個人事業主と会社員必見!税金対策と資産形成に役立つ勉強法
税金対策と資産形成に興味を持つ個人事業主や副業をしている会社員も多いでしょう。しかし、税金対策の情報があふれているため、勉強法のポイントが分かりづらいかもしれません。そこで、個人事業主と会社員に対し、税金対策と資産形成にフォーカスした勉強法について解説します。
税金対策の勉強法の基本
税金対策の勉強を効果的に行うためには、ポイントを押さえる必要があります。そこで、勉強法の基本について解説します。
節税する税金の種類を把握する
個人事業主と会社員が税金対策の勉強前に、方向性を決めることが必要不可欠であり、節税する税目を把握する必要があります。
たとえば、所得税と相続税とでは、税金対策の方法が異なります。所得税は毎年、課税所得金額を圧縮したり、税額控除をできるだけ多く計上したりすることが節税につながります。一方、相続税は優遇税制を利用して保有している資産の相続税評価額を下げたり、生命保険に加入したりして数年から数十年かけて税金対策を施します。
必要経費を多く計上する
所得税の課税所得金額を圧縮するためには、必要経費の計上を多くすることがカギを握っています。給与所得者は原則、自分でコントロールできませんが、個人事業主や副業をしている会社員なら必要経費の計上が可能です。
たとえば、賃貸物件の一部を事業用に使用していれば、家賃のうち事業割合(全体のうち事業用に使用している割合)分だけ必要経費に計上することができます。
控除額を多く計上する
控除額は所得控除と税額控除に大別できます。所得控除は課税所得金額を圧縮し、税額控除は所得税から直接控除することができます。
所得控除の代表例は医療費控除でしょう。たとえば、医療費を20万円負担したとします。節税効果は医療費控除を差し引く前の課税所得金額に左右されます。適用する所得税の税率が45%と所得税の税率20%では節税効果が倍以上違います。
一方、住宅ローンなどの税額控除は所得税の税率に関係なく、節税効果は同額です。
所得税の税率を下げる
所得税は累進課税制度を採用しているため、課税所得金額に比例して税率(5%~45%までの7段階)が高くなります。
たとえば、個人事業主が毎年1,000万円前後の課税所得金額を計上しているとします。所得税の税率は33%です。法人に適用される法人税の税率23.2%を上回り、法人成りを検討するタイミングといえます。
また、別の例として、デザイナーの副業をしている会社員の課税所得金額が膨れ上がりそうな場合、事業用の消耗品を前倒しで購入し、多くの必要経費を計上することで所得税の税率を下げることができます。
資産形成ができる節税術
資産形成と税金対策を同時に行うことで、より財産を蓄えることができます。そこで、資産形成に役立つ節税術を紹介します。
仮想通貨は原価の把握がポイント
個人事業主なら事業所得や不動産所得、会社員なら給与所得で獲得した資金の一部を仮想通貨に投資することで、資産形成に役立つ可能性があります。
しかし、仮想通貨は取引相場の変動により、所得税の税率が左右されます。所得税の税率を高くしすぎないためには、課税所得金額をコントロールするスキルが求められます。
仮想通貨の場合、タイムリーに損益を計算して、たとえば損切や売買を控えるなどの税金対策を的確にすることが必須です。そのためには、取引の都度、移動平均法により計算して仮想通貨の売却時の原価を把握することがポイントになります。移動平均法とは、売却の平均購入単価を原価として計算する原則的な方法です。
一方、例外的な原価の計算方法として総平均法が存在します。一年間の平均購入単価で原価を計算するため、年末になるまで原価が把握できません。
イデコ(iDeCo)に加入する
イデコ(iDeCo)とは、個人型確定拠出年金のことを指します。自営業、会社員、公務員などが掛金を拠出し、自分で選んだ商品で運用します。その後、原則60歳以上になってから年金または一時金として受け取れます。
イデコが資産形成と税金対策を同時に行える理由は次の通りです。
- 掛金は全額所得控除の対象となり、所得税と住民税が軽減される
- 運用時の利息や運用益が非課税(現在は特別法人税が停止されているため)
- 受取時、優遇税制により課税所得金額が受取金額より圧縮できる(※)
※優遇税制の内容
(1)年金として受け取る場合
公的年金等の雑所得となり、受取金額から公的年金等控除額(最低70万円)が所得控除されます。
(2)一時金として受け取る場合
退職所得となり、受取金額から退職所得控除額(最低80万円)が所得控除されます。
ふるさと納税を利用する
ふるさと納税は原則、各自治体への寄付金のうち2,000円を控除した残額は所得税と住民税から控除できます。そのため、各地の特産品など返礼品の年間の購入金額を実質2,000円にすることができます。
しかし、総務省の返礼品規制により、返礼割合3割超の自治体は減少傾向にあります。返礼割合3割超の自治体は平成28年度の1196団体から平成30年9月1日時点で246団体に減少しています。
また、ふるさと納税は寄付金控除と住民税の控除額が併用されているため、税額控除の枠は適用される所得税の税率と比例します。
不動産投資で必要経費を計上する
特に会社員などの給与所得者は副業での不動産投資によるメリットが得られます。
勤務医を例にすると、収入源が給与だけなら年収によって課税所得金額が自動的に決まってしまいます。
しかし、不動産投資をすることにより自分の意志で必要経費に計上することができます。たとえば、賃貸物件を管理するためにパソコンを購入した場合、事業割合(全体のうち不動産投資用に使用した割合)分だけ必要経費に計上が可能です。
また、不動産投資で赤字になれば、損益通算により給与所得から控除でき、課税所得金額が圧縮できます。その結果、確定申告をすれば給与天引きされた源泉所得税の一部の還付(返金)が受けられます。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。そのため、会社員の加入は認められていません。
資産形成と税金対策を同時に行える理由は運用時の非課税以外は基本的にイデコと同じです。つまり、掛金の積立額は全額所得控除でき、受取時には次の優遇税制が適用されます。
- 年金として受け取る場合:公的年金等控除額(最低70万円)の所得控除
- 一時金として受け取る場合:退職所得控除額(最低80万円)の所得控除
また、イデコとの違いは次の通りです。
- 60歳未満でも解約できる
- 65歳未満での解約または掛金の未払いにより解約する場合は一時所得扱い(特別控除50万円が適用)
- 貸付金制度がある
税金の専門家を活用する
税法は複雑であり、たとえ勉強しても自己判断だけで税金対策をすると後日、税務調査で否認されるリスクがあります。そのため、税金の専門家を活用するスキルが必要です。
国税局の税務相談室を活用する
国税局の税務相談室は無料で相談できます。各税務署に電話をすると自動音声で案内され、管轄する国税局につながる仕組みです。国税局の税務相談室は基本的に質問された内容に回答するため、「この支出は経費で落せるのか」など具体的に質問することが必須です。
税理士の活用を検討に入れる
質問内容だけでなく、「法人成りをすべきか」など税金について積極的なアドバイスを受けたい場合は税理士の活用を検討することをおすすめします。個人事業主や会社員が気づかないような税金対策のアドバイスが期待できるからです。そもそも税務相談は税理士の独占業務であり、無資格者には認められていません。ただ、顧問料に対する費用対効果を視野に入れる必要があります。
まとめ
個人事業主や会社員が税金対策について勉強するポイントは、いかに所得税を節税するかに尽きます。具体的には課税所得金額の圧縮、控除額の計上、税率を下げることの3点です。しかし、自己判断は税務調査で否認されるリスクがあります。そのため、税金の勉強と専門家の活用を併用することが最善といえます。
参考文献・URL
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_1.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html
- http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/about.html
- http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20180911.pdf
- http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/proceed/index.html
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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