「新型コロナ」対策で中小企業、個人事業主などの納税猶予を拡大か
新型コロナウイルス感染症による、経済への影響が深刻化しています。当初、インバウンドの減少などによる観光産業や、各種イベント中止に伴う関連業者、フリーランスへの打撃が問題視されましたが、外出自粛などによる消費の低迷もあって、広範な分野に「負の連鎖」が及び始めています。こうした状況を受けて、政府は中小企業や個人事業主などに対する納税猶予の拡大を検討しているようです。現時点での最新情報をまとめました。
欧米では大規模な納税猶予を決定
アメリカの新型コロナウイルス感染者数が8万人を超え、中国を抜いたと報じられました(3月27日)。そのアメリカが、すでに大規模な納税猶予を打ち出しているのをご存知でしょうか? 米財務省は、個人は100万ドル(約1億800万円)まで、企業は1,000万ドルまでの納税を7月まで延期できる、と発表しました。
同じような施策を具体化したのは、アメリカだけではありません。イギリス政府は、総額300億ポンド(約4兆円)の付加価値税(消費税)の納税を、2021年3月まで延期できる措置を決定。スウェーデンも275憶ユーロ(約3兆3,000億円)の納税猶予を発表しています。
イギリスの措置は同国GDPの1.5%、スウェーデンの場合は同6%に上る巨額です。なぜここまでやるのかといえば、そのくらい新型コロナ・ショックが甚大なことと、そのショックを和らげるうえで納税猶予という施策が極めて有効だ、という判断を下しているからにほかなりません。
言うまでもなく、納税が猶予されれば、そのぶんのお金が手元に残ります。例えば500万円の納税が猶予されるのは、延滞税が課せられなければ、500万円の無利子・無担保の緊急融資を受けたのと同じこと。例えば取引先の1つからの入金が急に途絶えても、それで当座の資金繰りをカバーすることができるかもしれません。自分が「連鎖倒産」を免れ、他への支払いや雇用を守ることができれば、「負のスパイラル」をいったん断ち切ることができるでしょう。そうやって、なんとかショック状態が収まるまで耐えてもらいたい、というのがこれらの国々の考えなのです。
日本でも納税猶予が拡大されるのか
日本でも、国税庁が、もともとある納税猶予の制度に関して、その申請があった場合には柔軟に対応するように各国税局に通達を出し、ホームページでも納税者に向けて、税務署への相談を呼びかけています。
ただ、これには、原則として次のような要件があります。
- (ケース1)災害により財産に相当な損失が生じた場合
新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合 - (ケース2)本人または家族が病気にかかった場合
納税者本人または生計を同じにする家族が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療費などに付随する費用 - (ケース3)事業を廃止、または休止した場合
納税者が営む事業について、やむをえず休廃業した場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額 - (ケース4)事業に著しい損失を受けた場合
納税者が営む事業について、利益の減少などにより、著しい損失を被った場合、国税を一時に納付できない額のうち、受けた損害額に相当する金額
一律に延期を認めるアメリカなどのやり方と違い、あくまでも今回の新型コロナウイルス感染症の「被害」を受けた場合の救済策、という位置付けなのです。
しかし、3月末になって、政府筋がその適用範囲の拡大などに向けて調整を図っている、という内容の報道がありました。以下、関連する部分を抜粋します。
政府・与党は新型コロナウイルスに対応した追加経済対策で、中小企業や個人事業主らの資金繰りを支援するため、消費税や所得税、法人税など主要な税金の納税を当面、猶予する措置を盛り込む。現行の猶予制度の要件を大幅に緩和し、対象となる企業を拡大する。対策の規模は、これまでと合わせて2008年のリーマン・ショック時(事業規模56・8兆円)を上回る規模となる見通しだ。
このほか、「中小企業などには固定資産税の減免も検討し、事業継続や雇用維持につなげる」としています。
さらに、3月26日に開かれた自民党の税調(税務調査会)の臨時インナー(非公式幹部会)でも、資金繰りや雇用維持に悩む企業への納税猶予が議論されました。これも報道されている内容から、検討されている施策を列挙してみましょう。
- 中小企業、個人事業主などに対し、法人税などの納付期限を延長する
→原則として1年延長で検討 - 中小企業を中心に固定資産税を減免する
→赤字企業でも納付の必要がある地方税の固定資産税の軽減 - 新型コロナウイルス感染症への対応で赤字となった企業に対して、前年度までに納付した法人税の一部を還付する
まとめ
わが国でも、本格的な納税猶予の検討が行われています。4月16日が納付期限となっている所得税、消費税、さらに5月末の3月決算企業の法人税の扱いがどうなるか、注視していく必要があるでしょう。
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