2024年に変わることや主な法改正一覧!物流業などの労働時間の上限規制、社会保険適用拡大など私たちへの影響も

[取材/文責]田中あさみ

2024年から変わることとして、自動車運転業務・建設業・勤務医などの時間外労働の上限規制、社会保険適用拡大などがあり、私たちの生活にも影響を及ぼす可能性があります。
既に1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、固定電話の通話料金が一律化されました。
損金不算入とする飲食費の金額の引き上げや労働条件明示のルール改正は法人に影響があり、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行は個人事業主の業務に関係するでしょう。
2024年から変わることや主な法改正の一覧、その影響を解説していきます。

2024年に変わること・主な法改正の一覧

2024年から変わることや主な法改正は以下のとおりです。

日付 出来事
2024年1月1日 改正電子帳簿保存法の施行電子取引で授受したデータの保存が義務化に
2024年1月1日 固定電話の通話料金が一律化
距離に依存しないIP網に移行、全国一律9.35円(3分)に
2024年4月1日 自動車運転業務・建設業・勤務医などの時間外労働の上限規制
原則として時間外労働を月45時間、年360時間以内に

※自動車運転業務は、特別条項付き36協定を締結する場合時間外労働の上限が年960時間など例外あり
2024年4月1日 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
バス・トラック・タクシーなど自動車運転者の労働の実態を考慮し、それぞれ拘束時間、休息期間などについて基準を定める
2024年4月1日 金融商品取引法改正
上場会社などの四半期報告書制度の廃止、半期報告書に関する規定を整備など
2024年4月1日 損金不算入とする飲食費の金額の引き上げ
法人にとって損金不算入となり交際費などの範囲から除外される一定の飲食費の金額基準が1人あたり1万円以下(現行:5,000 円以下)に引き上げられる
2024年4月1日 労働条件明示のルールが改正
労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加など
2024年7月3日 新紙幣発行
2024年10月1日 社会保険適用拡大
従業員数51人以上(現行:101人以上)の企業の従業員は、①週の所定労働時間が20時間以上、②所定内賃金が月額8.8万円以上、③2ヶ月を超える雇用の見込みがある、④学生ではないという4つの要件を満たし労使双方が合意している場合、健康保険・厚生年金保険に加入義務化
2024年11月半ばまで フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護新法)施行予定
個人事業主に業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件を明示する、給付を受領した日から原則60日以内での報酬の支払いなどが義務付けられる

特に多くの人に影響を及ぼすと予測されるのは4月の自動車運転業務・建設業・勤務医などの時間外労働の上限規制と10月の社会保険適用拡大です。

詳しく見ていきましょう。

2024年に変わること6つをピックアップ

2024年から変わることとして、改正電子帳簿保存法の義務化、自動車運転業務などの時間外労働の上限規制、社会保険適用拡大など6つを見ていきましょう。

改正電子帳簿保存法の施行・電子取引データの保存義務化へ

2024年1月1日から改正電子帳簿保存法が施行されました。
オンラインで授受する電子取引データについては、以下4つの要件を満たした状態で保存する必要があります。

1.システム概要に関する書類を備え付ける
2.ディスプレイやプリンタなど見読可能装置を備え付ける
3.電子取引データの検索機能を確保する※
4.改ざん防止のための措置をとる

※猶予措置あり

詳しくは「2024年の電子帳簿保存法改正、個人事業主・法人の対応を解説!タイムスタンプは不要?」をご覧ください。

固定電話の通話料金、全国・全時間帯一律に

2024年1月1日以降、NTT東日本・NTT東日本の固定電話回線は従来の通信網からIP網に切り替わりました。

NTT東日本のホームページには「固定電話(加入電話・INSネット)の契約数等が減少し、電話サービスのために用いられている公衆交換電話網(PSTN)の設備(中継交換機・信号交換機)が2025年頃に維持限界を迎えることから、2024年1月1日以降に固定電話(加入電話・INSネット)の設備切り替えをいたします」と記載されています。

切り替えに伴い固定電話の通話料金が、全国・全時間帯一律9.35円(3分)に変わりました。

金融商品取引法改正・四半期報告書廃止へ

2024年4月1日から、金融商品取引法改正により上場会社などの四半期報告書制度が廃止され、廃止に伴い半期報告書に関する規定整備などが行われます。

物流業・建設業・医師などの時間外労働の上限規制と改善基準告示

2019年4月(中小企業は2020年4月)から労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

一方で自動車運転業務・建設業・勤務医などは長時間労働の背景として、業務の特性や取引慣行の課題があることから、適用が5年間猶予されていました。

2024年3月31日に猶予期間が終了し、4月からは原則として時間外労働は月45時間、年360時間以内が上限です。

ただし、自動車運転業務は特別条項付き36協定を締結する場合、時間外労働の上限が年960時間などの例外があります。

加えて自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)が改正され2024年4月から適用開始です。

改善基準告示とは、バス・トラック・タクシーなど自動車運転者の労働の実態を考慮し、それぞれ拘束時間、休息期間などについて基準を定めるものです。

社会保険適用拡大

2024年10月1日から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用が拡大されます。
これまで従業員数101人以上の企業が対象でしたが、10月からは従業員数51人以上の企業も対象となります。

1:週の所定労働時間が20時間以上、②所定内賃金が月額8.8万円以上、③2ヶ月を超える雇用の見込みがある、④学生ではないという4つの要件を満たしている従業員は基本的に社会保険への加入義務が生じます。

フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護新法)施行

2023年2月24日に内閣官房を中心に、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省で検討を行い「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が国会に提出され可決成立し、5月12日に公布されました。

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、公布日から1年6カ月を超えない期間内(2024年11月半ばまで)に政令で定める日に施行されます。

事業者は、業務委託を依頼した個人事業主に対して給付の内容や報酬の額などを書面または電磁的方法により明示しなければならない、受領した日から60日以内に報酬を支払うなどの規定が定められます。
「正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制しない」など、7つの禁止事項も義務づけられます。

2024年に変わること、特に私たちの仕事や生活に影響を及ぼすのは?

2024年に変わることの中でも多くの人に関係する①物流業・建設業・勤務医などの時間外労働の上限規制、②社会保険適用拡大が及ぼす影響について解説していきます。

2024年問題

2024年問題とは、4月から物流業・建設業・勤務医などに対しての時間外労働の上限規制が適用され人手不足に陥ることです。
人手不足になることで、物流が滞り配送が遅れる、病院で医師不足になる、建物の建設が遅れるなど私たちの生活に影響を及ぼす恐れがあります。

特に物流業界のドライバー不足が問題視されています。
2023年6月には業界大手のヤマトホールディングス(ヤマト運輸)が、物流業界で深刻化する人手不足に対応するためメール便などの配達を日本郵便に全量委託すると発表しました。

ただし、労働基準法は業務委託のドライバーには適用されないため物流業界の人手不足は個人事業主などが業務委託で対応する可能性があります。

社会保険適用拡大

2024年10月1日からは、従業員数51人以上の企業で一定の要件を満たす従業員は社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が生じます。

事業主は保険料を半分負担しますので、パートやアルバイトを雇用する企業にとっては社会保険料の負担が増えてしまうでしょう。

従業員の中にも「配偶者の扶養内で働きたい」という兼業主婦(夫)がいると予測されますので、企業と従業員が相談し社会保険について検討していくことになります。

まとめ

2024年に変わることや主な法改正を知り、今後の参考にしていきましょう。

大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。

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