法人が保有する外国債券の経過利子の処理方法と税金とは

[取材/文責]長谷川よう

法人が外国債券を取得した場合、経過利子を支払う必要があります。経過利子がどのようなものか、税金はどうなるのかを理解していないと、帳簿付けができません。また、そもそも利子に対して税金がどうなっているのかも理解しておく必要があります。ここでは、外国債券の経過利子の処理方法について解説します。

外国債券の経過利子とは

外国債券の経過利子の処理方法について見ていく前に、外国債券の経過利子とは何か、その概要を見ていきましょう。

 

債券とは、国や地方公共団体、企業などがお金を得るために発行する、いわば借用証書のようなものです。外国債券は、海外の国や企業などが発行する債券で、払い込みなどのやり取りを外貨で行うものをいいます。外貨で行うといっても、通常は日本の証券会社を通じてやり取りを行うため、実際に外貨を自社で購入してのやり取りは少ないです。日本の債券も外国債券も、満期になれば額面金額が支払われるほか、定期的に利子が支払われます。また、他者との売買も可能です。

 

では、経過利子とは何でしょうか。具体例で見ていきましょう。例えば、B社が外国債券を持っていたとします。利子は毎年6月と12月にそれぞれ半年分を受け取ります。A社は、4月にB社から外国債券を買い取りました。6月時点の外国債券の所有者はA社のため、6月になると半年分の利子を受け取ります。

 

そうすると、6月に受け取る半年分の利子は、すべてA社のものでしょうか。答えは「違う」です。1月~3月はB社がその債権を所有していたため、3か月分の利子はB社のものです。そこで、外国債券をB社から購入する際には、あらかじめ3ヶ月分の利子もB社に支払います。このように、買い手が売り手に支払う利子相当分のことを「経過利子」といいます。

外国債券の経過利子にかかる税金の種類

実は、外国債券の経過利子や、そもそもの利子(利息)には、いくつかの税金がかかります。では、どのような税金がかかるのかをここで見ていきましょう。

外国債券の経過利子には源泉徴収税がかかる

外国債券にはいくつかの税金がかかりますが、その代表的なものが利子にかかる源泉徴収税です。これは、国内の債券でも同じですが、原則、債権の利子には20.315%(所得税、地方税、復興特別所得税の合計額)の税金がかかります。

 

外国債券の場合、外国の税金も差し引かれます。まず、外国債券の利子から外国の税金が差し引かれ、その後の金額からさらに、20.315%の税金が徴収されます。

 

利子の税金は、利子を受け取る際にあらかじめ源泉徴収され、源泉徴収後の金額が振り込まれます。すでに税金は差し引かれているため、債権を保有する法人は納税手続きをする必要はありません。

 

外国債券を購入した際に支払う、経過利子も同じです。後の利子受取時には税金が差し引かれます。そのため、一般的には源泉徴収後の金額を所有期間で按分して、経過利子として支払います。

外国債券の経過利子と法人税の関係

では、外国債券の経過利子と法人税の関係はどうなっているのでしょうか。外国債券の利子については、受取時に源泉徴収されていることを先に述べました。すでに税金を支払っているので、法人税に影響しないのではないかと思われる方もいるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。

 

源泉徴収されている内容は、国内の税金20.315%と債権を発行している外国の税金です。つまり、1つの利子から日本と外国の2つの税金が課されていることになります。このような状態を二重課税といいます。我が国の税法は原則、二重課税を避ける考えでつくられています。そこで、「外国税額控除」という制度が設けられています。

 

外国税額控除とは、法人税の計算時や申告書の作成において、外国に支払った税額の一定額を「外国税額控除」として法人税額から差し引き、二重課税を排除する制度です。実は、以前は、日本と外国の2つの税金を合計して、国内の税率になるように調整されていました。そのため外国税額控除の適用はありませんでした。

 

しかし、2016年以降は、まず外国の税金を差し引き、その後の金額に国内の税金を課すことになりました。そこで、外国税額控除が適用されるようになっています。法人税の計算の際には、外国税額控除を忘れずに行う必要があります。

外国債券の経過利子がある場合の会計処理方法

ここまでは、外国債券の経過利子がある場合の税金について見てきました。ここからは、一般的な流れに沿って、外国債券の経過利子がある場合の会計処理方法について見ていきましょう。

 ①外国債券の購入時

外国債券の購入時は購入代金だけでなく、経過利子についても売主に支払う必要があります。

例)100万円の外国債券を購入した。経過利子分5万円と合わせて105万円を普通預金から支払った。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
有価証券 100万円 普通預金 105万円 外国債券
前払利息 5万円     経過利子

 

外国債券については、保有目的により「有価証券」もしくは「その他有価証券」科目で処理します。支払った経過利子については、「前払利息」科目で処理します。そのほかにも、前払費用や前払金、仮払金などの科目で処理しても問題ありません。使いやすい科目で処理してください。

②利子受取時

利子受取時の処理は、外国債券購入後に初めて利子を受け取ったときと、それ以降で処理が異なります。外国債券購入後に初めて受け取ったときには、経過利子の精算が必要です。

・外国債券購入後に初めて利子を受け取った時

例)外国債券購入後に初めて利子を受け取った。受取利子額は12万円、税金2万円が差し引かれて、差額の10万円が普通預金に振り込まれた

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 10万円 受取利息 7万円 外国債権利子
法人税、住民税及び事業税 2万円 前払利息 5万円 源泉徴収税

 

外国債券購入後に初めて利子を受け取ったときには、経過利子の精算が必要です。そこで、外国債券購入時に、経過利息を処理した「前払利息」科目の残高を取り崩す処理をします。「受取利息」科目は「有価証券利息」など、「法人税、住民税及び事業税」は「仮払法人税等」などの科目で処理しても問題ありません。使いやすい科目で処理してください。

・2回目以降の利子受取時

2回目以降の利子受取時には、経過利子の精算はありません。通常の利子受け取りの会計処理を行います。

 

例)外国債券購入後、2回目の利子を受け取った。受取利子額は12万円、税金2万円が差し引かれて、差額の10万円が普通預金に振り込まれた

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 10万円 受取利息 12万円 外国債権利子
法人税、住民税及び事業税 2万円      

 

今回紹介した、外国債券の利子の処理方法は「控除方式」と呼ばれるものです。控除方式とは、利子を税金控除前の金額で認識し、会計処理を行う方式です。一般的には、この方式を取った方が税金の面で有利になる場合が多く、控除方式を採用している法人が多いです。

 

この他に「損金算入方式」があります。損金算入方式とは、税金を損金で計上する方法です。税金を損金で計上するため、税額調整はなく、外国税額控除などもありません。一般的に損金算入方式の方が、経理処理は楽になります。

 

どちらの経理方式を選んだ方が良いのか、また、損金算入方式の処理方法について不明な場合は、税理士などの専門家にご相談ください。

まとめ

国際的な取引が増える中で、外国債券を取得、保有する法人は増えています。外国債券を取得すると、経過利子や外国税額控除などを考慮する必要があります。そのため、経過利子や外国税額控除の制度や処理方法を知っておくことが必要不可欠です。ぜひ、この記事を参考に、正しい処理をしてください。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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