新入社員必見!社会保険料の計算方法と給与控除の基本的なルールとは?
コロナ禍にあっても、例年のように、4月1日から新入社員となった人たちが多くいるでしょう。晴れて社会人となり、自分で給与をもらう身になったからには、社会保険料も自分で負担しなくてはなりません。
この記事では、社会保険料の計算方法と給与控除の基本的なルールについて、解説します。
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そもそも社会保険とは何か
広義の社会保険と狭義の社会保険
社会保険には、俗に「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」があります。
「広義の社会保険」とは、健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険を指します。「狭義の社会保険」とは、健康保険・厚生年金保険を指します。
この記事では、便宜上、「広義の社会保険」を「社会保険」と呼ぶことにします。
社会保険の加入要件とは
健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険には、それぞれ加入要件が定められています。基本的な加入要件を簡単にまとめました。
●健康保険
健康保険の適用事業所に使用される75歳未満の人
ただし、以下に該当する人は加入対象外となります。
- 臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
- 臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
- 季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
- 臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人
●厚生年金保険
厚生年金の適用事業所に使用される70歳未満の人
パートタイマーやアルバイトと呼ばれる人であっても、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で働く通常の労働者に対して4分の3以上であれば、加入対象となります。
●労災保険
労災保険の適用事業所に使用される人
1人でも使用される人がいる事業所は、労災保険の適用事業所になります。
●雇用保険
雇用保険の適用事業所に使用される人
パートタイマーやアルバイトと呼ばれる人であっても、以下の要件を満たせば加入対象となります。
- 最低31日間以上働く見込みがあること
- 1週間あたり20時間以上働いていること
- 学生ではないこと
社会保険料の計算方法とは
健康保険・厚生年金保険料の計算方法とは
健康保険・厚生年金保険料は「標準報酬月額表」に基づいて決まります。
それぞれの社員の月給額を、この「標準報酬月額表」と照らし合わせるのです。「標準報酬月額表」では、月給額に応じて負担すべき健康保険・厚生年金保険料が定められています。
健康保険・厚生年金保険料には、日割り計算の考え方はありません。
入社に伴い、健康保険・厚生年金保険に加入した日が、たとえば2021年4月1日だろうと2021年4月25日だろうと、2021年4月については1か月分の保険料を負担しなくてはなりません。
雇用保険料の計算方法とは
雇用保険料は、雇用保険料率に基づいて計算され、給与から控除されます。
雇用保険料率は、事業の種類によって定められています。「一般の事業」であれば、2021年度の雇用保険料率は、0.3パーセントです。
ちなみに、労災保険料は事業主が全額負担します。社員の給与から労災保険料が控除されることはありません。
このように、健康保険・厚生年金保険料は給与から定額が控除されますが、雇用保険料は定率で計算され、控除されます。
社会保険料の給与控除のタイミングとは
社会保険料の給与控除が始まるタイミングは、健康保険・厚生年金保険と雇用保険とで異なります。
健康保険・厚生年金保険料は翌月の給与から控除、雇用保険料は当月の給与から控除されるのが原則です。
これは、法律の定めが異なるためです。
健康保険料は「健康保険法」第167条に基づいて、厚生年金保険料は「厚生年金保険法」第84条に基づいて、翌月の給与から控除されます。
一方、雇用保険料は「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第32条に基づいて、給与が支払される都度、控除されます。
たとえば、社会保険に加入した日が2021年4月1日で、給与の支給日が毎月25日だったとしましょう。初めての給与は2021年4月25日に支給されることになります。
この4月給与では、健康保険・厚生年金保険料はまだ控除されませんが、雇用保険料は控除されます。5月給与からは、健康保険・厚生年金保険料も雇用保険料も控除されます。
社会保険料はずっと同額ではない
社会保険料には変更のタイミングがある
●健康保険・厚生年金保険料
健康保険・厚生年金保険料は、加入する時にそれぞれの保険料が決まります。これを「資格取得時の決定」と言います。
しかし勤務を続けていくなかで、昇給したり残業代が支払われたりすることも考えられます。
そうなると、加入の際に計算の元になった月給額と、実際に支払われている月給額が、大きく異なってくる可能性があります。
このような場合に備えて、健康保険・厚生年金保険料には、変更のタイミングが決められています。
・定時決定
毎年7月1日に行われる、定期的な健康保険・厚生年金保険料の見直しです。
見直されて、新たに決まった健康保険・厚生年金保険料は、9月から翌年8月まで適用されます。
むろん、見直した結果、健康保険・厚生年金保険料が変わらない人もいます。
・随時改定
昇給したり、昇進に伴って新たに手当が支給されたりして、固定的賃金が変動することがあります。その際に行われる、健康保険・厚生年金保険料の見直しです。
「定時決定」と同じく、見直した結果、健康保険・厚生年金保険料が変わらないままということもありえます。
●雇用保険
雇用保険にかかる保険料率は、毎年度、告示されます。
とはいえ、年度が変わっても、雇用保険料率は変わらない場合があります。実際に2021年度の場合、雇用保険料率は2020年度から変更されていません。
もし退職するなら、最後の社会保険料はどうなるか
社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日です。
たとえば、退職日が5月31日ならば、社会保険の資格喪失日は6月1日です。
退職月の健康保険・厚生年金保険料の処理については、退職日が月の末日か否かで異なります。
・退職日が月の末日である場合
健康保険・厚生年金保険料は、原則として翌月の給与から控除されます。退職日が月の末日の場合、たいてい、退職月に支給される給与から2か月分の健康保険・厚生年金保険料が控除されます。
たとえば、退職日が5月31日、資格喪失日が6月1日の場合、5月給与から、4月分と5月分の健康保険・厚生年金保険料がまとめて控除されるのです。
・退職日が月の末日ではない場合
健康保険・厚生年金保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納めなくてはなりません。
つまり、退職日が5月30日、資格喪失日が5月31日の場合、納めなくてはいけない健康保険・厚生年金保険料は4月分までです。そのため、5月分の健康保険・厚生年金保険料は、5月給与からは控除されません。5月給与からは、4月分の健康保険・厚生年金保険料のみ控除されます。
・入社した月に退職した場合
レアケースかもしれませんが、入社したその月に退職する新入社員もいるでしょう。
同じ月のうちに、健康保険・厚生年金保険の加入と喪失をした時は、その月について1か月分を納めなくてはなりません。
たとえば、健康保険・厚生年金保険に加入した日が2021年4月1日で、資格喪失した日が2021年4月25日であれば、2021年4月については1か月分の保険料が控除されることになります。
雇用保険料は、実際に支払われる給与に対して、その都度計算されます。ですから、資格喪失日が雇用保険料の計算に影響することはありません。
まとめ
社会保険料は、社会保険に加入している限り、毎月給与から控除されます。基本的なルールを把握していれば、昇給などに伴って社会保険料が増える時に心の準備ができます。
給与を賢く使うためにも、新入社員が社会保険料の基本ルールを知っておいて損はないでしょう。
▼参照サイト
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115_20210401_502AC0000000040
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000050
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=349AC0000000116
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3165/1962-231/
- https://www.mhlw.go.jp/content/000739455.pdf
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=344AC0000000084
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20120330.html
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html
- https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/hihokensha/20140902-01.html
長年のキャリアのなかで、総務・労務関係の実務経験は15年以上に。
社会保険労務士の資格取得済み。現在は、知識と経験を活かして、フリーランスのWebライターとして活動中。
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