スタートアップ必見!資金繰りを楽にするリース取引

[取材/文責]細井山豊

リース取引をうまく活用できていますか?実はリース取引には様々なメリットがあり、特に上場していない中小企業にとっては、設備費用のやりくりのために積極的に利用を検討するとよいことを知っていますか?
リース取引のメリットやデメリット、また特別な会計・税務上処理について解説していきます。

リース取引とは?

リース取引とは、「特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料を貸手に支払う取引」と定義されています。
(引用:財務会計基準機構「リース取引に関する会計基準」https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/accounting_standards/11_20.jsp

つまり、貸手に当たるリース会社が借手の会社の代わりに物件を購入し、その物件を貸し出すことで使用料を得る取引のことです。
リース取引は経済的な本質を考えると、以下の2つの種類があります。

ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リース取引とは、法律的にはリース取引でも、経済的な意味を考えると売買取引といえる取引のことです。ファイナンス・リース取引と判定するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
・解約不能(ノンキャンセラブル)
リース契約に基づくリース取引の期間中、契約を解約できないことを指します。これは、資産を自社で購入した場合通常解約できないため、経済的な本質が変わらないという解釈です。
・フルペイアウト
借手の会社がリースされた物件からもたらされる経済的利益を基本的に享受でき、生じるコストは負担しなければならないことを指します。資産を購入した場合は、得られる利益は享受でき、生じるコストは負担しなければならないことと同じです。

またファイナンス・リース取引は、更に2つに分類することができます。

所有権移転外ファイナンス・リース取引
リース取引において、基本的には物件の所有権は貸手のリース会社にあります。この場合、リース期間が終われば、物件はリース会社に返却されます。この取引を所有権移転外ファイナンス・リース取引と呼びます。

所有権移転ファイナンス・リース取引
リース契約によっては、所有権が借手の会社に移転する場合があります。この取引を所有権移転ファイナンス・リース取引といいます。

オペレーティング・リース取引

オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のすべてのリース取引のことを指します。

リース取引のメリット・デメリット比較

メリット

オフバランス効果
オフバランスとは、会計用語で賃借対照表(Balance Sheet, BS)に記載されない資産や負債のことを指します。賃借対照表に記載されないことで、決算書をスッキリとさせ企業価値を高めたり、業務の手間を省いたりできるメリットがあります。
上場していない中小企業は、リース取引をオフバランスとして処理することが可能です。

費用の平準化
時間の経過によって価値が減少する物件を購入した場合、減価償却と呼ばれる方法で、各年度に必要経費を配分していきます。減価償却のうち定率法は、購入初年度が最も減価償却額が高く、時間が経つにつれて償却額が減少していく方法です。
定率法を採用している場合、初年度の負担が大きく、また償却額が毎年変動するため損益の見通しが立ちにくいです。それに対してリース取引では、リース期間中定額で償却していくため、費用を平準化することができます。

資金の効率的運用
リース取引は頭金が不要なため、設備導入時に多額の資金を用意する必要がありません。
また物件を購入することは、資産の回収に長い期間が必要である「資産の固定化」という状態になります。リース取引では資産の固定化を防ぐことができ、その分の資産を運用すれば利益を上げることができます。

事務負担の軽減
リース取引した物件は所有権がリース会社にあるため、固定資産税や償却資産税の申告・納付をする必要がありません。物件を購入した場合は、これに加えて、資金調達や損害保険など、煩わしい事務負担が発生するため、リース取引することでこれらを軽減することができます。

デメリット

中途解約ができない
ファイナンス・リース取引の場合、先程述べたように中途解約ができないため、別の物件に変更することができません。
同様にリース期間中に使わなくなったとしても、使用料を払い続けなければなりません。

経済負担が割高
リース取引の使用料は、資産価格や固定資産税に加えて、リース会社の利益分や維持管理費が上乗せされています。また、金利も銀行融資より高いことが一般的です。
このことから、最終的な経済負担は購入した場合よりも割高になってしまいます。

リース取引の会計・税務上処理

リース取引の会計処理

リース取引の会計処理は「リース取引に関する会計基準」によって定められています。処理については以下の2つの考え方があります。

売買処理
通常の物件購入の場合と同様にリース資産を計上し、減価償却により費用化する方法。

賃貸借処理
リース資産を計上せずに、リース料を支払った時に費用を計上する方法。

以前は所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃貸借処理が認められていましたが、平成20年の会計基準の改正に伴い、原則として売買処理を適用することとなりました。しかし「中小企業の会計に関する指針」を採用している企業は、引き続き賃貸借処理が認められています。
つまり、改正後も中小企業に限っては、オフバランス効果を得ることができるということです。
なお所有権移転ファイナンス・リース取引は売買処理、オペレーティング・リース取引は賃貸借処理にて会計処理を行います。

税務上の取扱い

リースに関する税制も平成20年に改正され、「リース取引に関する会計基準」と同様、所有権移転外ファイナンス・リース取引を売買処理することとなりました。
ここで中小企業が「中小企業の会計に関する指針」に則り、所有権移転外ファイナンス・リース取引を行っている場合は、税務申告上の調整が必要となるので注意しましょう。

☆ヒント
今回紹介したリース取引は、会計処理と税務上の取扱いで違いが生じる場合があるなど、非常に複雑な仕組みとなっています。リース取引をうまく活用できないときは、税理士にアドバイスをもらうと良いでしょう。そもそもその設備投資が必要なのか、銀行に融資してもらうべきか、リース取引を行うべきか、といった多角的な観点から最適な手段を見出すことができます。
本記事で紹介したように特別な会計・税務上処理をプロに任せた上で、オフバランス効果や資金の効率的運用などのメリットを受けられるかもしれません。

まとめ

リース取引は物件を購入する場合と比較して、様々なメリットがある仕組みです。しかしその内容は複雑で会計・税務上処理では注意が必要です。今回紹介したような知識を踏まえた上で、リース取引をうまく活用してみてはいかがでしょうか。

東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。

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