「IT活用促進資金」を活用しよう!融資制度の内容と活用事例
「IT活用促進資金」を知っていますか? 情報技術を利用する方向けの融資制度であり、IT化が進む中で必要となる方も多い制度です。 そこで、本記事ではIT活用促進資金の制度内容から活用事例まで解説します。
IT活用促進資金とは
概要
IT活用促進資金とは、日本政策金融公庫により行なわれている融資制度のひとつです。日本政策金融公庫は実質的に国の金融機関なので、利子が比較的低いことなどから中小企業や小規模事業者に優しい金融機関と言われています。なかでもIT活用促進資金は、現在急速に進むIT化への対応を促すために、IT関連の設備投資に必要な資金を融資する制度となっています。具体的には、営業でタブレット端末などIT機器を用い業務プロセスをシステム化するのに必要な費用や、情報の一元管理のためのクラウドシステムの導入に必要な費用などに関して融資を受けることができます。
限度額
IT活用促進資金には、次の2つのタイプがあり、それぞれ融資の限度額が異なります。
- 国民生活事業として行なう融資
- 中小企業事業として行なう融資
前者は個人事業主や小規模事業者向けで、限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)の融資を行なっています。後者は中小企業向けで、直接貸付として限度額7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)、代理貸付として限度額1億2,000万円の融資を行なっています。
返済期間
IT活用促進資金の返済期間は、設備資金の場合は20年以内(据置期間2年以内)、運転資金の場合は7年以内(据置期間2年以内)となっています。
資金の使い道
IT活用促進資金は、大きく分けて以下の3つに利用することができます。
- 設備を取得するための設備資金、長期運転資金
具体的には、以下のような設備があてはまります。- コンピューター(ソフトウェアを含む)
- 周辺装置(モデムなどの通信装置など)
- 端末装置(多機能情報端末など)
- 被制御設備(高度数値制御加工装置、多軸産業用ロボット装置など)
- 関連設備(LANケーブルやゲートウェイ装置など)
- 関連建物・構築物(上記装置、設備の導入にあたり必要不可欠なもの)
- 軽減税率対象課税事業などに関する設備を取得するのに必要な設備資金
具体的には、以下のような設備があてはまります。- コンピューター(ソフトウェアを含む)
- 周辺装置(モデムなどの通信装置など)
- 端末装置(多機能情報端末など)
- 関連設備(LANケーブルやゲートウェイ装置など)
- IoTを活用した生産性向上を図るための設備資金および長期運転資金
- ITを活用した企業内業務改善、企業内の情報交換など業務の高度化を行なう方
- 他企業、消費者などとの間でネットワーク上の取引および情報の受発信を行なう方
- 企業内業務のIT水準を、取引先など企業外のIT水準に合わせようとする方
- ITの活用により、業務方法、業務内容などの経営革新を図ろうとする方
資金の使い道が、「2.軽減税率対象課税事業などに関する設備を取得するのに必要な設備資金」の場合は、以下のような方がIT活用促進資金を利用することができます。 - 軽減税率対応のための設備を取得する方
資金の使い道が、「3.IoTを活用した生産性向上を図るための設備資金および長期運転資金」の場合は、以下のような方がIT活用促進資金を利用することができます。 - IoTを活用した生産性向上を図る設備を取得する方(設備の取得に際して専門家の方の助言・指導を受けている場合に限る)
- 資金の使い道が「1.設備を取得するための設備資金、長期運転資金」の場合
基準利率となります。ただし、中小企業等経営強化法の規定に基づき認定を受けた情報処理支援機関については、2億7,000万円まで特別利率②となります。
また、生産性向上特別措置法の規定に基づき革新的データ産業活用計画の認定を受けた方が、認定計画に基づく投資を行なう場合については、2億7,000万円まで特別利率②となります。特に、主務大臣の確認を得た場合は、2億7,000万円まで特別利率③となります。 - 資金の使い道が「2.軽減税率対象課税事業などに関する設備を取得するのに必要な設備資金」の場合
基準利率-9%となります。 - 資金の使い道が「3.IoTを活用した生産性向上を図るための設備資金および長期運転資金」の場合
基準利率となります。ただし、付加価値額の向上が見込まれるなど一定の要件を満たす方については、2億7,000万円まで特別利率②となります。
なお、1.および3.の長期運転資金には、設備などを賃借するために必要な資金、ソフトウェアの取得、制作および運用に必要な資金、IT活用のための人材教育に必要な資金、ITの導入に関する診断、助言に必要な資金が含まれます。
利用条件
IT活用促進資金を利用することができる条件は、資金の使い道によって異なります。そのため、上記の資金の使い道の区分を参照しながら説明します。
資金の使い道が、「1.設備を取得するための設備資金、長期運転資金」の場合は、以下のような方がIT活用促進資金を利用することができます。
利率
IT活用促進資金の利率は、国民生活事業の融資と中小企業事業の融資で異なるので、別々に見ていきます。
国民生活事業
利率は、国民生活事業の定める、基準利率、特別利率B、特別利率Cの3つのいずれかです。資金の使い道や返済期間、担保の有無などを鑑みていずれかの利率に決まります。
無担保の場合、基準利率は年利2.16~2.23%、特別利率Bは年利1.51%~1.58%、特別利率Cは年利1.26%~1.33%となっています(2019年9月2日時点)。
担保ありの場合、基準利率は年利1.16~1.83%、特別利率Bは年利0.51%~1.18%、特別利率Cは年利0.30%~0.93%となっています(2019年9月2日時点)。
中小企業事業
中小企業事業では、基準利率、特別利率②、特別利率③の3つの利率のいずれかになります。基準利率は年利1.11~1.12%、特別利率②は年利0.46%~0.47%、特別利率③は年利0.30%となっています(2019年9月2日時点)。利率の決まり方は、資金の使い道によって異なります。先ほどと同様に、上記の資金の使い道の区分を参照しながら説明します。
活用事例
最後に、IT活用促進資金を利用するにあたって参考になるITの活用事例を見ていきます。ITの活用が進んでいる分野は多岐にわたりますが、ここでは次の2つの事例を紹介しましょう。
スマートフォンアプリを利用した新しい物流戦略の創造
これは、酒類卸売業者のワインに関するスマートフォンアプリを開発した事例です。このアプリは、消費者がワインやワインの楽しみ方に関する情報を手軽に入手でき、さらにアプリが販売店への誘導も行なうことで、ワインの需要を引き出すというものです。ITによって消費者への情報提供を促進すると同時に新たな販路を開拓した事例です。
データ分析による業務改善
これは、美容院がデータ分析を活用した事例です。POSレジを導入することによって、顧客の年齢、利用したサービスなどのデータを管理・分析することが可能になります。これにより、顧客の好むサービスを生みだし、売上を伸ばすことができました。また、美容師のデータも管理・分析し、美容師のトレーニングプランへの活用にも成功しました。ITによって、消費者の需要を的確に捉えたサービスの提供を実現した事例です。
まとめ
今回は、IT活用促進資金について説明してきました。最後に紹介した事例のように、ITを活用することによって、業務を改善できたり、新しい顧客にリーチできたり、多様なメリットを享受する可能性が開けます。ぜひITの活用およびIT活用促進資金の利用を検討してみてください。
東京大学卒。現、同大学院所属。
不動産投資に長らく関わっており、不動産に関する税制や相続が得意分野。
税理士事務所でアルバイトとして従事。
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