日本人は自己破産しない?自己破産の手続きやメリット・デメリットを解説

[取材/文責]長谷川よう

借金の返済が苦しくなったときの解決方法に、自己破産があります。しかし、周りに迷惑がかかるなどの理由から、自己破産をしない人も多いです。
では、自己破産はしないほうが良いのでしょうか。また、自己破産したほうが良いケースはどのような場合でしょうか。ここでは、自己破産の内容やメリット・デメリットを解説します。

日本人が自己破産をしない理由とは

日本人が自己破産をしない理由を理解するには、自己破産について詳しくを知る必要があります。そこで、まずは自己破産の内容や現状について見ていきましょう。

自己破産とはどんなもの?

自己破産とは、簡単にいうと、借金が多くなり、自分の所有している財産や収入では返済できなくなった場合に、借金を免除してもらう手続きのことです。ただし、自分で勝手に自己破産できるのではなく、裁判所の認可を受ける必要があります。

 

自己破産は、裁判所の許可を受けた公的な手続きであるため、借金の返済義務が免除されますし、もちろん融資先からの催促もなくなります。ただし、借金に対する保証人がいる場合、保証人の返済義務は免除されません。また、自己破産は財産の有無にかかわらず申請できますが、一定の価値を有する資産を所有している場合は原則、裁判所によって競売され、競売で得た資金は債権者に分配されます。

 

保証人がいたり、高価な資産を所有したりしている場合に自己破産を行うときは、注意が必要です。

自己破産の現状と日本人が自己破産をしない理由

自己破産とは、裁判所の許可により、借金の返済義務の免除を受ける手続きです。多額の借金を抱える人にとっては、とても有利な制度といえます。では、実際に我が国では、どれぐらいの自己破産が行われているのでしょうか。

 

裁判所の公開している司法統計のデータによると、個人の自己破産件数(新受数)は平成29年が6万8,792件、平成30年が7万3,099件、令和元年が7万3,095件となっています。司法統計のデータから、毎年おおよそ7万件程度の自己破産が行われていることがわかります。

 

自己破産は、一生に一度しかできないということはありません。何度でも行うことができます。そのことを考えると、毎年7万件程度しか自己破産がないというのは、少ないのではないかと考える人も多いでしょう。

 

では、なぜ日本人は自己破産しないのでしょうか。日本人が自己破産をしないのは、やはりそのまじめさが原因となっています。例えば「連帯保証人に迷惑をかけたくない」「世間体が気になる」「仕事に何か影響があるのではないか」と気になり、なかなか自己破産を行うことができない人が多いようです。

自己破産のメリット・デメリット

他人に迷惑をかけたくないなどの理由から、自己破産に踏み出せない人も多くいます。では、本当に、自己破産しなくても良いのでしょうか。

 

自己破産すべきかどうかを正しく判断するために、ここでは、自己破産のメリットとデメリットを見ていきましょう。

自己破産のメリットとは

まずは、自己破産のメリットから見ていきましょう。自己破産には、次のようなメリットがあります。

①返済義務の免除

自己破産のメリットで最も大きなものが、返済義務の免除です。自己破産の手続きをすることで、手続き以前の発生していた借金を返済しなくて良くなります。資金繰りに困らず、生活が楽になることはもちろんのこと、催促の電話もかかってこなくなることから、精神的にも安定して生活していくことが可能になります。

②財産のすべてを失うことはない

自己破産をすれば、所有している財産がすべて没収されると思っている人は多いです。実は、自己破産をしても、財産のすべてを失うことありません。

 

自己破産をしたら、その後の生活が全くできなくなったということでは、そもそも自己破産の制度を誰も利用しなくなります。自己破産を行った後も、最低限の生活はできるように、一定の財産の処分は行えないようになっています。

 

例えば、99万円以下の現金や生活に欠くことができない衣服、寝具、家具などは、手元に残ります。大事なのは、自己破産を行った後も、最低限の生活は保障されているということです。

③裁判所の申し立ては誰でもできる

裁判所の申し立てには、条件はありません。例えば、生活保護を受けている人や無職の人は自己破産できないなどの制限はありません。

自己破産のデメリットとは

次に、自己破産のデメリットについて見ていきましょう。自己破産には、次のようなデメリットがあります。

①ブラックリストに載る

自己破産のデメリットの代表的なものが、ブラックリストへの記載です。ブラックリストとは、金融機関などが見ることのできる個人信用情報のことです。

 

個人信用情報のデータベースに、自己破産したことが記載されると、自己破産後は数年間、クレジットカードの発行ができなかったり、融資を受けることができなかったりするなどのデメリットを被ります。

②官報に記載される

自己破産をする際に、意外と気にする人が多いのが、官報への記載です。自己破産をすると、官報に住所や氏名などが記載されます。官報は、誰でも見ることができるため、その人が自己破産したことが、近所の人や仕事の関係者などに知られる危険性があります。

 

実際には、ほとんどの人が官報を見ることはないので、周囲に自己破産の事実を知られることはありませんが、それでも自己破産をする際に不安になる人は一定数います。

③保証人に迷惑がかかる

債務者が自己破産しても、保証人が免責になることはありません。借金の返済は、保証人が行うことになります。自己破産をする場合は、あらかじめ保証人に相談しておく必要があるでしょう。

自己破産の手続きと流れ

ここまでは、自己破産の内容について見てきました。ここからは、自己破産の手続きと流れについて見ていきましょう。自己破産の流れは、次のようになっています。

①弁護士などの専門家を探し、手続きの依頼をする

自己破産の手続きは複雑で、自分ひとりで行うことは難しいです。そのため、通常は弁護士などの専門家に、自己破産の手続きを依頼します。

②裁判所への申し立て

自己破産は、裁判所に認めてもらわないと行えません。そのため、まずは裁判所に自己破産の申し立てを行います。

 

ひとくちに自己破産といっても、手続きには「破産手続き」と「免責手続き」の2つがあります。破産手続きとは、財産を処分して債権者に返済する手続きです。また、免責手続きとは、債務者が借金の返済を免除される手続きです。自己破産には、どちらの手続きも必要なため、両方とも申し立てを行います。

③裁判所からの審尋

審尋とは、裁判官が債務者に、借金した原因や返済できない理由などを聞くことです。審尋により、証言にウソがないか、誠実な人であるかどうかなどを判断します。破産手続き、免責手続きの両方で、裁判所からの実施の審尋が行われます。

④破産手続き開始の決定

審尋で問題がなければ、裁判所から破産手続き開始の決定を受け、破産管財人が選任されます。このことにより、実際に破産手続きが開始されます。

⑤免責許可の決定

破産手続きや免責手続きが終わり、問題がなければ、裁判所から免責許可の決定がなされます。免責許可の決定により、借金の返済義務が免除されます。通常は、免責決定書が債務者に送付されます。

⑥官報への記載

官報に自己破産者の住所や氏名、自己破産したことなどが記載されます。官報への記載で、自己破産の手続きは終了です。

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まとめ

日本では、自己破産のデメリットにばかり目がいき、自己破産をしない人が多いです。しかし、自己破産にはメリットも多くあります。

 

もしも、自己破産をするかどうか迷っている場合、例えば、借金の返済の見込みがたたない、高額な資産を所有していないというケースであれば、自己破産を検討するなど、自分の状況を正確に把握したうえで判断しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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