景品表示法違反とは?気をつけるべき職種とペナルティについて学ぼう

[取材/文責]橋本玲子

商品販売やサービスの提供を主に展開している事業者は、売上アップのためちょっとした「おまけ」を付けたり、消費意欲をくすぐる広告を打ったりすることがあります。
しかし、それらの景品や表示に一定の基準を設けないと、消費者だけでなく事業者自身も不利益を被る恐れがあります。以下に詳しく解説します。

そもそも「景品表示法」ってどんな法律?

おまけや賞品などの「景品」にはどのような規制が、何のために課せられているのでしょう。
まずは規制の根拠となる「景品表示法」について説明します。

景品表示法は一般消費者を守るための法律

景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」)」という名称の法律です。より短く「景表法」と略されることもあります。
法の目的はその名のとおり不当な景品や商品への不当な表示で消費者を商品購入に向かわせることを防止し、一般消費者の利益を保護することにあります。(法第1条)
景品だけでなく不当な表示についても事業者に一定の行為を制限・禁止していることがポイントです。
昨今はインターネットのサイトで商品やサービス(以下「商品」とします)をチェックしたり、無料のアプリで流れてくる広告を見たりして購入を決める消費者が多くなっています。したがって、購入者に不利益となるような情報を分かりやすく表示することの意義は以前より大きくなっているといえます。

「景品に関する制限と禁止行為」とは?

法は第4,第5条において

  • 景品に関する制限と禁止行為(以下「景品に関する行為」)
  • 不当表示の禁止行為(以下「表示の行為」)

について規定しています。

まず景品に関する行為についてですが、法は取引商品と比較して過大な景品を提供することを規制しています。
ここでいう景品の定義は

①顧客を誘引するための手段であり
②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
③物品、金銭その他の経済上の利益であること

となっています。

例えば、
「今だけ!○○を2つ買ったら漏れなく✕✕をプレゼント!」や「○○を買った方の中から抽選で〇名を旅行にご招待!」というような広告で提供される品物やサービスが挙げられます。
ちなみに「まとめて買えば半額」といった値引きや、「購入後10年間アフターサービス無料」といったサービスは「景品」ではありません。

景品は消費者にとって魅力的なものであればあるほど商品の購入意欲を駆り立てるものですが、あまりに過大な景品を提供すると、消費者は本来購入予定の商品の本質的価値に関する正常な判断ができなくなり、望んでいたものより低い質の商品や、不要に大量の商品を買ってしまうといった恐れがあります。
また事業者の方も、より高価な景品を提供することでむしろ本来の商品の質が低下したり、過当な競争により疲弊してしまったりする恐れがあります。
したがって、「景品に関する行為」は消費者だけでなく、事業者にとっても必要な規制といえるのです。
なお、規制の具体的な数値については次章で説明します。

「不当表示の禁止行為」とは?

「表示の行為」について、法第5条は、「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引」につき、以下の3つのものについて「不当な表示をしてはならない」としています。

①品質、規格その他の内容
②価格その他の取引条件
③内閣総理大臣が指定するもの

ある商品の品質や規格を正しく消費者に伝えること及び販売額やその価格で購入するための条件などについて分かりやすく説明することは、商品の販売者として当然の義務です。正しい表示がされないと取引の安全が守られなくなり、取引が正常に成り立たなくなると、ひいては我が国の経済が停滞する恐れが出てくるからです。
こちらの行為についても、各項目の詳細は次章で具体例を挙げて説明します。

景品表示法違反の具体例を紹介

法の意義を説明したところで、実際どのような行為が「景品表示法違反」とされるのか見ていきましょう。違反行為の内容によっては驚くべき課徴金を課せられるケースもあるのです。

景品の種類により制限が変わってくる

 

法における「景品」には、一般懸賞、共同懸賞、総付景品の3つがあります。
一般懸賞は、購入者への三角くじでの賞品提供や、開封しないと「おまけ」の有無が分からない商品などの例があります。
景品の額は、5,000円未満の場合で取引価額の20倍まで、5,000円以上の場合は10万円までと決められています。
共同懸賞は、例えば地域の商店街が一緒になって、「当商店街で〇円以上お買い上げの方に抽選で○○プレゼント」と景品を提供するケースが挙げられます。
こちらの景品額の上限は30万円となっています。
総付景品とは、商品購入者にもれなく(先着順も含む)景品を提供することです。
上限額は1,000円未満の商品で200円、1,000円以上は商品取引価格の10分の2です。不当表示とされる3つの行為とは?

「表示の行為」のうち、①は「優良誤認表示」②は「有利誤認表示」をそれぞれ禁止行為としています。

「優良誤認表示」とは、消費者に対し、自身の提供商品が実際のものより非常に優良であるとする表示のことです。他者の同種商品と比較し、自身の商品が著しく優れていると表示することも含みます。いずれも消費者の合理的選択を阻害し、不当に顧客を誘引する行為だからです。

例えば

  • 「我が社の羽毛布団は欧州産のダウン100%!」と表示したが実際は中国産のフェザー混の布団だった
  • 「松阪牛A5ランクのステーキ」とメニューにはあるが、実際はノーブランドの牛肉を提供していた
  • 「このサービスが受けられるのはウチだけ!」とあったが似たようなサービスが他でも普通に提供されていた

 

といった事案です。皆さんも似たようなニュースを時々目にするのではないでしょうか。

次に「有利誤認表示」ですが、こちらは自社商品の価格が格安であると錯覚させたり購入条件を偽ったりする表示のことです。

  • 「先着〇名様に定価の70%引きで提供!」と言いつつ、申込者全員に同じ割引率を適用していた
  • 「参考価格〇円のところを当社はその半額です!」と書いていたが、実は他社でも同じような価格で提供していた

 

というような例が挙げられます。
なお、ネット広告などでは、一番下までスクロールしてやっと小さな文字で定期購入が条件であることを記載していたというケースがありますが、こちらは景品表示法でなく、特定商取引法の範疇になります。

最後に③ の「内閣総理大臣が指定するもの」とは、総理大臣名で指定された消費者が誤認する恐れのあるとされる表示です。
商品の原産国、不動産のおとり広告、無果汁の清涼飲料水など全部で6つの表示が対象です。

違反した場合のペナルティは?6億円超の課徴金のケースも!

法に違反して高価な景品を提示したり、商品の表示を偽ったりすると、当然ながら罰則を受ける可能性があります。
とりわけ不当表示については、取引の安全を大きく損なうとされた場合、多大な課徴金の納付を命じられることがあるため注意が必要です。
最近では2023年4月に「大幸製薬」が製造販売した「クレベリン」が優良誤認表示であるとされ、なんと6億強の課徴金を課されました。空間に浮遊するウイルスを除去できるとの表示に対し、その根拠が認められなかったためです。
課徴金の額は売上額から算出されます。(法第8条1項)おそらくコロナ禍で同製品は「ウイルス除去」表示により大いに売り上げを伸ばしたのではないでしょうか。

景品表示法違反を起こさないために注意すべきこと

商品を提供する事業者にとって、景品表示は常に注意を怠ってはならない事項です。特に表示については、故意ではなく過失により表示してしまった場合でも、上記の3つの行為に当てはまれば「不当表示」とされてしまうため、「ついうっかり」は言い訳になりません。
ネット販売も含めた事業者に対し、消費者庁は「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の指針」を示し、注意とともに以下の7つの措置を講じるよう促しています。

①景品表示法の考え方の周知・啓発
②法令遵守の方針などの明確化
③表示などに関する情報の確認
④表示などに関する情報の共有
⑤表示などを管理するための担当者などを定めること
⑥表示などの根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
⑦不当な表示などが明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

①~⑦についての措置は、ある程度の規模の企業であれば、法に関する研修を行う、法に詳しい担当者を置くなど、比較的取りやすいでしょう。
しかし個人事業主の場合、全て自分で知識を得なければなりません。必要に応じて専門家に相談するのもいいでしょう。顧客はもちろん、意図しないところで不当表示とされてしまわないよう、自身を守るためにも法について知っておくことは非常に大切です。

まとめ

景品表示法は、大企業であってもネットショップを運営する個人であっても、商品を提供する立場の者は遵守しなければならない法律です。
消費者庁のサイトには前述のガイドラインをはじめ、法に関する様々な事例や注意などが提供されています。一読されることをお勧めします。

行政書士事務所経営。宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級取得。遺言執行や成年後見などを行う一般社団法人の理事も務めている。

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