税理士と商工会はどう違う?税理士と商工会の違いとそれぞれでできること

[取材/文責]マネーイズム編集部

事業者が確定申告をする場合、専門家に相談したいと思っている人は多いでしょう。税の専門家というと、税理士が思い浮かぶでしょうが、確定申告などの相談を受け付けているのは税理士だけではありません。商工会などでも相談を受け付けています。では、両者の違いは何でしょうか。ここでは、税理士と商工会の違いやできることを解説します。

税理士・商工会・商工会議所の違い

税理士・商工会・商工会議所の違いをまとめると、次のようになります。

 

税理士 商工会 商工会議所
根拠法 税理士法 商工会法 商工会議所法
管轄官庁 国税審議会 経済産業省 中小企業庁 経済産業省 経済産業政策局
地区 日本全国 主として町村の区域 原則として市の区域
会員に占める小規模事業者の割合 9割を超える 約8割
事業 独占業務を中心に個人事業主や企業の会計・税務 特に小規模事業施策に重点を置き、経営改善普及事業を事業の中心としている 中小企業支援だけでなく、国際的な活動なども含めた幅広い事業を実施
税務相談 できる できない できない
税務書類の作成 できる できない できない
経理指導 できる できる できる
確定申告の依頼 できる できない できない
経営相談・支援 できる できる できる
金融相談・斡旋 できる できる できる
税務調査への立ち合い できる できない できない

税理士とは 税理士のできること

確定申告の相談先といえば、税理士のイメージが強いでしょう。しかし、税理士ができる仕事内容について正確に理解している人は少ないかもしれません。そこで、税理士ができることについて紹介します。

税理士とはどんな人?

税理士とは、税理士としての国家資格を所有するだけでなく、税理士登録を行い、かつ、税理士会に入会している、資質を保障された税の専門家です。税理士法第一条では、税理士を次のように定めています。

 

「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています」

税理士しかできないことがある!税理士の仕事内容とは

税理士には、税理士しか行えない業務があります。これを「税理士の独占業務」といいます。独占業務は税理士法で定められており、税理士以外の人がその業務を行うと、法律違反となります。税理士の独占業務には、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つがあります。それぞれについて見ていきましょう。

①税務代理

税務代理とは、企業の代理で税に関する様々な業務を行うことです。具体的には、税務署等への税金の申告や申請・届出や、税務調査への立ち会い、不服の申し立てなどが税務代理になります。

②税務書類の作成

企業や個人事業主に代わり、様々な税務関係の書類を作成することも、税理士の独占業務のひとつです。税務関係の書類は原則、納税者が作成することになっていますが、特別な知識が必要な場合も少なくありません。そこで、税理士が納税者本人に代わっての作成が認められています。具体的には、税務署や各自治体に提出する税務申告書の作成、申請書・届出書などの作成を行います。

③税務相談

税務相談とは、個別の税務についての相談のことです。税務書類等の作成に際し、納税者は、その会社毎に個別の悩みを持っています。その具体的な事項に対して相談に応じる業務は税理士しかできません。ただし、一般的な税務の話は税務相談には該当しないため、税理士の独占業務とはなりません。

商工会とは 商工会でできること

税務代理、税務書類の作成、税務相談は、税理士の独占業務のため、税理士しかできません。では、商工会ではどのようなことができるのでしょうか。違いを詳しく見ていきましょう。

商工会(全国商工連合会)とは

商工会は、商工会法という法律に基づいて、主に町村部に設立された公的団体です。商工会は会員制をとっており、地域の事業者が業種に関わりなく会員となって、お互いの事業や地域の発展のために総合的な活動を行うことを目的としています。

 

経済産業省、中小企業庁の管轄のもと、都道府県単位では商工会連合会、全国単位では全国商工会連合会の組織がありますが、商工会といえば、一般的には町村単位のものをいいます。

 

会員に占める小規模事業者の割合は9割を超えています。特に小規模事業施策に重点を置き、経営改善普及事業を事業の中心としています。後述する商工会議所及び他の商工会と地区は重複しません。

商工会(全国商工連合会)でできること

商工会では、会員向けに中小企業に寄り添った、様々な施策を行っています。ここでは、そのうち主なものを紹介します。

①経営相談

商工会には経営に詳しい経営指導員などがいます。経営について悩んでいる事業者は、様々な課題について経営指導員からアドバイスを受けられます。経営相談は商工会の窓口だけでなく、定期的に地域を巡回して行われています。

②経理指導

帳簿の付け方から決算、申告の仕方の指導や、税金に対する一般的な知識のアドバイスなどを行います。

③税務相談

税務相談は税理士の独占業務のため、商工会ではできません。そのため、確定申告時期などになると、商工会主催で招いた税理士により、税務相談を行っています。

④その他

その他商工会では、金融や信用保証に関する相談や斡旋、インターネットを活用した企業情報などの各種地域情報を発信する事業を行っています。

税理士と商工会の他に、商工会議所もある

ここまで、税理士と商工会の説明をしてきましたが、商工会と似ているものに商工会会議所があります。商工会と商工会議所は名前が似ていますが、違う組織です。ここでは、商工会議所について紹介します。

商工会議所(日本商工会議所)とは

商工会議所は、商工会議所法という法律に基づいて、原則として市の区域に設立された公的団体です。商工会議所は、日本の企業や地域を元気にすることを目的に設立された経済団体で、国や自治体から独立した機関です。

 

経済産業省、経済産業政策局の管轄のもと、都道府県単位では商工会議所連合会、全国単位では日本商工会議所の組織がありますが、商工会議所といえば、一般的には市単位のものをいいます。

 

会員に占める小規模事業者の割合は約8割で、地域の総合経済団体として、中小企業支援だけでなく、国際的な活動なども含めた幅広い事業を実施しています。他の地区の商工会議所及び商工会と地区は重複しません。

商工会議所(日本商工会議所)でできること

商工会議所では、中小企業に寄り添った、様々な施策を行っています。ここでは、そのうち主なものを紹介します。

①地域振興

商工会議所の重要な仕事の1つが地域振興です。プレミアム商品券の発行やB級グルメなどの施策もその1つです。

②中小企業振興

経営相談や最大1,500万円まで無担保・無保証で融資が受けられる「マル経融資」などの橋渡し、ビジネス交流会の実施などの中小企業振興を行っています。

③共済制度

生命共済や特定退職金共済、PL共済など、中小企業に必要な共済や保険事業を展開しています。

④その他

その他、職業訓練を通じて、必要な人材を育成・確保できる「ジョブカード制度」や販売士や日商簿記などの検定試験を実施しています。

 

商工会も商工会議所も、中小企業の支援を目的としているため、中小企業振興など似ている施策も多くあります。ただし、地区を重複しないように設置されているため、経営相談や融資などの相談については、近くにある商工会または商工会議所のどちらかに相談しましょう。

 

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まとめ

税理士と商工会、商工会議所は、異なる人、組織です。税理士は税の専門家であり、主に税務代理や税務書類作成など独占業務を中心に業務を行っています。税金や確定申告などの相談は、税理士に依頼します。

一方の商工会や商工会議所は、中小企業や地域の発展のために活動している団体です。どちらも、経営や融資の相談など幅広い事業を展開しています。これらの相談がある場合は、近くの商工会または商工会議所を利用するようにしましょう。

 

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