プライベート用の中古車を個人事業主の税金対策にいかす方法!

[取材/文責]阿部正仁

中古車を節税対策に利用できるケースは新車を購入した場合だけに限りません。プライベート用の中古車を事業用に使用した場合も節税効果を得ることができます。しかし、プライベート用の中古車の場合、経費で落とす方法が特殊です。そこで、プライベート用の中古車を節税対策に利用する方法について解説します。

自家用車代金を経費で落とす方法

プライベート専用の自家用車の購入費用を会社の経費で落とす方法について、個人事業主と法人に分けて説明します。

業務用に転用する方法~個人事業主~

個人事業主が自家用車などの固定資産を非業務用(プライベート専用)から業務用に転用した場合、購入費用を減価償却により、必要経費に計上します。減価償却とは、税法上の使用可能期間に相当する耐用年数にわたって、固定資産の購入費用を費用化する手続きです。たとえば、耐用年数5年の自家用車100万円を購入して業務用に転用した場合、後述する定額法で計算した減価償却費は「購入費用100万円×償却率0.2=減価償却費20万円」になります。

会社名義にする方法~法人~

個人所有の自家用車を非業務用から法人の業務用に転用した場合でも、車両を会社名義にする方法があります。個人から会社に自家用車を売却する形式を採ると会社名義にできるのです。
個人から購入した自家用車の購入費用は個人事業主と同じように、減価償却により費用化します。

 

なお、非業務用の固定資産を業務用に転用した場合の減価償却はパソコンやプリンターなどの自家用車以外の固定資産にも適用できます。

業務用に転用した場合の具体的な取り扱い

個人事業主が非業務用の自家用車などの固定資産を業務用に転用した場合の具体的な取り扱いについて説明します。

減価償却費の計算手順

固定資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費は次の手順により計算します。

(1)業務用に転用した日における未償却残高相当額の計算

未償却残高相当額とは、固定資産の購入金額のうち、業務用にかかる部分のことを指し、減価償却費に計上できる枠になります。

(2)減価償却費の計算

未償却残高相当額を耐用年数にわたって減価償却費に計上します。

未償却残高相当額の計算方法

未償却残高相当額の計算式は次の通りです。

 

未償却残高相当額=固定資産の購入金額-業務用に使用していなかった期間における減価の額

 

業務用に使用していなかった期間における減価の額を求めることがポイントになり、具体的な計算手順は次の通りです。

(1)法定耐用年数の1.5 倍に相当する年数を計算する

法定耐用年数とは、固定資産の種類などに応じて税法上で定められており、減価率の指標になります。非業務用のほうが業務用よりも減価率が低いと考えられているため、法定耐用年数の1.5倍に相当する年数で計算します。なお、1.5倍に相当する年数に1年未満の端数がある場合、1年未満の端数は切り捨てます。

 

たとえば、法定耐用年数が5年の場合、「法定耐用年数5年×1.5倍=7.5年→7年(端数の0.5年を切り捨て)」になります。

(2)業務用に使用していなかった期間を求める

固定資産の購入日から業務用に転用する前までの期間が業務用に使用していなかった期間です。なお、業務の用に供されていなかった期間に係る年数に1年未満の端数がある場合、6ヵ月以上の端数は1年とし、6ヵ月に満たない端数は切り捨てます。

 

例1)2018年1月1日に購入した自家用車を2020年6月1日に転用した場合

業務用に使用していなかった期間:2年5ヵ月→2年(端数の5ヵ月を切り捨て)

 

例2)2018年1月1日に購入した自家用車を2020年7月1日に転用した場合

業務用に使用していなかった期間:2年6ヵ月→3年(端数の6ヵ月を切り上げ)

(3)減価の額を計算する

旧定額法により減価の額を計算します。計算式は「固定資産の購入金額×90%×旧定額法の償却率」になります。たとえば、法定耐用年数6年の自家用車を100万円で購入し、業務用に使用していなかった期間が2年間とします。耐用年数6年の1.5倍に相当する年数は9年であり、旧定額法の償却率は0.111です。減価の額は次の通りになります。

 

100万円×0.9×0.111×2年=19万9,800 円

(4)未償却残高相当額を計算する

上記(3)を例にすると、「固定資産の購入金額100万円-使用していなかった期間の減価の額19万9,800 円=80万200円」が未償却残高相当額になります。

減価償却費の計算方法

固定資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却費は次の手順で計算します。

(1)耐用年数を求める

新車を購入した場合は法定耐用年数を用いますが、中古車の場合は耐用年数を計算する必要があります。中古資産の耐用年数は次の算式で求めます。

 

耐用年数(最小年数2年)=法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)

 

なお、耐用年数に1年未満の端数がある場合、1年未満の端数を切り捨てます。

(2)減価償却費を計算する

個人事業主の場合、所得税の減価償却資産の償却方法の届出をしない限り、定額法(旧定額法を含む)により減価償却費を計算します。定額法の算式は次の通りです。

 

減価償却費=固定資産の購入金額×耐用年数に応じた定額法の償却率

 

前述の100万円で購入した法定耐用年数6年の自家用車を例にした場合、新車と2年落ちの中古車を比較した減価償却費は次の通りになります。

 

新車の場合:固定資産の購入金額100万円×償却率0.167=16万7,000円
中古車の場合:固定資産の購入金額100万円×償却率0.250(※)=25万円
※2年落ちの中古車の耐用年数は「法定耐用年数6年-経過年数2年+経過年数2年×20%=4.4年→4年(0.4年の端数を切り捨て)」になるため、定額法の償却率は0.250になります。

「定率法」の選択で減価償却費が前倒しで計上できる

個人事業主が定率法という減価償却費を前倒しで計上する方法を選択した場合、初年度の節税効果がより高まります。減価償却費の計算式は次の通りです。

 

減価償却費=期首帳簿価額(業務用に転用した初年度については未償却残高相当額)×定率法の償却率

 

前述の2年落ちの中古車を例にすると、転用した初年度の定額法による減価償却費は25万円に対して、定率法による減価償却費は次の通りになります。

 

未償却残高相当額80万200円×償却率0.625=50万125円

 

会社名義にした場合の具体的な取り扱い

会社名義にするために非業務用の自家用車を個人から法人に売却した場合の税金について説明します。

会社名義にした場合の個人と法人の課税関係

非業務用の自家用車を売却した場合、売却する側の個人には売却益から特別控除50万円を差し引いた残額が譲渡所得として課税されます。売却益とは、売却価格から取得費(業務用に転用した場合は未償却残高相当額)や譲渡費用を差し引いた金額です。

 

一方、購入する側の法人は時価で購入した場合には特に税金がかかりません。しかし、時価と異なる価格で購入した場合は法人にも税金が発生します。

 

  • 低額譲渡(時価よりも低い価格で購入した場合):時価との差額分が受贈益として法人に課税される
  • 高額譲渡(時価よりも高い価格で購入した場合):時価との差額分は役員賞与として損金不算入となり、役員個人の給与所得として課税される

減価償却費の計算方法

役員個人から購入した場合、税法上は実際の取引価格でなく、時価で取引したものとして取り扱います。そのため、業務用に転用した自家用車にかかる減価償却費の計算は時価(未償却残高相当額)をベースに計算するのが原則になります。

通勤用の自家用車にかかる売却益は非課税

売却した自家用車が通勤用の場合、売却益に対して個人は非課税になります。譲渡所得は生活用動産の譲渡による所得に対しては課税しないことになっているからです。そのため、通勤用の自家用車を営業車などの用途に転用する場合は売却益を非課税にしやすいでしょう。

まとめ

非業務用の自家用車を業務に転用した場合、税法上の取引価格に相当する未償却残高相当額(時価)で計算することなります。特に中古車の場合、耐用年数の算定により、より高い償却率を用いることで節税効果が得られます。まずは購入金額と購入年月日などプライベート用の自家用車について吟味しましょう。

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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