中小企業経営強化税制が延長!制度の内容や税制改正に伴う変更点を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

中小企業が設備投資を行う場合に、生産性の向上を応援するため税制が優遇される中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制が、2年間延長されました。これらは、予算の兼ね合いなどで設備投資が難しかった企業にとって、生産性向上につながるほか、業務効率化による働き方改革もはかれる制度です。この記事では、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制の具体的な内容や、延長に伴って変更となった点についてご紹介します。

中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の違い

中小企業経営強化税制とは

中小企業経営強化税制は、中小企業者等による経営力強化のための一定の設備取得に対して、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%の税額控除)を利用できる優遇税制 です。設備を取得した年度に全額を損金化できる即時償却が大きな魅力となっており、後述の中小企業投資促進税制よりもメリットの大きいものとなっています。

対象となる事業者

中小企業経営強化税制を利用するにあたっては、以下の条件を満たす必要があります。

  • 中小企業者等(常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主や資本金1億円以下の法人など)であること
  • 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画を担当省庁の主務大臣に申請し、指定期間内に認定を受けること
  • 認定取得後に対象設備を取得するか、対象設備を先に取得した場合には取得日から60日以内に経営力向上計画を申請すること

対象となる設備

優遇税制の対象となる設備は、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなどです。設備の用途によって4類型に分けられ、それぞれ対象となる条件や手続き方法が異なるため、詳細は優遇税制の類型ごとに以下で解説します。

中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制は、中小企業等経営強化法の認定がなくても利用できる優遇税制で、一定の業種の中小事業者による設備投資を推進するものです。具体的には、対象設備を取得した場合に、30%の特別償却 または7%の税額控除 を利用できます(税額控除は資本金3,000万円以下の法人などが対象 )。

対象となる事業者

従業員数1,000人以下の個人事業主や資本金1億円以下の法人 などの中小企業者等であれば、中小企業投資促進税制を利用できます。

対象となる設備

中小企業投資促進税制の対象となる設備は、以下の通りです。

設備の種類 条件
機械及び装置 1台160万円以上
測定工具及び検査工具 1台120万以上、または
合計120万円以上(1台30万円以上に限る)
ソフトウェア
(販売用原本、開発研究用などは除く)
単体で70万円以上、または
複数で合計70万円以上(同一年度に利用開始)
貨物自動車 車両総重量3.5トン以上
内航海運業用の船舶 取得価額の75%が優遇税制の対象

中小企業経営強化税制は設備の用途によって4類型に分けられる

取得する設備は、生産活動、販売活動、役務提供活動など収益稼得活動のための国内の設備である必要があります。また、事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設や、中古資産・貸付資産は制度の対象外となります。

 A類型(生産性向上設備)

対象の設備と条件

一定期間内に販売された以下の設備で、生産性が年平均1%以上向上 することが条件となります。また、その条件を満たしていることの証明を工業会などから受ける必要があります。

設備の種類 最低価額 販売開始された時期
機械装置 160万円以上 10年以内
測定工具及び検査工具 30万円以上 5年以内
器具備品 30万円以上 6年以内
建物附属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア(情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの) 70万円以上 5年以内

手続き方法

はじめに、設備メーカーを通して、工業会等から証明書を入手します。また、担当省庁の主務大臣に経営力向上計画の申請書を提出します。それを受け、主務大臣から認定書を入手できたら、確定申告において、即時償却または税額控除を適用します。

 B類型(収益力強化設備)

対象の設備と条件

中小企業者等が利用する以下の設備で、年平均の投資収益率が5%以上 である投資計画において利用されるものが対象になります。投資計画は、経済産業局の確認を受ける必要があります。

設備の種類 最低価額
機械装置 160万円以上
工具 30万円以上
器具備品 30万円以上
建物附属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

手続き方法

はじめに、投資計画案の事前確認を公認会計士または税理士に依頼し、事前確認書を入手します。そして、事前確認書を添付して、管轄の経済産業局において確認書の発行申請を行います。続いて、入手した確認書の控えとともに、担当省庁の主務大臣に経営力向上計画の申請書を提出します。それを受け、主務大臣から認定書を入手できたら、確定申告において、即時償却または税額控除を適用します。

 C類型(デジタル化設備)

対象の設備と条件

事業プロセスの遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする以下の設備が対象となります。経済産業局から、投資計画の確認を受ける必要があります。

設備の種類 最低価額
機械装置 160万円以上
工具 30万円以上
器具備品 30万円以上
建物附属設備 60万円以上
ソフトウェア 70万円以上

手続き方法

はじめに、投資計画案の事前確認を認定経営革新等支援機関に依頼し、事前確認書を入手します。そして、事前確認書を添付して、管轄の経済産業局において確認書の発行申請を行います。続いて、入手した確認書の控えとともに、担当省庁の主務大臣に経営力向上計画の申請書を提出します。それを受け、主務大臣から認定書を入手できたら、確定申告において、即時償却または税額控除を適用します。

 D類型(経営資源集約化設備)

対象の設備と条件

2021年度税制改正における中小企業経営強化税制の2年間延長の際に、新たに追加された類型です。修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備が対象になりますが、2021年5月時点では手続き方法などの詳細がまだ公表されていません。

中小企業投資促進税制の期間延長による変更点

中小企業投資促進税制は、2021年度の税制改正によって2年間の延長が決まり、2022年度末まで適用されることになりました。さらに、期間延長に加えて「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」が廃止され、それに伴って対象だった業種3つが中小企業投資促進税制の対象となる指定事業に追加されることになりました。

従来からの指定事業 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶賃貸業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)
追加された指定事業 不動産業
物品賃貸業
料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)
☆ヒント
中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制は中小企業にとって設備投資の後押しとなるため、生産性向上につながる制度です。中小企業経営強化税制は設備によって類型が分かれており、4つの類型によってそれぞれ手続きの方法も異なるので、普段から相談できる顧問税理士がいると安心です。

まとめ

中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制は上述したように、それぞれ対象者や優遇内容、適用条件が異なるため、注意が必要です。自社が対象となる税制を上手く利用して、経営に役立てていきましょう。また中小企業経営強化税制は、設備の用途によって類型が分かれており、経営力向上計画の認定が必要であることにも注意してください。さらに中小企業経営強化税制は、4つの類型によってそれぞれ手続きの方法も異なり、制度がやや複雑になっています。不安な方は優遇税制を利用する際、気軽に申請書の作成や申請方法を相談できる顧問税理士を決めておきましょう。

中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner