未成年も個人事業主になれる?未成年と税金の関係
さまざまな職業が増えている中、子役やユーチューバーなど、未成年であっても自分の力でお金を稼いでいる人が増えています。仕事している未成年やその親にとって気になるのが、未成年でも個人事業主になれるのか、税金はどうすればよいのかということではないでしょうか。今回は、未成年と税金の関係について解説します。
未成年者と労働の関係とは
未成年者の労働の条件とは
税金の話の前に、そもそも未成年者が労働するためには、どのような条件があるかを見ていきましょう。何歳から労働することができるのかについては、労働基準法で定められています。労働基準法第56条では、最低年齢について、次のように記載されています。
「使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない」。
この条文で、満十五歳と三月三十一日としているのは、義務教育を受けている未成年者が労働させられないように保護するためのものです。しかし、世の中には子役のように義務教育を受けている未成年者でも働いている人が多いと思われるでしょう。これは、労働基準法第56条2項で例外が定められているためです。労働基準法第56条2項の内容は要約すると次のようになります。
①児童の健康及び福祉に有害でないこと及びその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受ければ、満十三歳以上の児童であれば、修学時間以外に雇用できる
②映画の製作又は演劇の事業については、①の条件を満たせば、満十三歳に満たなくても雇用できる
この規定により、労働が軽易な業種の場合は満十三歳以上、芸能関係であれば年齢に関係なく仕事ができるようになっています。
未成年者の財産は誰のもの?
労働基準法を根拠に、未成年者でも労働することができることがわかりました。では、未成年者が労働で得た給料などの財産は、いったい誰のものなのでしょうか。「未成年者のもの? 保護者である親のもの?」いろいろな考え方ができます。実は、未成年者が労働で得た給料についても労働基準法で定められています。労働基準法第59条では、次のように記載されています。
「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代わって受け取つてはならない」。
つまり、未成年者が労働で得た給料は、親のものではなく、子どものものということになります。このことは、後述する税金を誰が支払うのかに関係してくるので、未成年者が労働する場合には、押さえておく必要があります。
未成年者は個人事業主になれる?
そもそも事業とは―事業の要件
未成年者でも労働をすることはできますが、未成年者は個人事業主として開業して仕事をすることができるのでしょうか。個人事業主とは、法人ではなく個人で事業をしている人のことを指します。そこで、未成年者と個人事業主の関係を見ていく前に、そもそも事業とは何かについて確認しましょう。
事業とは、その仕事を反復、継続、独立して行うことです。「反復、継続、独立」とは簡単にいうと、次のようになります。
反復とは例えば、物を仕入れて、利益を上乗せして販売するといった行為を繰り返すこと、継続はその行為を毎年続けていくこと、独立とは会社組織などに属さず自分でその仕事を行っていくことです。
つまり、そのとき一度だけの行為は事業とはなりません。例えば、知り合いに自分の使用している車を販売する行為は、反復や継続することはないので、事業にならないことになります。
開業には未成年者登記簿が必要
では、未成年者がしている仕事が、反復、継続、独立して行っているもので事業となる場合はどうなるのでしょうか。未成年者であっても、事業を行っている場合は個人事業主になります。個人事業主になるのには、年齢制限はありません。そこで、事業を始めたら、所轄の税務署に「開業届」を提出する必要があります。
通常は、開業届に添付書類は必要ありません。しかし、未成年者の場合は「未成年者登記簿」という書類を添付する必要があります。実は、未成年者が自分の名前で商売をする場合は、法務局でその旨を登記する必要があります。未成年者が自分の名前で商売をする旨を登記することを「未成年者登記」、登記されている公の帳簿を「未成年者登記簿」といいます。つまり、未成年者が事業を始めた後に行う手続きとしては、まず法務局で未成年者登記を行い、未成年者登記簿を入手します。次に所轄の税務署に開業届を提出する流れになります。
未成年者登記は、原則、未成年者の申請で行われます。また、申請には保護者などの法定代理人の許可(法定代理人の許可を得たことを証明する書面の添付、または申請書への法定代理人の記名押印)が必要なので注意しましょう。未成年者登記簿を入手し、所轄の税務署に開業届を提出すれば、いよいよ個人事業主として活動開始となります。
未成年が個人事業をする場合の注意点
未成年であっても確定申告が必要
ここからは、未成年が個人事業をする場合の注意点について見ていきましょう。
日本では、サラリーマンなどの給与所得者などを除いて、原則1年間の収入や所得、所得税額を自分で計算し、国に申告・納付する申告納税制度を採用しています。そのため、個人事業主は年に1回、所得税の確定申告を行う必要があります。これは、成年、未成年関係ありません。そのため未成年であっても確定申告が必要です。
確定申告は原則、納税者自らが行う必要があります。では、未成年者も自分で確定申告を行う必要があるのでしょうか。未成年者といっても年齢はさまざまです。実は、未成年者が必ず自分で確定申告をしなければならないということはありません。親は未成年者の財産を管理することができます。そこで、原則、親が子どもの代理として確定申告書の作成や提出などの手続きを行うことになります。
税金は未成年のお金から支払う必要がある
未成年が個人事業をする場合の2つ目の注意点が、税金の支払いです。未成年者が労働で得た給料は、親のものではなく、子どものものです。そのため、税金も子供のお金から支払う必要があります。確定申告の手続きを親が代行しているので、ついつい親のお金で子供の税金を支払ってしまいがちです。しかし、ここで覚えておいてほしいのが、決して親が、自分のお金で子供の税金を支払ってはいけないということです。
もし、親が自分のお金で子供の税金を支払ってしまったらどうなるのでしょうか。この場合は、その税金分を親から子供へ贈与したとみなされる可能性があります。贈与したとみなされると、金額によっては贈与税が課されます。つまり、子供の税金を支払っているのに、さらに贈与税の支払いまで生じてしまうのです。
贈与税には1年間に110万円までの基礎控除があるため、実際には贈与税がかかることは少ないと考えられますが、特別の事情がない限りは、子供のお金から税金を支払うようにしましょう。
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まとめ
今回は、未成年者と個人事業主、税金の関係について解説しました。世の中の変化とともに、これからは、今までより未成年であっても自分で事業を行うことが多くなっていくと考えられます。そのため、未成年者やその親であっても、開業の手続きや確定申告の方法を知っておく必要があるでしょう。未成年者で開業しようと考えている場合は、ぜひこの記事を参考に正しい手続きを行いましょう。
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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