取締役会とはどんなもの?会社をつくったら設置したほうがいいのか、徹底解説
株式会社に取締役がいて、取締役会があることは、誰もが知っています。では、取締役会というのは具体的にどんな組織で、役割はどこにあるのでしょうか。実は、非上場企業では設置が義務ではない取締役会を置くメリット・デメリットは? わかりやすく解説します。
取締役、取締役会とは
株式会社の仕組み
会社を設立する場合には、通常、株式会社か合同会社が選択されます。この記事では、株式会社の取締役会について説明します。
はじめに株式会社の基本的な仕組みを押さえておきましょう。
株式会社は、株式を発行し、それを出資者に買ってもらうことで資金を集めて経営を行います。出資をして株式を保有する人を「株主」といい、会社の利益の分配(配当)を受けられるだけでなく、経営に間接的に参加する権利を持ちます。
株式会社の最高意思決定機関が「株主総会」で、取締役もその場で選出されます。このように、出資者と経営者が異なることを「所有と経営の分離」と言います。ただし、株主が取締役になることも可能で、小規模の会社では、創業メンバーが出資者兼経営者であることが珍しくありません。そのことが、取締役会設置の判断に影響することもあります。
1名以上必要な「取締役」
取締役は、会社法で定められた役職の1つです。株式会社では、必ず1名以上の取締役を置かなければなりません。逆に言えば、代表取締役1名でも会社を設立し、運営することはできます。
取締役の主な役割は、会社の経営すなわち業務執行に関する意思決定を行うことです。任期は原則として2年で、任期が満了したときには、たとえ同じ人が再び選任されたとしても、重任登記(任期満了した役員を引き続き就任させること)の手続きを行う必要があります。
取締役は任期満了による退任だけでなく、任期途中での辞任も可能です。何らかの理由で解任されることもあります。取締役を解任するには、原則として、株主総会で議決権の過半数の賛成による解任決議が必要です。
3名以上で構成される「取締役会」
取締役会は、株式会社の業務執行の意思決定機関で、株主総会で選ばれた3名以上の取締役によって構成されます。この取締役の中から代表取締役が選任され、通常は社長として経営の最高責任を担うことになります。なお、代表取締役には人数規定がないので、複数置くことも可能です。また、取締役会を設置している株式会社は、原則として、取締役会の業務を監視する監査役を置かなくてはなりません。
ただし、非上場の株式会社には、この取締役会の設置は義務ではありません。設置しない場合には、株主総会の決議事項に基づいて、取締役が日々の業務執行を行うことになります。
取締役会は何をするのか
この取締役会にはどんな役割、権限があるのでしょうか。具体的にみていくことにします。
代表取締役の選定、解職
経営の最高責任者である代表取締役は、取締役会で選ばれます。また、取締役会には、代表取締役を解職する権限もあります。
取締役の職務執行の監督
取締役会は、代表取締役だけでなく、すべての取締役の職務を監督する役割も担っています。与えられている職務を適正に遂行しているか、意思決定のミスがないかなどをチェックするのです。
業務執行の決定
会社の業務執行に関わる重要事項を決めるのは、取締役会の役割です。例えば、事業計画の策定、予算の決定や資金調達の手段、また商品開発や営業方針といった事業の根幹に関わることがらが、取締役会で決定されます。
その他、以下のような会社経営に大きな影響を及ぼす事項については、取締役会の決定が必要です。
- 重要な財産(例えば不動産)の処分及び譲り受け
- 多額の借り入れ
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
- 内部統制(ガバナンス)体制の整備
- 定款の定めに基づく取締役などの責任の免除
取締役会を設置するメリット・デメリット
さきほども説明したように、非上場の株式会社では、取締役会の設置は「任意」です。では、そのメリット・デメリットは、どこにあるのでしょうか。
取締役会設置のメリット
取締役会を設置していれば、株主総会の決議を経ることなく、意思決定が可能になります。また、取締役会を置く会社は、置かない会社に比べ対外的な信用度が向上するため、取引や金融機関からの融資などに際して、有利になることがあります。
さらには、IPO(株式公開)の際に、スムーズに手続きを進めることができることもメリットといえるでしょう。取締役会が機能すれば、経営陣の意思疎通が円滑になり、特定の役員による「独断専行」を防ぐこともできます。
取締役会設置のデメリット
メリットとは裏腹で、株主(総会)の権限が制限されることになります。最低でも取締役3名+監査役1名を揃える必要があり、そのためのコスト(報酬)が発生します。
設置するかしないか、判断の目安は
設立した会社に取締役会を置くかどうかの判断は、事業の状況や会社設立の目的などによって下すことになるでしょう。
売上がそう大きくはなく、会社をつくる主な目的が節税である場合などには、わざわざ役員を募る必要はなく、「1人社長」であっても十分だと思われます。株主=取締役という会社ならば、取締役会を置かないほうが経営の自由度が高まります。
他方、資金調達も得ながら短期間で事業を拡大したい場合、IPOを視野に入れている場合などには、早い時期から取締役会の設置を検討するのがいいでしょう。
取締役会開催の実務
最後に取締役会という「会議」について、述べておきましょう。
取締役会の招集
取締役会は、3カ月に1回以上開かなくてはなりません。また、緊急に決議を要する事態が起きた場合は、臨時取締役会を招集することも可能です。取締役会の招集が行えるのは、取締役、監査役、株主です。
開催に当たっては、原則として開催日時の1週間前までに招集通知を発する必要があり、これを怠ると取締役会が無効とみなされることもあります。ただし、定款に1週間未満の招集期間を定めることが可能です。
議事の進行と内容
取締役会の開催場所に特に定めはなく、議論による決議が可能であれば、リモート(ウェブ会議、テレビ会議、電話会議)でも構いません。議事の進行についても、それぞれの会社がやり方を決められます。議長を誰にするのかも、取締役会で決定することが可能なのです。
議事には、報告だけで済むものと、決議が必要な議題があります。前者には、代表取締役の業務執行についての報告などがあります。一方、株式の譲渡や決算書類の承認など、経営上重要な項目については、決議が必要になるのです。
決議は、議決権を持つ取締役会の過半数が出席し、出席者の過半数以上の賛成によって採択されます。ただし、解職を求められている代表取締役など、決議について特別な利害関係にある取締役は参加することができません。
書面会議とは
取締役会には、事前に定款で定めておくことで、実際に取締役会を開催しなくても決議があったものとみなすことができる「書面決議」という特別の制度があります。特定の取締役が提案した決議事項に対して、ほかの取締役全員が書面やメールなどで同意の回答をすれば、その提案については可決されたことになるのです。迅速な意思決定を行いたいときに大きな効果を発揮しますが、監査役が異議を述べた提案に対しては、この書面決議を行うことはできません。
議事録の作成
取締役会を開催したら、議事録を作成し、取締役会の日から10年間、書面もしくは電磁的記録により本店に保存しなくてはなりません。この議事録には、取締役会に出席した取締役と監査役による署名または記名・押印が必要です。
まとめ
取締役会とはどういうものか、設置することのメリット・デメリットなどについて説明しました。事業や会社の将来を考えながら、設置の必要性などを検討してみましょう。
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