宗教法人がモノを売買したら税金がかかる?宗教法人の税務とは

[取材/文責]長谷川よう

瀬戸内寂聴さんや細木数子さんがお亡くなりになり、改めて宗教家や宗教法人、その税金に注目が集まっています。宗教法人は税金がかからないということを聞いたことがある人は多いでしょう。

 

では、宗教法人はすべてに税金がかからないのでしょうか。ここでは、モノを売買した場合など宗教法人の税務について解説します。

宗教家の税金はどうなる?宗教法人との違いとは

2021年11月に細木数子さんと瀬戸内寂聴さんという著名な宗教家が相次いでお亡くなりになりました。2人は知名度が高く、そのニュースは新聞やニュースなどで大きく報じられました。

 

改めて宗教家や宗教法人、またその税金に注目が集まっていますが、実は宗教家と宗教法人は別のものです。宗教家とは、普及活動や研究などを行っている宗教に深い知識を持つ人のことをいいます。

 

宗教法人とは、簡単にいうと、法人化された宗教団体のことです。宗教家や信者などで構成されていることも多いです。このように宗教家と宗教法人は個人と法人格を持つ団体という違いがあります。

 

税金面でいうと、宗教家が執筆して本を出版して得た収入や、宗教法人からの給料など、個人で得た収入には原則、税金がかかります。一方、宗教法人の場合は、宗教法人の活動から得る収益は基本的に税金がかかりません。それは、宗教法人には公益性があることや、そもそも宗教法人は非営利目的の活動を行う団体であるため、収益を生む目的で活動をしていないという考え方が背景があるためです。

宗教法人がモノを販売したときの税金とは

宗教法人には公益性があることや、そもそも非営利目的の活動を行う団体のため収益を生む目的で活動をしていないということで、原則、税金が課されません。

 

しかし、宗教法人でもモノを販売して利益をあげている場合もあります。そこで、ここでは宗教法人がモノを販売したときの税金について見ていきましょう。

宗教法人でも税金がかかる場合がある

宗教法人には原則、税金がかかりませんが、すべての活動に税金がかからないわけではありません。収益を挙げることを目的とした活動については、税金がかかります。収益を挙げることを目的とした活動のことを、収益事業といいます。

 

では、どのような活動が収益事業になるのでしょうか。実は、収益事業の内容は法律で定められています。収益事業となる活動とは、物品販売業や物品貸付業、不動産販売業や不動産貸付業、印刷業や出版業、旅館業や駐車場業など34種類の事業が該当します。宗教法人が34種類 の収益事業を継続して、事業場を設けて行う場合には、その収益に税金が課されます。

 

また、宗教法人に勤めている人の給料には、普通の企業の会社員と同じように所得税などの税金がかかります。宗教法人も源泉徴収義務があるため、従業員の給料から税金を源泉徴収し、国に納める必要があります。

収益事業になるかどうかの判定

収益事業とは、収益を挙げることを目的とした活動のことですが、お寺や神社などの宗教法人では、どの行為が収益事業になるのかわかりにくいこともあります。そこで、ここでは代表的なものについて具体例を挙げて、収益事業になるかどうかの判定を見ていきましょう。

 

1.モノの販売

・お守りやおみくじなどの販売

お守りやおみくじ、お札などの販売は、一般的な商品の販売に比べて、利益が多く出るものではありません。法律上は、利益があまり出ないいわゆる寄付のようなものと考えられます。これを喜捨金(きしゃきん)と呼びます。

 

税法上、実質的な喜捨金と認められるような場合は、収益事業とは認められないため、お守りやおみくじなどの販売から得た利益には、税金がかかりません。

 

・集印帳や暦、ろうそくなどの販売

お守りやおみくじ、お札などは、一般のお店ではあまり販売していません。しかし、集印帳や暦、ろうそく、線香や絵葉書など、一般のお店でも販売されている商品をお寺や神社などの宗教法人で販売していることも多いです。

 

一般のお店でも販売されている商品の販売は原則、収益事業になり、税金がかかります。

ただし、一般のお店でも販売されている商品であっても、線香やろうそくなどで、神前、仏前などにささげるための目的で販売しているものについては、収益事業にはなりません。

 

2.不動産の貸付

・墳墓地等の貸付

墳墓地等の貸付は収益事業に該当しないため、税金はかかりません。毎月の使用料の徴収であっても、永代使用料として一括で使用料を徴収しても同じです。

 

・墳墓地等以外の貸付

墳墓地等以外の不動産の貸付は原則、収益事業に該当し、税金がかかります。また、宗教法人の境内にある施設や講堂などを会議や遊興などの目的で貸し出した場合の収益も原則、収益事業として、税金がかかります。境内駐車場の貸付についても原則、収益事業として税金がかかります。

 

3.旅館など宿泊施設の経営

旅館など宿泊施設の経営は、それが信者や参詣人の宿泊であったとしても原則、収益事業に該当し、税金がかかります。

 

ただし、宗教活動のために簡易な共同宿泊施設を設け、素泊まりなら1泊1,000円以下、食事付きなら2食付き1,500円までの宿泊料となっているものについては、収益事業にはなりません。

宗教法人がモノを販売したときには消費税がかかる

宗教法人がモノを販売したときにかかる税金は、法人税だけではありません。消費税についても課税の対象となります。

 

そこで、ここでは宗教法人と消費税の関係について見ていきましょう。

消費税の基本的な考え方

そもそも消費税とは、モノやサービスを消費した場合に、一般に広く課税される税金のことです。消費税は一般の消費者が納める税金ですが、消費者一人ひとりが税務署に税金を納めるわけではありません。商品の販売やサービスの提供をしている会社が、代金の受け取り時に預かった消費税を消費者に代わって国に納める間接税となっています。

 

ただし、すべての会社が消費税を納めている訳ではなく、前々年度の課税売上高が1,000万円以下の企業など、一定の規模の小さな会社は消費税の納税を免除されています。

 

宗教法人も免税事業者を除き、モノを販売したときには消費税がかかります。ただし、一定のものについては、消費税を課さないとする配慮もあります。

宗教法人の行う主な事業の課税・非(不)課税判定

消費税には、課税、非課税、不課税という考え方があります。非課税と不課税の違いは、非課税は本来、消費税がかかる事業であっても、政策や社会的配慮により消費税を課さないとされているもののことです。不課税とは、そもそも消費税がかからない行為のことです。

 

宗教法人でも事業によって、消費税の課税、非課税、不課税が分かれます。宗教法人の行う主な事業の消費税の課税・非課税・不課税判定は次のようになります。

宗教法人の行う主な事業 消費税課税・非(不)課税判定
 葬儀や法要などの収入 不課税
 お守り、おみくじなどの販売 不課税
 集印帳や暦、ろうそくなどの販売 課税
 土地の貸付 非課税
 建物の貸付 課税(住宅や寮など居住用のものは非課税)
 簡易宿泊所の経営 不課税
 墓地、霊園の管理料 課税
 幼稚園の経営 原則、非課税。ただし、制服、制帽や文房具などの販売は課税
 結婚式 挙式を行う行為(宗教活動の一部)は不課税
披露宴による飲食の提供や挙式の衣装の貸付は課税
 拝観料 不課税

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宗教法人は税金優遇?非課税って本当?いくら儲けても非課税?

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まとめ

宗教法人とは、簡単にいうと、法人化された宗教団体のことです。宗教法人には公益性があることや、そもそも非営利目的の活動を行う団体であるため、宗教法人の活動から得る収益には基本、税金がかかりません。

 

ただし、収益を挙げることを目的とした活動である収益事業から得た収益については法人税などの税金が課されます。また、宗教法人で働く従業員の給料への源泉徴収義務があったり、一定の事業には消費税が課されたりと、宗教法人であっても、税金が大きく関係することがわかります。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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