今年も「あと1ヵ月」のふるさと納税で、賢く「節税」でも、控除の限度額には注意しましょう

[取材/文責]マネーイズム編集部

好きな地方に寄付することで、返礼品がもらえるだけでなく、住民税や所得税が控除される「ふるさと納税」。2022年分の寄付ができるのも、あと1ヵ月ほどとなりました。コロナ禍が生活に影を落とす中、制度を有効に使って少しでも「節税」したいところですが、コロナに見舞われた今年だからこそ、注意したい点もあります。「失敗しないふるさと納税」についてまとめました。

「返礼品の総額-2,000円」を得する制度

最初に、ふるさと納税の仕組みを簡単におさらいしておきましょう。

 

「納税」とネーミングされていますが、実際に行うのは、地方自治体への「寄付」です。好きな自治体を選び、この制度を使って寄付すると、それと同額の税金を「所得税の控除+住民税の控除」のかたちで差し引いてもらえます。

 

このままだと、お金の流れとしては「プラマイゼロ」なのですが、寄付した自治体から「お礼の品」の届くのが、ふるさと納税のメリット。総務省の通知により、「返礼品は寄付額の3割以内」とされていますが、逆に言えば、1万円寄付したら3,000円近い品物がもらえるわけです。

 

ただし、このふるさと納税を行うためには、1年に2,000円の「負担金」が必要です。ですから、正確には、「もらった返礼品の価値が2,000円を超えたら、そのぶん得をする制度」ということになるでしょう。寄付は、複数の自治体に行うことができ、金額にも上限はありません。

控除額には上限がある

とはいえ、寄付した分だけ無制限に所得税や住民税が控除されるわけではないことに、注意が必要です。税金の還付を受けられる寄付金額には、所得に応じた限度額が決められていて、例えば上限が10万円なのに11万円寄付したら、1万円は“持ち出し”(返礼品はもらえますが)になってしまいます。ふるさと納税で最も気をつけるべき点は、この限度額なのです。

 

ちなみに、「寄付し過ぎた」とあとで気づいても、原則としてキャンセル不可です。寄付して返礼品をもらうのは、通販で買い物をするのとは違いますから、間違えないようにしなくてはなりません。

 

では、その限度額は、どのように設定されているのでしょうか? さきほど、税金の控除額は「所得税の控除+住民税の控除」と説明しましたが、具体的には次の3つの合計になっています。ちょっと複雑ですが、ここでは、全体の仕組みを頭に入れてください。

 

  • 所得税からの控除額=(年間の寄付額-2,000円)×所得税率
    ・控除の対象となる寄付金額は、「総所得額等の40%」が上限です。
  • 住民税(基本分)の控除額=(年間の寄付額-2,000円)×10%
    ・控除の対象となる寄付額は、「総所得金額等の30%」が上限です。
  • 住民税(特例分)の控除額=(年間の寄付金額-2,000円)×(100%-基本分10%-所得税率)
    ・この「特例分」は、ふるさと納税制度のみに適用されるものです。なお、この金額が住民税の所得割額(※)の2割を超える場合は、「所得割額の2割」が寄付額の上限となります。

 

以上に基づいて、全額が控除されるふるさと納税の限度額の目安を、収入、家族構成別に示した一覧表が、総務省のホームページに載っていますから、参考にしてください。

 

また、「ふるさとチョイス」「ふるなび」といったふるさと納税専門サイトなどには、年収などの必要事項を入力すれば限度額の目安が示される「シミュレーター」が用意されています。

※個人住民税の所得割額 
所得に応じて支払う必要がある住民税。これとは別に、所得に関わりなく一律で課せられる均等割額がある。

シミュレーションは、あくまで「目安」と心得る

こうしたシミュレーターは、使ってみると非常に便利ではあるのですが、それに頼り切るのにはリスクがあることも、しっかり認識しておきましょう。算出された金額を丸呑みして目いっぱい寄付した結果、控除額を超えてしまった、ということが起こらないとも限らないのです。

 

まず、あくまでもシミュレーターですから、正確な数字が入力されないと結果も正しいものにはなりません。例えば、収入や所得。ふるさと納税の限度額は、今年の寄付であれば、「今年の所得」がベースになります。細かい話をすれば、基本的には年末にならなければそれは確定しませんから、多かれ少なかれ、予測を基にシミュレーションを行うことになります。

 

その際、多くの場合は前年の実績を参考にするわけですが、今年は新型コロナの影響で、所得が大きく減っている可能性があります。例年とはかなり違う1年だったことに、注意する必要があるでしょう。

 

このほか、シミュレーションに際して気をつけるべき点には、次のようなものがあります。

 

  • 医療費控除、住宅ローン控除など他の控除を受けている
    ふるさと納税を併用することは可能ですが、これらは、寄付の控除上限額に影響します。例えば、所得税率の区分が下がるような高額の医療費控除があれば、上限額は大幅に下がることになるでしょう。ちなみに、さきほど紹介した総務省の目安には、これらの控除は考慮されていません。
  • 扶養家族の人数に変化があった
    配偶者が仕事を辞めて専業主婦になったりした結果、扶養家族が増えると、上限額が下がります。
  • 給与所得者か事業主か
    提示されているシミュレーターの多くが、「給与所得者(サラリーマン)向け」であることにも、要注意です。個人事業主や年金生活者などがこれで計算しようとすると、実際とはかけ離れた数字になってしまうのです。個人事業主向けのシミュレーターもありますから、よく確かめて使うようにしましょう。

 

いずれにしても、寄付の控除限度額の計算は、けっこう複雑です。シミュレーション結果はあくまでも目安と捉え、金額に余裕をもって寄付を行うのがいいでしょう。

 

付け加えれば、税金の控除には手続きが必要です。通常は、自治体から送られてくる寄付金受領書を添付して確定申告を行うのですが、サラリーマンは寄付が5件以内であれば、確定申告なしの「ワンストップ特例制度」を利用することができます。ただし、その場合にも、その適用申請書を、寄付した自治体に提出しなくてはなりません。締め切りは、確定申告(翌年3月15日)と違い、1月10日となっています。

まとめ

返礼品で得するふるさと納税ですが、税金の控除上限額には、注意を払いましょう。詳しく確かめたいときには、税の専門家である税理士に相談してみるのも、1つの方法です。

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