GXとは?GXに対する政府の取り組みと企業にとってのメリットについて解説

[取材/文責]福井俊保

GXという言葉を聞いたことがあるでしょうか。GXとは「Green Transformation」の略でクリーンなエネルギーを中心とした社会を実現する取り組みのことです。今、この取り組みが注目されており、日本政府も推進しています。

ではなぜGXは注目されているのでしょうか。またGXを実現するために政府とはどのような取り組みを行っているのでしょうか。この記事ではGXが注目される背景と日本政府の取り組み、さらには企業がGXに取り組むメリットについて解説します。

GXとは

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GXとは「Green Transformation」の略で、化石燃料ではなく、クリーンなエネルギーを中心とした社会を実現する取り組みのことを言います。地球温暖化の問題に取り組むために、クリーンエネルギーに転換し、温室効果ガスの排出量を減らす必要があるのは、世界共通の認識です。

日本は2050年までに温室効果ガスの排出を森林管理で吸収することで、全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。そのため今後、企業のGXを促進する政策を実施していくことになります。

GXが注目される背景

GXが注目される背景には、以下の3つの理由があります。

地球温暖化の問題

地球温暖化の問題が深刻化しており、今後さらに気温が上昇すると予想されています。このまま地球が温暖化することで、異常気象が発生したり、生態系に異変が生じたりする可能性が高いと言われています。

生態系に異常が発生すれば、食糧問題につながり、飢餓が発生する可能性もあるでしょう。また海面が上昇することで、島が沈んでしまうところもあります。海面が上昇して国土が減れば、人間の住める場所は少なくなり、深刻な問題をもたらすでしょう。

「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を2℃より低く、1.5℃にする努力をすべきとされています。そのためには温室効果ガスを十分に抑えていかなければなりません。ただし簡単には実施することが困難で、発展途上国など二酸化炭素の排出量を抑えることに反対している国もあります。

途上国としては自国が発展するために工業化が必要であるため、二酸化炭素の排出量を制限したくないと考えているわけです。このように地球温暖化の問題は、日本だけで解決する問題ではなく、世界的な取り組みが必要になっています。

そうした中でGXは、環境問題に配慮しつつ、経済発展も実現できる取り組みだと言えます。

政府が「カーボンニュートラル」の実現を目指している

GXが注目される中で、日本は2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すと宣言しました。「カーボンニュートラル」とは、前述したように、温室効果ガスの排出を森林管理で吸収することで、全体としてゼロにする政策です。

そのためにGXが必要であり、日本政府はGXを促進するための政策を行おうとしています。GXは経済成長と環境保護の両立が可能だと考えられており、日本政府も積極的に推し進めています。

重要投資分野のひとつになった

GXに不可欠な「カーボンニュートラル」実現のために、2022年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を発表しました。その中で「新しい資本主義に向けた計画的な重点投資」のひとつにGXが含まれています。

今後10年間で150兆円超の官民GX投資を実現すると岸田総理が表明しており、GX投資は加速するはずです。こうした状況の中で、企業側もGXに関する取り組みを行っていく必要性が出てきています。

GXを実現させるための政府の取り組み

GXを実現させるための政府との取り組みとしては、主に以下の3つがあります。

エネルギー安定供給の確保を前提としたGXの取り組み

GXはグリーンエネルギーの活用をうたっていますが、安定したエネルギー供給ができなければ、経済活動に問題が生じます。電力不足になれば、電力使用制限が行われる可能性もあります。原子力発電所の再稼働が見込めない中で、GXにおいても電力不足を招かない取り組みが必要です。

エネルギーの安定供給のためには、省エネも行っていかなければなりません。そこで政府は省エネ補助金を創設して、中小企業の省エネ支援を強化しています。さらに住宅省エネ化の支援も行います。
また非化石エネルギー転換の目安を政府が示し、主要5業種(鉄鋼業・化学工業・セメント製造業・製紙業・自動車製造業)に対して、省エネの推進を求めている状況です。

日本政府としては、2030年度の再エネ比率36%〜38%を目標に、再エネの主力電源化をめざしています。そのためには現在再稼働できていない原子力の活用も視野に入れており、今後議論が行われる可能性も高いでしょう。

「成長志向型カーボンプライシング構想」等の実現・実行

日本政府は「成長志向型カーボンプライシング構想」を打ち出し、GX経済移行債を活用して、今後20年間で20兆円規模の先行投資を実施する予定です。GXに取り組む企業にインセンティブが付与される仕組みを創設します。

同時にGX技術のリスク補完策を検討・実施する予定です。また日本だけでなく、アジア各国のGXの後押しも検討しています。前述したように地球環境問題は日本だけでなく、世界的な取り組みとして行う必要があるからです。

さらに事業再構築補助金等を活用して、中小企業を含むGXの支援も行います。中小企業は資金力が不足しているため、補助金を活用してGXの促進を促す意図があります。

GXリーグ

「カーボンニュートラル」の実現に向けて、企業と官・学が協働で行う場がGXリーグです。対話・共創・事前の場として活用されています。企業には排出削減の取り組み、サプライチェーン全体における取り組み、製品やサービスを通じた市場における取り組みが求められている状況です。

日本全体として「カーボンニュートラル」を促進しようという意図が見られます。こうした取り組みは今後もさらに進んでいくでしょう。

企業がGXに取り組むメリット

日本政府が積極的に推し進めているGXですが、企業が取り組むメリットはどのような点にあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。

政府からの支援が期待できる

前述したように、政府は重点分野として今後10年間で150兆円超の投資をするため、補助金などの支援が期待できます。中小企業にとっても要件が緩和されて、補助金を得られる可能性があります。

新しい事業につながる可能性もあるため、金銭的な支援が得られるのであれば、検討すべき分野でしょう。

企業イメージが向上する

GXを実施することで、環境問題に取り組んでいる企業として企業イメージが向上する可能性もあり、良い人材も集まるかもしれません。

商品も環境にやさしい物が選ばれる傾向があるので、売上もアップする可能性もあります。このように企業戦略の一環として、GXに取り組むのも選択肢のひとつでしょう。

コスト削減につながる

エネルギーの使用料を節約することは、コストカットにつながります。また自社でエネルギーを生産できれば、自社のエネルギーをまかなうことも可能です。現在のようなエネルギー価格の上昇にも対処できます。

まとめ

ここまでGXに対する日本政府の取り組みと、企業がGXに取り組むメリットについて解説してきました。GXは補助金などを活用すれば、中小企業でも実行できます。GXに取り組むことで、企業イメージも向上します。コスト削減など、他のメリットもありますので、積極的に検討してみましょう。

渋谷区で一から立ち上げたプログラミング教室スモールトレインで代表として、小学生に対するプログラミングと中学受験の指導に従事。またフリーランスのライターとしても活躍。教育関係から副業までさまざまな分野の記事を執筆している。
著書に『AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育』(自由国民社)、共著で『#学校ってなんだろう』(学事出版)がある。

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