ロータリークラブ会費は個人・法人で税務上の扱いが違う!その理由を解説します

[取材/文責]マネーイズム編集部

事業を営むうえでは、職業的なネットワークを拡げることや営業のきっかけを増やすことを目指して、ロータリークラブのような会費を必要とする社交団体に参加する機会があるかもしれません。このような事業に関連する可能性のあるクラブ会費等の支出は、経費として処理することができるのでしょうか。会費等の税務上の取り扱いは、事業者が法人であるか個人であるかによって異なります。この記事では、どのような法令解釈のもとに法人と個人で異なる取り扱いとなっているのかを解説します。

ロータリークラブとは

ロータリークラブとは、アメリカで発足した国際的な社交団体です。日本国内だけでも2,000以上の団体があり、様々な慈善事業への参加を通じて会員同士の親睦を図ったりしています。同じロータリークラブでも、それぞれのクラブで活動は違っていて色々なタイプのクラブが存在しています。ロータリークラブへの参加理由はさまざまであり、多くの同業者や経営者と親しくなることを目的に、ロータリークラブに参加している人もいます。

ロータリークラブの目的

ロータリークラブは、職業において高度の道徳的基準を守ることを奨励し、時には慈善行為やボランティア活動を通して全世界の平和の確立を目指しています。

 

ロータリー章典によると、ロータリークラブの目的は大きく分けて4つあります。

 

  • 知り合いを広めることによって奉仕の機会とすること
  • 職業上の高い倫理基準を保ち、役立つ仕事はすべて価値あるものと認識し、社会に奉仕する機会としてロータリアン各自の職業を高潔なものにすること
  • ロータリアン一人一人が個人として、また事業および社会生活において、日々、奉仕の理念を実践すること
  • 奉仕の理念で結ばれた職業人が、世界的ネットワークを通じて、国際理解、親善、平和を推進すること

 

また、ロータリークラブの会員となるメリットとして、プレゼンテーションスキルの向上や出会うことのないような人と出会えることなどが挙げられます。

ロータリークラブ会費は経費となるか

法人の場合は「交際費」等と規定されている

法人の場合は、ロータリークラブの入会金や会費を「交際費」等として計上できます。具体的な計上の方法については、法人税法にて以下の様に定められています。

 

  • 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。
  • 1以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
引用:国税庁「第3款 会費及び入会金等の費用」

個人の場合は認められないという裁決が出ている

法人がロータリークラブ会費について交際費という名目で経費として処理できる一方で、個人の場合はロータリークラブ会費を経費として処理できません。

 

ここで、ロータリークラブ会費の経費参入に関する採決を紹介します。司法書士業を営む審査請求人が所得税の確定申告に際してロータリークラブの入会金や会費を必要経費に参入したところ、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分が課されてしまいました。そこで2014年3月6日の裁判において、請求人が「顧客の獲得につながる」という理由でこの処分が不当であるとし、処分取り消しを求めました。

 

しかし主に2つの点から、請求人の請求は棄却されました。1点目は、本クラブの活動において入会金や会費の大部分が本クラブの運営費及び活動費等に充てられていること、2点目はこの入会金や会費が司法書士として行う業務と直接関係していないことです。

 

特に後者について、請求人は実際にロータリークラブに入会することで顧客を獲得してきていたものの、請求人の仕事は依頼を受けて登記や供託に関する手続について代理することであり、事務を行う対価として報酬を得ていました。ロータリークラブでの活動は、例会への参加や親睦会への出席、奉仕活動への参加、講演会への出席などであり、これらの活動を社会的通念に照らしてみると、営利性や有償性がないことから、司法書士としての経済活動に合致しないという点がポイントでした。

 

また、仮に入会が業務上必要で支払った費用が家事関連費に該当するような点があったとしても、家事関連費を経費に算入できる条件として「必要である部分を明確に区分できること」があるため、どちらにしても経費としては認められません。

クラブ会費が経費として認められない理由

クラブの入会は顧客獲得の手段では?

経費として処理するべきだと主張する理由として、クラブ入会が顧客獲得の手段になるという考えがあります。実際に、クラブへ入会したことによって新しい顧客と出会い、そのことがきっかけで仕事を獲得したケースもあります。上記で紹介した判例においても、請求人は営業活動の一環としてロータリークラブに入会し、そこでの活動を継続的に行ったことで顧客を獲得していたとのことでした。つまり、ロータリークラブに入会したことが業務上の利益を生み出すことに繋がっているという側面は間違いなくあると言えるでしょう。

 

しかし、判決ではロータリークラブに入会したことは直接的に顧客の獲得につながっているのではなく、あくまでクラブに参加したことによる間接的な効果に過ぎないと判断されました。直接的な効果がないという理由から個人の場合はクラブ会費が経費として認められなかったのです。

法人と個人とで取り扱いが異なる理由

法人では経費として認められるのに、個人ではなぜ経費として認められないのかという点はたしかに疑問が残る部分があります。判決では大きなポイントになったのが個人の私的な消費活動との棲み分けです。ロータリークラブに関わる支出が所得の獲得につながるものであると同時に、私的な消費活動としての側面があると見なされたのです。つまり、ロータリークラブに関わる支出が私的な消費活動と明確に区別できないことが個人で経費として認められない大きな理由の一つです。

 

個人には私的な消費活動がある一方で、法人には私的な消費活動はありません。法人は事業の遂行や利益を生み出すことを目的として設立されます。つまり、法人としての活動は全てその一環であると言えるので、ロータリークラブに関わる支出は経費として認められています。個人は利益の追求という部分のほかに消費という部分が重なってきてしまうので、個人の場合だけが経費として認められなかったようです。

 

☆ヒント
個人事業者のクラブ等入会金の税務上の取り扱いは、公式な解釈通達が出ておらず、今回紹介したのはあくまでこれまで出された裁決の例です。そのため、事業の規模によっては税務処理方法がはっきりとわからない場合もあります。このような難しい判断をするときには顧問税理士がいると安心でしょう。

まとめ

今回は、ロータリークラブ会費の税務上の取扱いの違いについて解説していきました。個人と法人ではロータリークラブ会費以外にも税務上での取扱いが変わってくるケースが存在します。個人事業主にとって税金に関する判断はとても重要な部分になりますのでは、過去の判例などを参考にしながら正しく税務上の処理を行うようにしましょう。

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