雑所得や給与所得の個人事業主なども使える持続化給付金の拡大について

[取材/文責]長谷川よう

新型コロナウイルスの影響で、売上が半減した中小企業や個人事業主に最大200万円を支給する持続化給付金。雑所得や給与所得として確定申告していた個人事業主やフリーランスが対象外となっていることで問題視されていましたが、このたび対象が拡大されることになりました。
そこで、ここでは持続化給付金の対象拡大について解説します。

売上げが半減した事業者が利用できる持続化給付金とは

持続化給付金とは、売上げが半減した事業者に、事業全般に広く使える給付金を支給する制度のことです。対象拡大前の時点の対象者は次のようになっています。

 

  • ①新型コロナウイルス感染症の影響により、1か月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者
  • ②2019年以前から事業による事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者
  • ③資本金の額又は出資の総額が10億円未満、または資本金などの定めがない場合、常時使用する従業員の数が2,000人以下の法人

 

対象者には、最大で中小法人等は200万円、個人事業者等は100万円の給付を受けることができます(2019年に創業した場合などでは、特例があります)。

 

持続化給付金の申請は、持続化給付金のホームページから行います。また、売上金額が分かる書類などを揃える必要があります。

持続化給付金の拡大で雑所得や給与所得の個人事業主なども利用できる

持続化給付金は、あくまで事業を行っている法人や個人事業主が対象です。しかし、個人事業主の中には、事業を行っているのに事業所得とならず、雑所得や給与所得で申告している人がいます。

 

スタート当初の制度では、これらの人は対象外ですが、第二次補正予算案の中ではこれらの人も対象として含めています。6/29からオンライン申請が開始されています。

 

申請の詳細については決まっていませんが、2020年5月末現在の情報から、雑所得や給与所得それぞれの申請方法について見ていきましょう。

雑所得の場合の申請方法

ライターなどのフリーランスの場合、毎年継続している事業でありながら、税務署の指導などで、雑所得として確定申告しているケースが多くあります。雑所得の場合、売上の計算方法などは事業所得とほぼ同じであるため、事業所得の人の持続化給付金の申請方法と同一になると考えられます。

①前年同月比で50%以上収入が減少していることの判定

白色申告の場合、2020年の任意の月の売上と比較する「前年同月」の売上は、前年1年間の売上を12か月で割って算出します。前年同月の実際の数字ではないので注意が必要です。例えば、前年1年間の売上高が240万円の場合、240万円÷12=20万円が「前年同月の売上高」です。

 

つまり、2020年の1月~12月のいずれかの月で、20万円×50%=10万円以下とある売上の月があれば、持続化給付金が申請できます。

②給付額の計算

給付額は、次の計算式で計算します。

 

前年の総売上(雑所得)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)

 

例えば、上述の例を使い、前年の総売上240万円、今年の4月の売上が8万円(10万円以下のため基準を満たす)だった場合は、次のようになります。

 

前年の総売上240万円-(前年同月比▲50%月の売上8万円×12ヶ月)=144万円

 

給付上限が100万円のため、100万円が給付されます。

③必要書類

持続化給付金の申請には、次の書類が必要です。

 

  • 確定申告書第一表  ※収受日付印が押されていること
    電子申告の場合は、確定申告書の上部に「電子申告の日時」と「受付番号」の記載のあるもの、または「受信通知」の添付が必要
  • 2020年分の対象月の売上台帳等
  • 通帳の写し
  • 本人確認書類

 

運転免許証やマイナンバーカード、住民基本台帳カードなどです。マイナンバーカード、住民基本台帳カードは表面のみの添付となりますが、運転免許証は両面の添付が必要なので注意してください。

給与所得の場合の申請方法

非常勤の講師などの場合、普段は給与として支給されています。しかし、新型コロナウイルスの影響で勤めている学校や教室などが休業となった場合には、個人事業主扱いにされ、休業手当などが出ないケースが多くありました。これらの人に対する支援策が用意されていなかったため、持続化給付金の対象となりました。

 

給与所得の場合、売上は事業所得のものと意味合いが異なりますが、給与として支給されている金額を売上として、給付額の計算をすると考えられます。

①前年同月比で50%以上収入が減少していることの判定

判定方法は、雑所得の場合と同じです。ただし、売上を給与金額として計算すると考えられます。

②給付額の計算

こちらも、雑所得の場合と同じです。給付額は、次の計算式で計算します。

 

前年の総売上(給与所得)-(前年同月比▲50%月の給与×12ヶ月)

③必要書類

持続化給付金の申請には、次の書類が必要です。

 

  • 確定申告書第一表  ※収受日付印が押されていること
    電子申告の場合は、確定申告書の上部に「電子申告の日時」と「受付番号」の記載のあるもの、または「受信通知」の添付が必要
  • 2020年分の対象月の売上台帳等
    給与所得の場合は、売上台帳はありません。そのため、給料明細書や源泉徴収票などの添付が必要と考えられます。
  • 通帳の写し
  • 本人確認書類

 

運転免許証やマイナンバーカード、住民基本台帳カードなどです。マイナンバーカード、住民基本台帳カードは表面のみの添付となりますが、運転免許証は両面の添付が必要なので注意してください。

2020年に創業した場合の申請方法とは

持続化給付金の対象となるのは、あくまで事業者です。そのため、今までは2019年以前に開業した法人や個人事業主のみが対象となっていました。

 

しかし、今年創業した法人や個人事業主についても、新型コロナウイルスの影響を受けているのは同じです。そこで、2020年1月1日~3月31日までに開業・創業した法人や個人事業主にも対象拡大されました。対象者は以下のとおりです。

 

  • ①2020年1月から3月の間の事業で事業収入があり、今後も事業を継続する意思がある。
  • ②2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月が存在する。

 

給付額の計算式は次のように計算されます。

給付額(上限100万円)=A ÷ B × 6 – C × 6

  • A. 2020年1月から3月の間の事業収入の合計
  • B. 開業月から2020年3月までの開業月数(1ヶ月に満たない日数の月も含む)
  • C. 2020年の開業月から3月までの月平均の事業収入に比べて事業収入が50%以上減少した月の月間事業収入額

 

必要書類については以下のものが必要です。

 

  • 持続化給付金に係る収入等申立書(個人事業者等向け)
  • 開業・廃業等届出書または事業開始等申告書
    提出が難しい場合は、開業日、所在地、代表者、業種、書類提出日の記載がある書類を提出
  • 通帳の写し
  • 本人確認書類

まとめ

持続化給付金は、最大で法人なら200万円、個人事業主なら100万円の給付を受けることができる、魅力のある制度です。融資と異なり返済する必要もありません。そのため、要件を満たす場合は、必ず申請した方が良いでしょう。

 

持続化給付金の対象拡大についても詳細が発表されました。対象となる可能性もあるので、自分が対象者なのか必ずチェックしてみましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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