回数券の経理処理とは?インターネットの普及で回数券は減少する?

[取材/文責]長谷川よう

最近、皆さんは回数券を使用したことがあるでしょうか。インターネットの普及などにより、回数券が減少していると感じている人も少なくないでしょう。
しかし、事業をしていると、回数券に触れることもまだまだ多くあります。そこで、ここでは回数券の経理処理について詳しく解説します。

インターネットの普及で回数券は減少が予測される

購入することで1回分が無料になるなど、お得なサービスが得られる回数券ですが、今、回数券の利用や発行は減少傾向にあります。

 

2021年3月には、JR東海が東海道新幹線の回数券のうち、一部区間の販売を2022年3月末で終了すると発表しました。インターネットによる「エクスプレス予約」で新幹線の切符を購入すると、通常の運賃より割安になったり、自由に乗車予約の変更などができたりすることから、回数券の利用者が減っているようです。このように、鉄道関係ではインターネットの普及に伴い、今後も回数券は減少していく傾向にあります。

 

一方で、喫茶店のコーヒーチケットのように、提供するサービスによっては今後も一定数、回数券の発行や利用が続いていく可能性は高いでしょう。

回数券を購入した場合の経理処理

事業に関係する支出について、コーヒーチケットなどの回数券を購入した場合には、帳簿付けが必要となります。回数券を購入した場合の経理処理には「購入したときに資産にする方法」と「購入したときに費用にする方法」の2つがあります。それぞれの経理処理方法について、見ていきましょう。

購入したときに資産にする経理処理方法

回数券のうち、経費になる部分はその年に使った分のみです。使わなかった部分は経費にすることができません。購入したときに資産にする経理処理方法では、購入した回数券をいったん資産に計上し、利用する都度、経費に振り替えます。具体例で見ていきましょう。

 

・コーヒーチケット購入時

例)11枚綴りのコーヒーチケット5,000円を現金で購入した。なお、コーヒーチケットは得意先との打合せにのみ使う。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
貯蔵品 5,000円 現金 5,000円 コーヒーチケット購入

 

回数券購入時には、資産科目である「貯蔵品」勘定で処理します。「仮払金」や資産区分に作成した「回数券」の科目を使用するなど、ほかの資産科目を使用しても問題ありません。

 

・コーヒーチケット使用時

例)得意先との打合せのため、上記コーヒーチケットを3枚使った。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
(接待)交際費 1,363円 貯蔵品 1,363円 コーヒーチケット使用

 

取引先との打合せに使ったため、「(接待)交際費」勘定で処理します。また、利用分のコーヒーチケットの価値が減少するため、貸方勘定科目を「貯蔵品」にし、貯蔵品の残高を減らす処理をします。金額の計算は、次のとおりです。

 

5,000円×3枚/11枚=1,363円

 

今回の計算では、円未満の端数は切り捨てましたが、切り上げでも問題ありません。コーヒーチケットを使い切った時に、その時点の貯蔵品残高をそのまま「(接待)交際費」勘定に振り替え、端数を調整します。

購入したときに費用にする経理処理方法

購入したときに費用にする経理処理方法では、購入した回数券をすべて費用に計上し、決算で残っている部分を資産に振り替えます。上記と同じ例で見ていきましょう。

 

・コーヒーチケット購入時

例)11枚綴りのコーヒーチケット5,000円を現金で購入した。なお、コーヒーチケットは得意先との打合せにのみ使う。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
(接待)交際費 5,000円 現金 5,000円 コーヒーチケット購入

 

・コーヒーチケット使用時
仕訳なし。購入時に全額を経費計上しているため、コーヒーチケット使用時の仕訳は不要です。

 

・決算時

例)決算になり、コーヒーチケットを確認すると5枚(2,272円分)が使用されていなかった。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
貯蔵品 2,272円 (接待)交際費 2,272円 コーヒーチケット未使用分

 

コーヒーチケットの未使用分を(接待)交際費勘定から貯蔵品勘定に振り替えます。金額は、次の計算のとおりです。

 

5,000円×未使用分5枚/11枚=2,272円

 

今回の計算では、円未満の端数は切り捨てましたが、切り上げでも問題ありません。

 

・翌期首の仕訳

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
(接待)交際費 2,272円 貯蔵品 2,272円 コーヒーチケット未使用分

 

翌期首には、決算時の仕訳の振替処理を行います。

回数券を発行した場合の経理処理

ここまでは、回数券を購入した側の経理処理を見てきました。ここからは、回数券を発行した側の経理処理を見ていきましょう。

一般的な回数券を発行した場合の経理処理方法

一般的に、回数券を発行し、現金などを得た場合、一部でも利用されたら未使用分については返金しないケースがほとんどです。そのため、個人事業主の場合、一般的には回数券を発行した時点で売上計上を行います。

※法人の場合は、回数券が利用されたときに売上にします。

 

例)11枚綴りのコーヒーチケット5,000円を現金で売却した。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
現金 5,000円 売上 5,000円 コーヒーチケット

 

例外的に、回数券の利用時に売上に計上する経理処理方法も認められていますが、この方法を取る場合には、あらかじめ税務署長の確認を得ておく必要があります。回数券の利用時に売上に計上する経理処理方法は、次のようになります。

 

・コーヒーチケット販売時

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
現金 5,000円 預り金 5,000円 コーヒーチケット

 

コーヒーチケット代金は、負債区分の「預り金」勘定で処理します。「前受金」などの負債区分の勘定科目で処理しても問題ありません。

 

・コーヒーチケット使用時

例)上記コーヒーチケットを3枚が利用された。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
前受金 1,363円 売上 1,363円 コーヒーチケット使用

 

コーヒーチケットの利用分について、前受金から売上に振り替える処理を行います。

 

※原則、回数券の販売時に売上を計上します。ただし、消費税の課税事業者の場合、消費税の課税売上となるのは回数券が使用されたときです。決算時に回数券の未使用分があった場合は、売上計上と消費税の課税時期が異なるので、注意が必要です。

回数券が使われなかった場合の経理処理方法

次に、回数券が使われなかった場合の経理処理方法について見ていきましょう。個人事業主の場合、原則、売上は商品券の販売時に計上します。すでに、販売時に売上は計上されているため、有効期限が切れるなどして、回数券が使われなかった部分があったとしても、経理処理をする必要がありません。

 

税務署長の確認を得て、回数券の利用時に売上に計上する方法で処理している場合は、有効期限の切れた翌日に次の処理を行います。

 

例)有効期限切れの回数券が発生した。価格は1,000円だった。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
前受金 1,000円 売上 1,000円 回数券未使用分

 

※有効期限切れの回数券は、モノやサービスを提供したわけではありません。そのため、有効期限切れの回数券の売上は、消費税が不課税となります。

まとめ

回数券は減少傾向にありますが、喫茶店など個人経営のお店では、コーヒーチケットのように今後も一定数、回数券の発行や利用は続いていく可能性は高いです。そのため、回数券の経理処理はこれからも必要です。

 

特に、回数券を発行する側では、消費税の課税関係にも影響してきます。回数券の正しい経理処理を行うことが、正しい税金の計算をするために必要不可欠となるでしょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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