この税金はいつ払うの?個人事業主のための納税スケジュールを解説

[取材/文責]阿部正仁
河鍋公認会計士・税理士事務所代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

個人事業主に課税される税金はさまざまです。「どの税金をいつ支払うのか」について気になるのではないでしょうか。しかし、個人事業主がすべての税金を納税するとは限りません。置かれている立場により、支払い対象となる税目は異なります。そこで、個人事業主の立場ごとの納税スケジュールについて解説します。

事業に関係する税金の納税スケジュール

個人事業主が事業に付随して課税される税金があります。自分の立場に当てはめて、納税スケジュールを確認しましょう。

全ての個人事業主に関係する税金

個人事業主が事業を行えば、収入から経費を差し引いた所得が発生します。その所得に対して所得税・復興特別所得税および住民税が課税されます。それぞれの納付期限は次の通りです。

(1)所得税・復興特別所得税

納付書により現金で納税する場合は確定申告の申告期限と同日の3月15日です。しかし、振替口座で納税する場合、4月下旬に指定口座から引き落とされます(令和6年の場合は4月23日)。

また、所得税・復興特別所得税のうち2分の1以下を5月末まで先延ばしできる延納という制度が利用できます。

延納制度の利用は、確定申告書第1表にある「延納の届出」の欄に記載するのみで可能です。納付を先延ばしできるメリットがありますが、税金に対して利子税(年「7.3%」と「利子税特例基準割合」のいずれか低い割合)が上乗せされるデメリットがあるので、注意しましょう。

河鍋公認会計士・税理士事務所代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

(2)住民税

住民税は所得税・復興特別所得税を納付した後、ほぼ4等分に分けて納付する税金です。納付期限は次の通りです。

納期の区分 納付期限
第1期 6月末日(6月中に条例で定める日)
第2期 8月末日(8月中に条例で定める日)
第3期 10月末日(10月中に条例で定める日)
第4期 翌年1月末日(1月中に条例で定める日)

(3)消費税

納付する税金は「売上に付随して預かった消費税-購入などに付随して支払った消費税」です。

納付期限は確定申告の申告期限である3月末日です(令和6年の場合は4月1日)。しかし、振替口座で納税する場合は4月下旬となります(令和6年の場合は4月30日)。

消費税の場合、確定申告の申告期限や納付期限が所得税と若干違うため注意が必要です。

消費税の計算方法は上記の原則的な方法に加えて、簡易課税や2割特例(経過措置)などもあります。令和5年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始され、原則的な方法の仕入税額控除の計算が複雑になったため、スケジュールに余裕を持って申告に備えたいですね。

河鍋公認会計士・税理士事務所代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

年間の所得税が15万円以上なら予定納税に備えよう

そもそも予定納税とは、確定申告で一定額以上の税金が発生した場合、翌年の税金を前払いする制度です。個人事業主の場合、事業所得や不動産所得などに対する前年の所得税15万円以上が予定納税の基準となります。前年の所得税の2/3を2回に分けて、1/3ずつ納付します。納付期限(令和6年分の場合)は次の通りです。

納期の区分 納期限
予定納税 第1期 9月30日(月)
予定納税 第2期 12月2日(月)
確定申告 3月17日(月)

所得が290万円を超える場合は事業税の納付を検討しよう

個人事業主のうち、不動産投資など特定の業種に対して事業税が課税されます。その最低ラインが所得290万円を超えるかどうかです。納付期限は次の通りです。

納期の区分 納期限
第1期 8月末日
第2期 11月末日

事業税は毎年8月頃に都道府県税事務所から納税通知書が送付されてきます。所得税や住民税の確定申告を行っていれば、改めて個人事業税の申告を行う必要はないため、納付さえ忘れなければ安心です。

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所有する資産に対する税金の納税スケジュール

事業をしている・していないに関係なく、資産を所有していると課税される税金があります。課税対象となる資産と納税スケジュールについて紹介します。

不動産などを所有している場合は固定資産税を納付する

毎年1月1日時点で所有している固定資産が一定額以上の場合、固定資産税が課税されます。固定資産税の対象となる固定資産種類と課税される最低ラインの税額は次の通りです。

固定資産の種類 具体例 課税される最低ラインの税額
土地 宅地、更地など 30万円以上
建物 住宅、店舗など 20万円以上
償却資産 車を除いた機械や備品など事業用の動産
(生活用の動産を除く)
150万円以上

令和6年度の場合、東京都の固定資産税の納付期限は次の通りです。

 

納期の区分 納期限
第1期 7月1日(月)
第2期 9月30日(月)
第3期 12月27日(金)
第4期 翌年の2月28日(金)

 

自治体によって納期限が違うため、注意が必要です。

今まで固定資産税の納付はなかったが、今年になって納税通知書が届くようになったケースもあります。それは、3年毎の固定資産の評価替えで固定資産の評価が上がった場合や住宅を取り壊した場合で住宅用地の特例措置の適用がなくなったなどで、課税される最低ライン(免税点)以上となってしまったことが想定されます。

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自動車・軽自動車に対する税金の納付時期

毎年4月1日時点で運輸支局に登録されている車の所有者に対する税金です。自動車には自動車税、軽自動車には軽自動車税が課税されます。納付期限はともに5月末です(5月中に条例で定める日)。

給料・報酬などの支払いに伴う税金の納税スケジュール

給料を支払う場合には源泉所得税と住民税を天引きします。また、デザイナーなど特定の個人には料金から源泉所得税を差し引いて支払います。これら預かった源泉所得税と住民税を納付期限までに納める必要があります。そこで、納税スケジュールについて見ていきましょう。

従業員が10人以上の場合は原則通りに税金を納付する

預かった源泉所得税と住民税は天引きした日の翌月10日までに納付する必要があります。納期期限よりも1日でも遅れると、基本的に追徴課税を上乗せして支払わなければなりません。

従業員が10人未満の場合は納期の特例で納税を先延ばしできる

原則通り毎月納付することに代えて、納税を先延ばしにすることができます。この制度を納期の特例といいます。源泉所得税と住民税では納付期限などに少し違いがあるため、それぞれの税目について紹介します。

(1)源泉所得税

納付する回数は年2回であり、事前に税務署へ届出が必要です。

区分 納期限
1月から6月までに預かった源泉所得税 7月10日
7月から12月までに預かった源泉所得税 翌年1月20日
・届出の期限

納期の特例を受ける月の前月末日
例)7月から預かった源泉所得税について納期の特例を受けたい場合
届出の期限は6月末日です。

(2)住民税

源泉所得税と同じく納付する回数は年2回ですが、市区町村への申請の期限は自治体によって違ってきます。

区分 納期限
前年12月から5月までに預かった住民税 6月10日
6月から11月までに預かった源泉所得税 12月10日
・申請の期限

基本的に住民税の納期の特例を受けようとする月の下旬の市区町村が多いようです。東京都中野区の場合は「申請書の提出は、特例の適用を受けようとする月の20日頃までにお願いします。」とホームページに明記しています。

私が関与する場合、納期の特例の承認申請は従業員が10人未満の個人事業主の開業や法人設立の場合には、開業届や法人設立届出書、青色申告承認申請と同時に提出するようにしています。提出漏れがないため安心です。

河鍋公認会計士・税理士事務所代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

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クレジットカード払いができる税金は?

税目によってはクレジットカード払いができるようになりました。そのため、クレジットカードの引落日が納付期限となります。それでは、税目について詳しく見ていきましょう。

所得税など国税はクレジットカード払いができる

「Visa」「MasterCard」「JCB」「American Express」「Diners Club」「TS CUBIC CARD」のクレジットカードなら国税を納付することができます。対象となるのは所得税、源泉所得税、消費税など個人事業主に関係する税目です。また、カード手数料は次の表に記載されている金額を納税する本人が負担します。

 

納付税額 決済手数料(税込)
1円~10,000円 83円
10,001円~20,000円 167円
20,001円~30,000円 250円
30,001円~40,000円 334円
40,001円~50,000円 410円
※以降、10,000円を超えるごとに決済手数料が加算されます。

(出典:国税クレジットカードお支払サイト)

https://kokuzei.noufu.jp/

住民税など地方税は自治体によってクレジットカード払いができる

地方税をクレジットカード払いできる自治体があります。たとえば、東京都は自動車税や個人事業主に対する事業税などの税目が対象です。また、カード手数料は次の表に記載されている金額を納税する本人が負担します。

税額 決済手数料(税込)
1円~10,000円 40円
10,001円~20,000円 123円
20,001円~30,000円 205円
30,001円~40,000円 288円
40,001円~50,000円 370円
※以降、税額が10,000円増えるごとに決済手数料が加算されます。

(出典元:地方税お支払サイト)

https://www.payment.eltax.lta.go.jp/pbuser

まとめ

今回は個人事業主に関係する税金の納税スケジュールについて見てきました。さまざまな税目の中で、「どの税金をいつ支払うのか」を把握することで納税の心配が軽くなるでしょう。そのためには、年商などを事前に確認することが大切です。

記事監修者 河鍋税理士からのワンポイントアドバイス

会社員であれば基本的に給料から税金が天引きされますが、個人事業主は税金を自分で計算して自ら納付することが必要です。そのため、納税スケジュールをしっかりと理解しておくことで、納税金額を意識した資金繰りを行えたり、納付漏れを防いだりすることができます。
仮に税金の納付を滞納してしまうと、金融機関などから融資を受けたい場合にネガティブ事項になり、審査が通らない可能性が高くなってしまいます。
また、税務署への届出内容次第で納税スケジュールや税額が変わるものも多数あります。
自分にはどの方法が最適なのか分からない方や不安に感じられる場合は、早い段階で税理士に相談されることをお勧めいたします。

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

河鍋公認会計士・税理士事務所代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

大手監査法人、税理士法人で会計監査、相続税申告を数多く担当し、独立。物腰が柔らかく、真面目な30代の若手代表が運営しており、"気軽に"そして"気楽に"相談できる事務所を目指す。個人・法人の税務顧問はもちろん、資産税や株式上場支援まで幅広くサービス提供しており、顧客のベストパートナーとしてあり続ける会計事務所。

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