一般社団法人設立で大学スポーツが自立へ一般社団法人の税金とは

[取材/文責]長谷川よう

多くのスポーツでは、競技をしたり、良い成績を残したりするためには、トレーニング機器の購入など一定のお金がかかります。これは大学スポーツでも同じです。

 

近年、大学スポーツでは一般社団法人を設立し、自立する傾向が増えています。そこで、ここでは一般社団法人の概要や税金、大学スポーツとの関係などを解説します。

大学スポーツで一般社団法人化が進んでいる

大学スポーツでは、競技や大会の維持や良い成績を残すために、どうしても一定のお金の負担が生じてしまいます。これまでは、OBなどの寄付により活動をしている運動部が大半でしたが、今では、運動部を一般社団法人化し、スポンサーを募って、活動費に充てるケースも増えてきました。

 

大学スポーツでは、資金難にあえぐ運動部も多くあり、以前から収益力強化の問題が指摘されてきました。その中、2019年に大学スポーツの収益力の強化を目指すことを目的に「大学スポーツ協会(ユニバス)」が設立され、企業と大学スポーツが近くなりつつあります。

 

この流れに乗るように、大学スポーツが一般社団法人を設立し、企業とスポンサー契約を結ぶケースが増え、安定した収益のもとスポーツを行うことができるようになってきています。

 

大学スポーツの一般社団法人化は、確かに自立のために適正な収益を生むことができるメリットがあります。一方で、人気のあるスポーツには、スポンサーとなる企業が多く支援し、そうでないスポーツではスポンサーがあまりつかないといった格差が生まれる問題点もあります。

 

このように問題点がありながらも、大学スポーツでの一般社団法人化は、今後ますます多くなっていくことが予想されます。

そもそも一般社団法人とは

上述したとおり、大学スポーツで一般社団法人化が進んでいます。では、そもそも一般社団法人とは、どのようなものなのでしょうか。

 

ここでは、一般社団法人や一般社団法人と間違えやすい法人について見ていきましょう。

一般社団法人とは非営利法人のこと

一般社団法人とは、非営利法人のことを指します。非営利法人とは、簡単にいうと利益が出ても、株主に還元(配当)しない法人のことです。

 

通常、一般の法人は資本家から出資を募る代わりに、利益が出たら利益の一部を来期以降の事業活動に充て、一部を株主に配当という形で分配します。非営利法人は利益が出たら、そのすべてを来期以降の法人の活動に充てます。利益を出さない法人ではないので、注意が必要です。

 

一般社団法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を根拠に設立されます。一般社団法人の主な特徴としては2人以上の社員がいれば設立可能なことや、団体名義で口座の開設や不動産の取得もできることです。

 

一般社団法人は、2人以上の社員がいれば設立可能なため、比較的設立しやすい法人です。また、団体名義で口座の開設ができるため、責任の所在がはっきりし、透明性が高いです。

 

比較的設立しやすく、透明性が高くスポンサーから好印象を持たれることから、大学スポーツでは、一般社団法人を設立する動きが強くなっています。

その他のよく似た法人との違い

日本の法人には、さまざまな属性があります。その中には一般社団法人と似ている名前の法人の種類もあります。一般社団法人と似ている名前の法人の種類には、例えば、以下のような法人があります。

 

・公益社団法人
公益社団法人とは、公益事業を行うことを目的とした法人のことです。公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律をもとに設立されます。

実は、公益社団法人も大きく分けると一般社団法人のひとつです。一般社団法人のうち、法律に基づき、公益性の認定を受けた法人が公益社団法人になります。公益社団法人が行う公益事業とは、例えば学術や科学技術、文化や芸術の振興を目的とする事業などが該当します。

 

・一般財団法人
一般財団法人とは、個人などから拠出された一定の財産(の集まり)に対して法人格が与えられた非営利の団体のことです。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づいて設立されます。

 

一般財団法人は、財産に法人格が与えられるものなので、価額300万円以上の財産の拠出が必要です。一般社団法人は財産を拠出する必要ないところが、一般財団法人と大きく違う点です。

 

・公益財団法人
公益財団法人とは、一般財団法人のうち、法律に基づき、公益性の認定を受けた法人のことです。公益事業を行うことを目的としています。公益社団法人及び公益財団法人に認定等に関する法律に基づいて設立されます。

 

・NPO法人
NPO法人とは、特定の非営利活動を行う法人のことです。特定非営利活動促進法に基づいて、設立されます。

まちづくりの推進や人権の擁護の推進を図るなど、特定の非営利活動を行う団体に法人格を取得することで、信頼性が高まり活動がしやすくなります。

一般社団法人の税金とは

ここからは、一般社団法人の税金について見ていきましょう。

一般社団法人の法人税法での取り扱い

実は、法人税法では、一般社団法人は法人税法上の非営利型法人の要件を満たすものと満たさないものの2つに分かれます。法人税法では、一般社団法人のうち、法人税法上の非営利型法人の要件を満たすものを公益法人等、満たさないものを普通法人として取り扱います。

 

非営利型法人の要件は、非営利性が徹底された法人と共益的活動を目的とする法人によって異なります。非営利性が徹底された法人の場合は、剰余金の分配を行わないことを定款に定めていることなどの要件があり、共益的活動を目的とする法人の場合は、会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていることなどの要件があります。

一般社団法人にかかる税金

一般社団法人にかかる税金には、主に「法人税」「地方税」「消費税」の3つがあります。それぞれの税金で、法人税法上の非営利型法人の要件を満たすもの(公益法人等)と満たさないもの(普通法人)で課税関係が異なります。それぞれの税金の課税関係は、次のようになります。

 

・法人税
一般社団法人が、法人税法上の非営利型法人の要件を満たすもの(公益法人等)の場合は、収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。収益事業以外から生じたものには、法人税は課税されません。

 

法人税法上の非営利型法人の要件を満たさないもの(普通法人)の場合は、全ての所得が課税対象となります。

 

・地方税
地方税には、その地域に事務所があることなどによる課税される均等割と、所得金額に応じて課税される所得割があります。均等割の場合は、法人税法上の公益法人等、普通法人に関係なく原則、課税されます。ただし、公益法人等の場合は、自治体によって非課税となることもあります。

 

所得割の場合は、公益法人等の場合は、収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。

 

普通法人の場合は、全ての所得が課税対象となります。

 

・消費税
消費税は物やサービスの消費に対して課される税金です。そのため、公益法人等、普通法人に関係なく、一般社団法人では課税されます。ただし、一般社団法人には、仕入税額控除の特例などが適用されます。

まとめ

大学スポーツでは、一般社団法人を設立し、企業とスポンサー契約を結ぶケースが増え、安定した収益のもとスポーツを行うことができるようになってきています。

 

一般社団法人とは、非営利法人のことです。団体名義で口座の開設ができるため、責任の所在がはっきりし、透明性が高くスポンサーから好印象を持たれるなどメリットがあります。ただし、税金の関係が複雑です。

 

今後、一般社団法人は増えることが予想されます。税金についても正しく理解しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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