%

※都市計画税の税率は自治体ごとで異なります。所有している不動産が住宅等の場合は、軽減措置があります。

不動産の購入代金は全額経費にならない

建物は減価償却で毎年経費に

ここまで不動産を取得したとき、もしくは所有しているときにかかる税金について見てきました。ここからは、不動産購入と法人税の関係について見ていきましょう。

 

不動産の購入代金が経費になるかどうかは、建物と土地で考え方が異なります。

建物は、購入してから長い期間使用し、時の経過とともに老朽化し価値を減少させていくため、購入金額(取得価額)を毎年少しずつ経費にしていきます。これを「減価償却」といいます。何年で経費にできるか(耐用年数)は、鉄筋コンクリート造なのか木造なのかといった建物の構造や用途で異なります。

減価償却の方法には以下の2つがあります。

 

定額法…毎年決まった金額を経費にする

定率法…初年度に大きな金額を経費にし、それ以降は少しずつ経費になる金額が減る

 

建物は定額法しか選択できません。例えば3,000万円の建物を30年で償却する場合は、1年間で100万円が経費になります。

※実際の計算では数百円の誤差が生まれる場合があります。

土地は減価償却できず経費にもならない

土地も建物のように長い期間使用します。しかし、土地は時の経過とともに老朽化しないため、価値も減少しません。そのため減価償却できず、購入代金は経費になりません。土地は売却したときに、売却金額と購入代金の差額が利益または損失として計上されます。

法人の不動産購入と経理処理

不動産の取得価格に含めるもの、含めなくていいもの

ここからは、不動産購入に対する経理処理を見ていきましょう。

不動産を購入するためにかかった費用と実際に使い始めるまでにかかった費用はすべて、原則として経費とせずに不動産の取得価額に含める必要があります。

 

例えば、仲介手数料や造成費用などが相当します。ただし、登録費用、不動産取得税や登録免許税などの取得に伴う税金、不動産を使い始める前に支払った借入金の利子は、不動産の取得価額に含めず経費にしてもよいことになっています。もちろん取得価額に含めても問題ありません。法人の利益等を考慮して経理処理するようにしましょう。

土地と建物は分けて記帳しよう

不動産を購入したことを帳面に記載する場合は、土地と建物に分ける必要があります。

それは、以下の2つの理由からです。

 

①消費税

不動産購入にかかる税金のところでも説明しましたが、建物には消費税がかかり、土地には消費税がかかりません。法人は決算の時に国に納める消費税の金額を計算します。

 

簡単に言うと、売上などで預かった消費税から、経費などで支払った消費税を差し引いて求めます。建物にかかる消費税は、経費などで支払った消費税に該当します。消費税の計算を正しく行うためにも、消費税のかかる建物と消費税のかからない土地を分けて記帳する必要があります。

 

②減価償却費

建物は減価償却をして毎年少しずつ取得価額を経費にしますが、土地は減価償却できません。経費の金額を正しく計算するためにも、減価償却できる建物と減価償却できない土地を分けて記帳する必要があります。土地は売却したときに初めて損益に影響しますが、土地と建物を分けて記帳することで、売却時の損益もきちんと計算することができ、税金の金額も正しく計算できます。

まとめ

法人が不動産を購入すると、不動産の購入に対してかかる税金や、所有していることにかかる税金など多くの税金がかかります。また、法人税や消費税にまで影響を与えます。不動産を購入することを考えている、もしくは不動産を購入した場合は税金の知識を付け、正しく処理できるようにしましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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