「業務改善助成金」の要件が緩和、助成も拡充!具体的に解説します!

[取材/文責]マネーイズム編集部

中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、賃金の引き上げを促す「業務改善助成金制度」(厚生労働省)をご存知でしょうか? 厚労省は、2021年8月1日から、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に業況が厳しい中小企業・小規模事業者を主な対象に、この制度の対象人数の拡大や、助成上限額の引き上げなどを行いました。その中身を解説します。

どんな制度なのか?

「事業所内最低賃金」の引き上げを図る

まず、制度の概要から説明しましょう。業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るための制度です。この場合の「事業場」は、原則として、同じ場所にあれば1つとみなされますが、労働状態が違う場合(例えば、工場労働者と工場内の食堂で食事を作る労働者)には、それぞれ別の事業場とみなされることになります。

 

生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するのが、この制度です。

支給の要件は?

  • (1) 「賃金引上計画」を策定すること
    事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
  • (2) 引上げ後の賃金額を支払うこと
  • (3) 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと(①単なる経費削減のための経費、②職場環境を改善するための経費、③通常の事業活動に伴う経費などは除きます)
  • (4) 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと

いくら助成してもらえる?

申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資などにかかった費用に、助成率を乗じて算出した額が助成されます。なお、申請コースごとに、助成対象事業場、引上げ額、助成率、引き上げる労働者数、助成の上限額が定められています。具体的には、後で述べます。

「生産性向上のための設備投資」とは?

従来、次のようなケースが対象とされてきました。

 

  • POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
  • リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
  • 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
  • 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 など

8月からどこが変わったのか?

では、制度の要件緩和・拡充(特例)について、具体的にみていきます。

 

  • (a) 特に業況の厳しい事業主(新型コロナウイルス感染症の影響により、生産量又は売上高等の事業活動を示す指標の最近3ヵ月間の平均値が、前年又は前々年同期に比べ、30%以上減少している事業者)への特例
  • (b) 全事業主を対象とする特例

 

の2本立てになっています。

全事業者を対象とする特例

この制度は、最低賃金の引き上げ額が大きいほど、引き上げる労働者の数が多いほど、助成の上限額がアップしていく仕組みです。このうち、引き上げ額については、時給20円以上の「20円コース」から、「30円」「60円」「90円」の各コースが設定されていましたが、今回、(b)として、「45円コース」が新設されました。従来最も活用されていた「30円」と「60円」の間に新たなコースを設け、選択肢を増やすことで、使い勝手の向上を狙ったものです。

 

また、やはり(b)として、年度当初に助成金を活用して賃上げを実施した事業所であっても、10月に行われる最低賃金の引上げに伴い、再度賃上げを行うケースが想定されるため、年度内の複数回申請を認めるとしています。従来は、同一年度内には1回しか申請できませんでした。

新型コロナで大きな影響を受けた事業主への特例

一方、労働者数については、従来の「7人以上」の上に(a)として「10人以上」の項目を設け、助成上限額を引き上げました。これまで、助成の上限は、「90円コース・7人以上」の450万円でしたが、「同コース・10人以上」の600万円となりました。

 

以上をまとめたのが、次の表です。

 


引用:厚生労働省

 

また、(a)の事業者には、助成の対象となる設備投資の範囲も拡充されます。従来は、自動車(特殊用途自動車を除く)やパソコンなどの購入は対象外でしたが、以下が補助対象に含められることになりました。ただし、賃金引上げ額が30円以上の場合に限られます。

 

  • 乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車
  • パソコン、スマホ、タブレット等の端末及び周辺機器(新規導入)

申請締め切りは2022年1月31日

申請から助成金の支給まで

業務改善助成金は、次のような流れで支給されます。

 


引用:厚生労働省

①助成金交付申請書の提出

業務改善計画(設備投資などの実施計画)と賃金引上計画(事業場内最低賃金の引上計画)を記載した交付申請書を作成し、都道府県労働局に提出する。なお、今年度の申請締め切りは2022年1月31日で、予算に達した場合には、申請期間内に募集を終了する場合がある。

 

②助成金交付決定通知

都道府県労働局において、交付申請書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知を行う。

 

③業務改善計画と賃金引上計画の実施

  • 業務改善計画に基づき、設備投資等を行う。
  • 賃金引上計画に基づき、事業場内最低賃金の引上げを行う。

 

④事業実績報告書の提出

業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書を作成し、都道府県労働局に提出する。

 

⑤助成金の額の確定通知

都道府県労働局において、事業実績報告書の審査を行い、内容が適正と認められれば助成金額を確定し、事業主に通知する。

 

⑥助成金の支払い

助成金額の確定通知を受けた事業主は、支払請求書を提出する。

賃金引き上げ時期などに注意

確実に助成を受けるため、以下の点には注意しましょう。

 

  • 交付申請書を都道府県労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合は、対象となりません。
  • 事業場内最低賃金の引上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日までであれば、いつ実施してもかまいません。
  • 設備投資等の実施及び助成対象経費の支出は、交付決定後に行う必要があります。

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最低賃金の引き上げに活用できる「業務改善助成金」ってどんな時に活用できる?,3分でわかる!税金チャンネル

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まとめ

10月からの最低賃金の大幅な引き上げが決まりました。特にコロナ禍で厳しい経営を強いられている企業は、助成限度額の引き上げなどが行われた業務改善助成金の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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