住宅ローン控除とは?住宅ローン控除を受けるための確定申告の方法を解説
住宅をローンで購入したときに受けられるのが、住宅ローン控除です。実は、住宅ローン控除は、その年によって制度の内容が異なる部分もあり、複雑です。また、新型コロナウイルスの影響拡大などで、これからも変更される可能性があります。
ここでは、そもそもの住宅ローン控除の内容や今後の変更点などについて解説します。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは
まず、住宅ローン控除の概要や計算方法、要件について見ていきましょう。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは、簡単にいうと、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に受けられる、住宅ローンの年末残高などをもとに計算した一定金額の控除のことです。
住宅ローン控除は正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。扶養控除や生命保険料控除などの所得控除と違い、税額控除となるため、所得税から控除額がそのまま差し引かれる、納税者にとても有利な制度です。実際には、住宅の取得だけでなく、増改築をしたときも住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除は入居した年度によって、控除できる年数や控除率、控除額などが異なります。現行の住宅ローン控除は、次のようになっています。
入居年 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高 | 控除率 | 控除限度額 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
平26.1.1 ~ 令3.12.31 |
本則 | 特定取得※2 | 10年間※3 | 4,000万円以下の部分 | 1.0% | 40万円 |
上記以外 | 10年間 | 2,000万円以下の部分 | 1.0% | 20万円 | ||
認定住宅※1 | 特定取得 | 10年間※3 | 5,000万円以下の部分 | 1.0% | 50万円 | |
上記以外 | 10年間 | 3,000万円以下の部分 | 1.0% | 30万円 |
※2 特定取得とは、住宅の取得価格や費用にかかる消費税が10%である住宅等の取得のことです。
※3 令和元年10月1日から令和2年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で、消費税率10%が適用される住宅である場合には、控除期間が13年になります。
例えば、特定取得である一般の住宅を購入し、住宅借入金等の年末残高が3,000万円であった場合の住宅ローン控除額は、次のようになります。
住宅ローン控除の要件
住宅ローン控除は納税者にとても有利な制度であるため、適用には住宅や住宅ローンなどについてさまざまな要件があります。ここでは、一般的な住宅を取得した場合の主な要件について見ていきましょう。
・住宅の要件
- (1) 新築又は取得の日から6か月以内に入居し、12月31日まで引き続いて住んでいること。
※新型コロナウイルスの影響により、令和2年12月末までに入居できなかった場合は、一定の要件を満たすことで、住宅ローン控除を受けることができます。 - (2) 住宅ローン控除を受ける年の本人の合計所得金額が、3,000万円以下であること。
- (3) 住宅の床面積が50平方メートル以上であり(登記簿上の面積で判断)、床面積の2分の1以上の部分を住宅として使用していること。
中古住宅の場合は、上記の要件に加え、次の要件を満たす必要があります。
- (1) マンションなどの耐火建築物の建物の場合は、築25年以下であること
- (2) 耐火建築物以外の建物の場合は、築20年以下であるまたは、一定の耐震基準を満たしていること
- (3) 生計を一にする親族から購入した家でないこと
- (4) 贈与された家でないこと
・住宅ローンの要件
返済期間が10年以上の住宅ローンであること
そのほか年利0.2%以上の事業主団体からの借入金など一定の住宅ローンも、住宅ローン控除の対象となります。
なお、増築やリフォームの場合には、工事費用が100万円を超えているなど、別の要件があります。
住宅ローン控除を受けるための手続き
住宅ローン控除を受けるための要件を満たしている場合は、一定の手続きをすることで住宅ローン控除を受けられます。
ここからは、住宅ローン控除を受ける手続きや必要書類などを見ていきます。
最初に住宅ローン控除を受けるためには確定申告が必要
住宅ローン控除を受けるための手続きは、控除を受ける最初の年と2年目以降で異なります。
控除を受ける最初の年は、確定申告で控除を受ける必要があります。確定申告書に住宅借入金等特別控除額の計算明細書や住宅ローンの年末残高等証明書などの必要書類を添付して、税務署に提出します。
2年目以後は、勤務先の年末調整で控除を受けることができます。控除を受ける最初の年に確定申告をすると、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」 が送付されてきます。この書類に必要事項を記載し、住宅ローンの年末残高等証明書とともに勤務先に提出することで、年末調整によって住宅ローン控除を受けられます。
住宅ローン控除を受けるための必要書類
住宅ローン控除では、一般の住宅の取得や認定住宅の取得、増改築の場合など、さまざまなケースがあり、それぞれで必要書類が異なります。ここでは、一般的な住宅を取得した場合の必要書類を見ていきましょう。
一般的な住宅を取得した場合の代表的な必要書類は、次のものになります。
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 土地及び家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書の写しなど(取得年月日や価格、床面積などの記載のあるもの)
書類は、国税庁のホームページからのダウンロードや税務署の窓口で入手できます。
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置により、住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合は、入居時期に関する申告書兼証明書(控除期間13年間の特例措置用)も必要となります。
税制大綱で住宅ローン控除が見直しされる
2020年12月10日に、令和3年度税制改正大綱が発表になりました。その中で、住宅ローン控除に関係するものも含まれています。税制改正大綱によると、住宅ローン控除は現行措置のものが1年間延長されます。
また、コロナ対策も継続され、令和4年12月31日までに入居すれば、控除期間が13年の特例措置を受けることができます。さらに、住宅の床面積の基準も、現行50平方メートル以上であるのに対して、税制改正大綱では40平方メートル以上と緩和されます。これは、需要喚起と取得負担軽減を図る狙いがあると考えられます。
ただし、40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅で、住宅ローン控除を適用できるのは、合計所得金額1000万円以下の人のみという所得制限があります。
また、かねてより住宅ローンの控除率が1%で良いのか、住宅ローンの金利に比べて、控除率が高すぎるのではないのかという意見がありました。今回の税制改正大綱では、控除率1%についての改正はありませんでしたが、今後の検討課題として持ち越されることになっています。
まとめ
住宅ローン控除は、控除額が大きく、しかも所得税から直接控除される税額控除であるため、納税者にとても有利な制度です。今回は、一般的な住宅を取得した場合を中心に、お伝えしてきましたが、増改築などさまざまなケースで住宅ローン控除を適用できます。
住宅ローン控除には適用要件があり、必要書類も多いため、状況によっては手続きが複雑になることもあります。住宅ローンが適用できるかどうか不明だったり、必要書類がわからなかったりした場合は、速やかに税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
▼参照サイト
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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