進む税務申告の電子化!あなたの会社で電子化可能な手続きのまとめ

[取材/文責]奥谷佳子

ネットの普及に伴い、ウェブショッピングやネット予約、請求書の電子発行など、ウェブ上で完結できるサービスが増えています。時間や場所を気にしなくても良いメリットを活かし、税務申告においても近年「電子化」が進んでいるのをご存じでしょうか?この記事では、電子化されている税務申告の手続きをまとめて紹介します。

ここまで進んだ税務申告の「電子化」

国が推進する「電子政府化」構想

ひと昔前まで税務申告といえば、大量の書類を抱えて税務署に提出するイメージがありました。一言で税務申告といっても、決算書や申告書、勘定科目内訳書など、提出しなければならない書類は多種多様ですので、必然的に提出枚数も多くなります。

 

  • 受付をする税務官庁にとっても、提出された書類に不備はないか?
  • 記載内容に間違いはないか?

 

などをチェックする作業や大量の書類を保管する業務など、事務的な負担は相当なものでした。

 

提出する側・受付する側双方の事務負担を軽減するための取組として、政府は平成18年8月に「電子政府推進計画」を策定し、インターネット環境を利用した行政サービスの簡素化を推進してきました。

 

現在では行政官庁の手続きの多くが「電子化」されており、自分の都合のよい時間にどこからでもサービスを受けることが出来ます。

電子化による事務手続きの軽減

例えば「法人税の確定申告書」を提出するとしましょう。この場合、法人税申告書だけではなく、決算書、勘定科目内訳書、事業概況報告書等を作成し添付しなければなりません。事業規模にもよりますが、提出枚数は数十枚にも及びます。

 

税務申告は大量のペーパーを伴うのが一般的ですが、手続きを「電子化」することで上記の提出書類全てをペーパーレス化することが可能となります。

 

提出する側のメリット

  • パソコンで手続きできるので窓口に持参又は郵送する手間が省ける
  • 提出書類の控えをペーパーで残しておく必要がない
  • 行政官庁の閉庁時間外でも受付をしてもらえる(一部利用時間に制約があります)

 

受付する側のメリット

  • 書類提出のための来庁者が減少するため、窓口業務が省力化される。
  • 書類の不備や記入間違いをシステムでエラーチェックできるため確認作業が軽減される。
  • 提出書類が減るため、保管場所の省スペース化が可能
  •  

    などが挙げられます。

    「電子化」するためにはどうすればよいか?

    「電子化」を始めるにあたっての事前準備

    提出する側の企業にも大きなメリットがある「電子化」です。ここでは、税務申告の「電子化」を始めるためにはどのような事前準備をすれば良いのかを具体的に解説していきます。

     

    ただし、税理士と顧問契約を結んで会計や税務申告を全て任せているような場合、会計事務所側が既に「電子化」に対応していることがあります。

     

    このようなケースでは会社側が特に事前準備をする必要はなく、税理士が「税務代理」という形で申告を電子化し、送信してくれます。準備を始める前に、顧問税理士にあらかじめ確認しておきましょう。

     

    • インターネット環境の構築
      まずは「電子化」の大前提である「インターネット環境の構築」からスタートします。データは全て電子化されインターネットを経由して官庁に送られますので、ネットに繋がる環境づくりは必須です。
    • 推奨環境の確認
      税務申告で利用するソフトとしては国税庁が提供する「e-Tax」や地方公共団体が提供する「eLTAX」があります。ソフトを利用するために求められるパソコン側の「推奨環境」というのがありますので、要求を満たす水準以上のパソコンを用意する必要があります。
    • 電子証明書の取得
      税務申告の手続きは全てネットで行いますが、手続きをしているのが「納税者本人」であることを証明しなければなりません。電子証明書とは、インターネット上で自分の身分を証明するための「実印」のようなものです。法人であれば商業登記認証局が発行する電子証明書等、個人であればマイナンバーカード等を取得し、証明書を読み取るためのカードリーダーも準備します。
    • 利用開始届の提出
      準備が整ったら「電子化による税務申告(以下、電子申告)」を開始する旨の届出を各官庁に提出しなければなりません。国税庁の「e-Tax」であれば「電子申告等開始届出書」を、地方公共団体の「eLTAX」であれば「利用届出」をそれぞれ提出します。
    • 利用者番号の取得
      4.の届出が受理されると各官庁から「利用者識別番号」「利用者ID」が付与されます。電子申告をする際に必須となる番号ですので、忘れずにプリントアウトしておきましょう。また、一度マイページにログインし、パスワードを設定しておきます。

    送信するデータも「電子化」が必要

    事前準備が整ったところで、次はパソコン側で税務申告のデータを「電子化」するための準備をします。

     

    電子申告の場合、申告書の作成は全て各官庁が指定する電子フォームに従って入力しなければなりません。国税庁では「e-Taxソフト」、地方公共団体では「PCdesk」という税務申告ソフトがそれぞれ無償で提供されていますので、税務申告を始める前にダウンロードし、パソコンにインストールしておきます。

     

    なお、会計事務所側が「電子化」に対応している場合には、税理士が使用している電子化対応の会計ソフトや税務申告ソフトを使うことになります。事前準備と同様、顧問税理士にあらかじめ確認しておきましょう。

    「電子化」が可能な税務申告手続きとは?

    「電子政府化」は国の手続きだけではない

    「電子政府推進計画」に基づき国税の税務申告手続きが「電子化」された同じ時期に、地方公共団体の税務申告についても「電子化」が進み、平成17年1月から地方税電子申告システム「eLTAX」が運用を開始しています。

     

    税目によって異なりますが、例えば法人の税務申告の提出先は(1)国(2)都道府県(3)市町村です。(1)国の税務申告は「e-Tax」が、(2)都道府県(3)市町村の税務申告は「eLTAX」がカバーしています。つまり国、地方を問わず税務申告の全てを「電子化」することが可能というわけです。

     

    現在では税務申告にとどまらず、主に社会保険関係の行政手続き全般を電子化する「e-Gov」や法務局のオンライン申請など、国家全体で行政サービスの「電子化」が進んでいます。

    「電子化」が可能な税務申告手続き一覧

    現在「電子化」できる代表的な税務申告や申請手続きを一覧表にしてみます。

     

    1.税務申告・申請

    税 目 手続き名 利用するシステム
    法人税 法人税、地方法人税(予定申告含む) e-Tax
    法人都道府県民税(予定申告含む) eLTAX
    法人事業税、特別法人事業税(予定申告含む) eLTAX
    法人市町村民税(予定申告含む) eLTAX
    消費税 消費税及び地方消費税(予定申告含む) e-Tax
    所得税 確定申告書(還付申告含む) e-Tax
    相続税 相続税申告書(修正申告含む) e-Tax
    贈与税 贈与税申告書(修正申告含む) e-Tax
    源泉所得税 源泉所得税徴収高計算書 e-Tax
    過誤納還付申請書 e-Tax
    法定調書 法定調書合計表 e-Tax
    住民税 給与支払報告書 eLTAX
    納税証明 各種納税証明の交付申請書 e-Tax
    固定資産税 償却資産申告書 eLTAX

     

    2.届出関係

    税 目 手続き名 利用するシステム
    法人税 法人設立届出書 e-Tax
    青色申告の承認申請書 e-Tax
    棚卸資産評価方法届出書 e-Tax
    減価償却資産の評価方法届出書 e-Tax
    消費税 消費税課税事業者届出書 e-Tax
    消費税簡易課税制度選択届出書 e-Tax
    消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書 e-Tax
    所得税 個人事業の開廃業届出書 e-Tax
    源泉所得税 給与支払事務所等の開設届出書 e-Tax
    都道府県民税 異動届出書(都道府県) eLTAX
    市町村民税 異動届出書(市町村) eLTAX

     

    税務申告・申請や手続きは全て「電子化」されていますので、添付資料がある場合には上記申告書等のデータに添付資料をPDF化したものを付けて送信することになります。

    まとめ

    「環境設定」や「インストール」など、インターネットやパソコンの知識に自信がない方にとって、「電子化」は高いハードルだと感じるかもしれません。しかし、環境さえ整ってしまえば「電子化」のメリットである「事務の簡素化・省力化」を実感できるのは間違いありません。この機会に、会社として税務申告の「電子化」をぜひ検討してみてください。

    Webライター/ライター
    フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

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