個人事業主と法人、会社員を比較!個人事業主の税金などのデメリットは

[取材/文責]長谷川よう

「事業を開始する」とひとくちに言っても、会社員が個人事業を開業するケースもあれば、個人事業主が法人化するケースもあります。このときに頭に入れておきたいのが、税金面における個人事業主のデメリットについてです。
ここでは、個人事業主と法人、会社員を比較し、個人事業主のデメリットについて解説します。

個人事業主とは何を指す?

まずは個人事業主の定義や、個人事業主になるための手続きなどを見ていきましょう。

個人事業主とはどんな人?

個人事業主とは、簡単にいうと事業を営んでいる個人のことです。事業とは、対価を得て行われる商品の売買やサービスの提供などで、繰り返し、継続し、かつ、独立して行うことをいいます。商品を売買したとしても、繰り返しでなかったり、毎年継続していない場合などは、事業には該当しません。

 

具体的には、小売業や卸売業、運送、請負、加工、修繕、清掃、クリーニング業など、一般的な商売をしている個人は、個人事業主に該当します。

個人事業主になるためには

個人事業主になるためには、法人のように法務局で設立登記などをする必要はありません。事業を始めれば、自動的に個人事業主になります。

 

ただし、確定申告や税金の納付のために、税務署に提出しなければならない書類があります。代表的なものが「個人事業の開業届出書」と「青色申告承認申請書」です。個人事業の開業届出書は、個人事業を始めたことを報告する届出書で、提出期限は事業開始等の日から1か月以内です。

 

個人事業を開始するだけであれば、個人事業の開業届出書だけで問題ありませんが、様々な特典を受けることができる青色申告をするためには、別に青色申告承認申請書を提出する必要があります。提出期限は、開業の日から2か月以内または、承認を受けようとする年の3月15日までです。

個人事業主と会社員との違い

個人事業主は、事業を営んでいる個人のことです。そのため、会社員とは様々な違いがあります。ここでは、個人事業主と会社員との違いや、会社員と比べた場合の個人事業主のデメリットを確認します。

個人事業主と会社員との違いとは

個人事業主と会社員の大きな違いは、会社などの組織に所属しているかどうかです。会社員は会社に雇用され所属していますが、個人事業主は、どこにも雇用されず独立しています。

 

個人事業主は、会社員のように出社時間や退社時間が決められているわけではありません。働く時間は自分で決めることができるため、急な用事ができた場合に休むことができるなど、働く時間に融通をつけることができます。

 

また、仕事や収入面でも大きな違いがあります。会社員の場合は、基本、勤めている会社の業種に関連した仕事しかできません。収入も給料制の場合が多く、毎月一定です。一方個人事業主の場合は、自分で業種を選んで仕事ができるほか、能力次第では大きな収入を得ることも可能になります。働く場所も自由なため、家で仕事をする場合は、通勤する必要がなく、病気が流行っている場合や災害時には、会社員に比べて安心です。

 

また、個人事業主は会社員と違い定年がないため、年齢に関係なく、長く働き収入を得ることが可能となるメリットもあります。

会社員と比べた個人事業主のデメリット

個人事業主になることは、良いことばかりではなくデメリットも多くあります。例えば、能力次第では大きな収入を得ることができるということは、逆に収入が不安定ということです。

 

また、会社員のように会社に所属していないため、従業員がいない場合などは、原則社会保険に加入しません。自分で国民健康保険や国民年金保険に加入します。

会社員のように保険料の半額を会社が負担してくれることがないので、全額自分で負担しなければなりません。

 

では、税金面ではどのようなデメリットがあるのでしょうか。会社員の給料にも個人事業主の収入にも、同じ所得税が課されます。所得税の税率なども同じです。そのため、所得税自体に特に個人事業主に限ったデメリットはありません。

 

ただし、会社員は、毎月の給料から所得税が源泉徴収され、年末調整で過不足を精算することで、所得税の納税が完了します。一方、個人事業主の場合は、自分で1年間の売上や経費、税金の金額を計算し、確定申告や納税を行う必要があるため、手間がかかります。

 

また、年収が1,000万円を超えた場合、会社員は消費税の納付義務がありませんが、個人事業主には消費税の納税義務が生じるデメリットがあります。

個人事業主と法人との違い

次に、個人事業主と法人との違いについて見ていきましょう。

個人事業主と法人との違いとは

個人事業主と法人との大きな違いは、組織であるかどうかです。

法人とは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利能力を認められたものです。そのため、法人を設立する場合は、法務局で登記をする必要があります。法人設立では、出資者の募集や定款の作成・認証や設立登記など様々な手続きが必要となり、多くの時間と資金も必要です。

 

一方、個人事業主は税務署に届出書を提出するだけのため、設立の手間や資金が少なくて済みます。また、税金の申告や計算についても、個人事業主の方が楽です。

 

法人税の計算は複雑で、申告の書類も税金の申告書だけでなく、決算書や勘定科目内訳書など多くの書類を作成しないといけないため、専門知識がないとできません。それに比べ、個人事業主の確定申告は原則、確定申告書や決算書の作成でよく、税金の計算も比較的簡単です。

法人と比べた個人事業主のデメリット

法人と比べた個人事業主のデメリットで大きなものは、対外的な信用です。

法人しか取引しないという会社も多く、個人事業主ではそもそも取引できないことも多くあります。また、融資を受ける際も、法人の方が有利です。法人の方が融資を受けやすく、また融資額も大きくなる傾向にあります。

 

税金面における個人事業主のデメリットは、同じ所得金額でも、個人事業主の方が税金が高くなることがあるということです。法人の所得には法人税が、個人事業主の所得には所得税が課されます。実は、法人税と所得税では、税金の考え方が違います。法人税の場合は、原則、税率は一定です。中小企業の場合、所得金額が年800万円までは15%、年800万円を超える部分は23.2%の税率です。

 

しかし、所得税は、所得金額が高くなればなるほど、税率も高くなる累進課税制度を採用しています。税率は所得金額に応じて、5%~45%です。所得税は最高税率が45%にものぼるため、所得金額が高くなると、法人税よりも納付金額が高くなるデメリットがあります。

 

消費税については、個人事業主、法人で大きな違いはありません。どちらも原則、売上が1,000万円を超えると、納税義務が発生します。

 

個人事業主と会社員、法人の主な違い

  個人事業主 会社員 法人
開業 開業届出書
青色申告承認申請書
法務局での設立登記
定款の作成や認証など
税金の申告 確定申告 年末調整 法人税の申告
信用度 低い 会社に所属しているため高い 高い
社会保険 常勤の従業員5人未満は加入義務なし 会社の社会保険 加入義務あり

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【もしも会社を辞めるとしたら?】個人事業主と会社員を比較してみた【個人事業主の税金などのデメリット】,3分でわかる!税金チャンネル

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まとめ

個人事業主と会社員、法人では、税金面だけでなく様々な違いがあります。独立して個人事業主になる場合や、個人事業主から法人化をする場合などでは、個人事業主、会社員、法人それぞれのメリットやデメリットをよく考慮する必要があります。

 

自分(自社)に合ったのはどの形態なのかを見極め、よりメリットのあるものを選びましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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