輸入をしている個人事業主にかかる税金の種類と注意点について
ひと昔前に比べ、今はインターネットの普及などにより、顧客や仕入先を見つけることがより楽になっています。そんな中、個人事業主であっても商品を輸入し、国内で販売している人も多いです。そこで、不安になるのが税金のことでしょう。そこで、ここでは輸入をしている個人事業主にかかる税金について解説します。
輸入にかかる経費と所得税
個人事業主は毎年、所得税の確定申告と納税をする必要があります。所得税はもうけに対して課されるため、輸入にかかる経費の取り扱いが重要になります。ここでは、輸入にかかる経費と所得税について見ていきましょう。
売上原価の考え方とは
必要経費のことを考える前に、まず知っておきたいのが、売上原価とはどのようなものかということです。売上原価とは言葉のとおり、売上に対する原価です。つまり、販売した商品の原価がいくらかを示すものであり、売上原価とその年に仕入れた商品はイコールではありません。
例えば、100円のものを100個仕入れた場合、仕入高は100円×100個=10,000円です。このうち80個が120円で売れたとします。この場合の売上高は80個×120円=9,600円です。では、利益はどうなるのでしょうか。100円で購入したものが120円で売れたので1つの利益は20円です。それが80個売れたので、80個×20円=1,600円が利益のはずです。
ところが、現状だと売上高9,600円、仕入高10,000円で400円の損失となっています。これは、仕入高の中に売れ残った商品が含まれているからです。そこで、仕入高から売れ残った商品を差し引き、売上原価を求めます。売上原価は、次の計算式で求めます。
輸入にかかる経費と売上原価の関係
実は輸入にかかる経費の中には、売上原価に含まなければならないものがあります。経費の場合は、支払った金額がそのまま利益から差し引かれますが、売上原価の場合は売れた分しか差し引かれません。そこで、きちんと区分しておく必要があります。輸入にかかる経費には、次のようなものがあります。
- ① 販売商品の購入代金
- ② 販売手数料
- ③ 国際運送料、国内運送料
- ④ 関税、消費税
- ⑤ その他の経費(ネット代や光熱費、家賃、書籍代、セミナー代など)
このうち、その他の経費を除く①~④までが、売上原価にしなければならない支出です。
輸入取引の場合は、消費税に気をつけよう
国内で購入した商品と輸入した商品では、消費税の取り扱いが異なります。ここからは、輸入取引の場合の消費税について見ていきます。
関税で支払う経費の処理方法
商品を海外から輸入した場合、税関で商品を受け取る際には輸入申告を行い、関税などの税金も支払います(輸入代行業者に依頼している場合は、輸入代行業者が行います)。では、税関で支払っている税金には、どのようなものがあるのでしょうか。
実は、税関では関税のほかに、輸入消費税(国税と地方税)も支払っています。輸入の場合も、消費税率10%の引き上げの影響を受けます。消費税率が8%の場合は、輸入消費税(国税)6.3%と輸入消費税(地方税)1.7%の内訳でしたが、消費税率10%に引き上げされた後は、輸入消費税(国税)7.8%と輸入消費税(地方税)2.2%の内訳になります。では、税関で各税金の支払いをした場合の処理について見ていきましょう。
例)税関に輸入申告を行い、関税1万円、輸入消費税(国税)7万円、輸入消費税(地方税)2万円の合計10万円を現金で支払った。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
仕入高 | 1万円 | 現金 | 10万円 | 関税 |
仕入高または
仮払消費税等 |
7万円 | 輸入消費税(国税) | ||
仕入高または
仮払消費税等 |
2万円 | 輸入消費税(地方税) |
関税や輸入消費税(国税・地方税)は、売上原価にしなければならない、「仕入高」で処理します。ただし、消費税を税抜処理で帳簿付けしている場合は、「仮払消費税等」で処理する必要があります。消費税の納付額を計算しやすくするため、通常、輸入消費税(国税)と輸入消費税(地方税)は分けて仕訳します。
輸入取引の消費税の取り扱い
国内で商品を仕入れた場合は、商品の購入代金に対して8%または10%の消費税が課されます。では、海外から輸入した商品はどうかというと、商品の購入代金に対して消費税が課される訳ではありません。
実は、商品の購入代金だけではなく、商品の購入代金に保険料などの諸費用や関税などを加えた金額に消費税が課せられます。そのため、決算時に消費税の納付額を計算するためには、国内の仕入と輸入仕入は分けて管理する必要があります。
では、輸入消費税は消費税の納付額にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
消費税の納付額は、簡単にいうと、「顧客から預かった売上の消費税」から「経費などと一緒に取引先などに支払った消費税」を差し引いて計算します。もちろん、輸入消費税も税関に支払っているため、「経費などと一緒に取引先などに支払った消費税(仕入税額控除)」になります。
ただし、輸入消費税は輸入申告を税関で行った時に消費税を支払ったと考えます。支払いが決算後であっても、決算前に輸入申告を行った場合は、輸入申告を行った年度で処理する必要があるので、注意が必要です。
輸入取引の会計処理方法
海外との取引がある場合は、日本円と外貨の2つの通貨を使って取引を行います。しかし、日本での会計処理はすべて日本円で行う必要があります。そこで、輸入取引がある場合は、一定の基準に従って会計処理をする必要があります。ここでは、輸入取引の会計処理方法を見ていきましょう。
外貨建会計処理基準のポイント
海外の商品を外貨を使って購入した場合、外貨を日本円に換算して会計処理を行います。これを「外貨建会計処理」といいます。では、商品の購入、代金の支払い、決算時に外貨が残っていた場合には、どの日の為替レートを使って処理するのでしょうか。一般的なルールは次のようになります。
- 商品の購入時:購入時の為替レート
- 代金の支払い時:支払時の為替レート
- 決算時:決算日の為替レート
基本的には、その日のレートを使って処理することになります。
輸入取引の具体的な仕訳方法
では、具体例で輸入取引の仕訳を見ていきましょう。
①商品の購入時
200ドルの商品を購入した。購入時の為替レートは1ドル=100円だった。代金の支払いは後日行う。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
仕入高 | 2万円 | 買掛金 | 2万円 | 商品購入 |
②代金の支払い時
上記商品の代金の半分100ドル分(1万円分)を現金で支払った。支払い時の為替レートは1ドル=90円だった。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
買掛金 | 1万円 | 現金 | 9千円 | 購入代金の支払い |
為替差益 | 1千円 | 為替差益 |
買掛金1万円の支払いが必要なところ、為替レートの変動で9千円の支払いで済んでいます。そのため、差額の千円は利益(為替差益)として処理します。逆に、為替レートの変動で、購入時より高い金額で支払う必要がある場合は、差額を損失(為替差損)として処理します。
③決算時
決算時に、上記買掛金の未払分が100ドル(1万円分)残っていた。決算時の為替レートは1ドル=110円だった。
決算時に買掛金が残っている場合は、決算時レートで評価替えを行います。
すでに1万円の買掛金は計上されているため、差額の1千円の買掛金を増やす処理を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
為替差損 | 1千円 | 買掛金 | 1千円 | 為替差損 |
まとめ
個人事業主が輸入取引をしている場合に影響がある税金が、所得税と消費税です。所得税については売上原価の取り扱いに気を付けます。販売商品の購入代金だけでなく、販売手数料や運送料、関税などは売上原価に含める必要があります。
消費税については、国内の仕入と取り扱いが異なるため、仕入税額控除の時期などに気をつける必要があります。特に決算時の処置には注意が必要なため、個別の事例で不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。
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