災害時は税金の救済措置がある!万が一に備えて知っておくべき知識とは
台風や地震などの自然災害が増えている今の時代、知っておきたいことの一つに被災時の税金の救済措置が挙げられます。実は災害の発生時には、支払う税金に対して救済措置が適用されます。
この記事では、どのような制度で税金の救済措置が適用されるのかを解説します。
災害時は税金の救済措置が適用される
災害が発生した場合は、状況に応じて税金の救済措置が適用されます。まずはどのような背景からこのような救済措置が設けられているのかをご説明します。
生活を立て直すための救済措置
大規模な災害が発生すると、意図せず多くの出費が必要となります。購入しなければならないものが増えるため、短期間に出費が集中してしまいがちです。例えば家財の破損などにより、購入せざるを得ない状況に陥ります。
このように出費が急増する場面において、税金の支払いは家計の負担となります。この負担をできる限り軽減するために、税金の軽減措置が設けられています。可能な限り生活資金に手持ちのお金を充当できる仕組みです。
法人にも個人にも適用
税金の軽減措置は個人だけではなく法人にも適用されます。個人と同様に法人でも災害が起きると大きな出費が発生する可能性があるからです。税金の支払いについて救済措置を適用し、事業の再開に注力できるような仕組みとなっています。
なお、個人と法人では税金の仕組みが異なります。そのため、災害時の救済措置はあるものの、内容については異なっているため間違えないようにしましょう。
法人・事業主目線で理解すべき救済措置
申告・納付期限の延長
法人や個人事業主が被災した場合、確定申告や税金の納税期限の延長に対応してもらえます。確定申告や税金の納付をすると追加の税金を支払うこともありますが、災害発生時はこれらの状況に陥っても救済措置が適用されます。
一般的に確定申告は準備に時間を要してしまいます。災害が発生した際は準備に時間を割くのが難しいと考えられるため、救済措置が適用されることで、自体が安定するまで煩雑な確定申告の作業を先延ばしできます。
また、確定申告ができていなければ税金の納付ができません。そのため、確定申告の救済措置に合わせて、税金の納税期限についても救済措置が設けられています。
なお、どちらについても基本的には災害等が落ち着いた日から2ヶ月以内で期限の延長ができます。
納税の猶予
納税が猶予される救済措置が適用される場合があります。こちらの措置の場合は確定申告の期限は延長されません。また、こちらの措置は災害などで保有財産に被害を受けた場合のみ利用できます。また、その事実を申請しなければ適用されません。
税金の措置がどのように適用されるかは、被災したタイミングによって以下のとおり左右されます。
- 納税期限を過ぎていない場合:納税期限から1年以内か確定申告書の提出期限まで
- 納税期限を過ぎている場合:原則として1年以内
なお、申請しても認められない可能性もあります。
予定納税の減額・源泉徴収の徴収猶予
個人事業主ならば予定納税の減額が可能で、従業員を雇っているならば源泉徴収の徴収猶予が可能です。
また、個人事業主の予定納税は災害時に減額できる救済措置があります。自ら申請する必要がありますが、申請が認められれば予定納税の減額ができます。なお、申請する際は所得税法の適用を受けるか災害減免法の適用を受けるか考えなければなりません。加えて、所得税法は申請にあたり条件はありませんが、災害免除法は「住宅や家財に受けた損害額が時価の1/2以上であること」「所得金額の見積額が1,000万円以下であること」の条件を満たさなければなりません。この点も考慮して個人事業主は予定納税の減額を申請します。
続いて、従業員がいる場合は源泉徴収の徴収猶予ができます。こちらは従業員からの申請を受け付けて、雇用主が納税地の所轄税務署長宛に提出します。事業主として救済措置を理解して、従業員に案内できなければなりません。
救済措置の適用を申請するならば、災害による被害を受けた後、最初の給与支払日の前日までに申請が必要です。源泉徴収は雇用主の義務であるため、申請が遅れると源泉徴収をせざるを得なくなります。税金の徴収を最低限に抑えるためにも、期日を意識して申請しましょう。
災害損失欠損金額の繰戻しによる法人税額の還付
法人税には、「災害損失欠損金額の繰り戻しによる法人税額の還付」と呼ばれる救済措置があります。固定資産や棚卸資産が災害によって被害を受けた場合に、損失の一部を過去に繰戻して所得と相殺できます。また、相殺した結果として減額された法人税は還付され受け取りができます。
こちらの救済措置を利用するためには、損失が発生するだけではなく以下の条件を満たす必要があります。
- 前期および当期について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること
- 当期の青色申告書である確定申告書を、その提出期限までに提出していること
- 確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること
また、これに加えて中小企業であることが条件になっています。これらの条件を満たしていれば、災害による被害を過去の所得と相殺できるようになり、過去に支払った法人税の還付が受けられます。
なお、もし仮に災害による被害額が前年度の法人税で相殺しきれなかったならば、繰越控除の対象となります。法人税の還付が受けられるだけではなく、翌期以降の法人税に対する救済措置も用意されています。
個人・従業員目線で理解すべき救済措置
災害減免法による所得税の軽減免除
災害減免法に基づいて消費税が救済措置の対象となります。救済措置を受けられる人は「住宅や家財に受けた損害額が時価の1/2以上であること」「所得金額の見積額が1,000万円以下であること」の条件を満たす場合のみです。
条件を満たしていても、救済措置の内容は以下のとおり所得金額によって変動します。
- 500万円以下:所得税の全額
- 500万円を超え750万円以下:所得税の1/2
- 750万円を超え1,000万円以下:所得税の1/4
所得金額は合計で算出されるため、給与所得以外にも所得があるならば考慮する必要があります。例えば、副業で収入があるならば、それらも含めて計算しなければなりません。救済措置の適用を検討している場合は、所得の計算について注意しましょう。
雑損控除
雑損控除は災害などで住宅が被害を被った場合に適用される救済措置です。厳密には災害に限らず、火災など盗難など幅広い原因による被害に適用できます。
こちらに災害減免法による所得税の軽減免除などのように被害金額の規定や所得金額の上限はありません。自宅や家財などに損害が発生した場合に適用できます。
雑損控除は控除であるため、税額が減少するわけではなく課税対象が以下のとおり減少します。
②(災害関連支出の金額-保険金等の額)- 5万円
上記の式で算出した結果、金額の多い方が所得から差し引かれます。
ただ、注意点として雑損控除は災害減免法との併用はできません。どちらかの適用に限られます。また、確定申告で被害について申請する際には、被害金額などが判断できる証拠の提出が必要です。
まとめ
災害に見舞われると予期せぬ支出が発生する可能性があり、これを救済するための制度が設けられています。
制度は個人で利用するもの、法人で利用するもの、個人が法人を経由して利用するものがあります。それぞれ、申請できる条件などが定められているため、条件を確認して申請しましょう。
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
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