経営者の強い味方!「認定経営革新等支援機関」について解説

[取材/文責]奥谷佳子

中小企業の経営支援を目的として、2012年8月に「認定経営革新等支援機関」の認定制度が創設されました。経営者が抱える様々な問題を、認定を受けたプロの専門家が一緒に解決してくれるという、経営者にとってメリットの大きい制度です。今回は「認定経営革新等支援機関」の概要や支援内容を中心に解説していきます。

「認定経営革新等支援機関」とは何か?

国の認定を受けた「経営支援のプロ集団」

「認定経営革新等支援機関」は、2012年8月に「中小企業経営力強化支援法」が施行されたことに伴い、国が認定を行うことになった経営の支援機関のことです。税理士や弁護士、金融機関といった専門知識、実務経験を持つ機関からの登録申請を国が審査し、一定要件を満たすことで「認定経営革新等支援機関」となることができます。

中小企業が抱える販路拡大や生産性の向上といった経営課題を共有し、専門的な知識を使って支援、解決していくことを目的としています。経営状況の分析や事業計画の作成、補助金や税法上の特例等の適用など、経営に役立つ数多くの支援を受けられることから、「認定経営革新等支援機関」に相談する中小企業の経営者の方も増えています。

どのような経営支援をしてくれるのか?

では「認定経営革新等支援機関」が行ってくれる経営支援についてもう少し詳しく解説していきましょう。

1.経営状況の把握

経営者の方が経営判断を行うにあたって最初に行わなければならないのは、会社の経営状態を迅速かつ正確に把握することです。自社の業績は今黒字なのか赤字なのか?今後どのように推移していくのか?といったリアルタイムの情報を迅速かつ正確に知らなければ正しい経営判断はできません。「認定経営革新等支援機関」の経営支援を受けることで、プロの視線から見た信頼度の高い業績評価の提供をスピーディに受けることができます。また、過年度データとの比較により、現在抱えている問題点とその改善について適切なアドバイスを受けることもできます。

2.事業計画の作成

1で行った業績評価に基づき、今後どのような改善を行えば会社経営が健全化するのか?改善によって将来的に業績がどのように推移するのか?といった中長期の事業計画書を作成することが可能となります。国へ補助金申請を行いたいケースや金融機関から融資を受けたいケースなどでは、この事業計画書の作成は特に重要です。「認定経営革新等支援機関」の支援を受けることで、ハードルが高い事業計画書の作成も比較的簡単に進められるでしょう。また、専門職である税理士や公認会計士などが作成を支援することで、事業計画書の信憑性も高まります。

3.事業計画の実行

補助金申請や税法上の特例を受ける際には「認定経営革新等支援機関」による申請内容の確認が必要なものがあります。また、2で作成した事業計画書が実際に達成できているか随時チェックする必要も出てきます。「認定経営革新等支援機関」のフォローアップを受けながらこれらの作業を行えば、支援機関との連携により国が提供する各種支援を有効に活用し、よりスムーズに手続きを進められます。

ケース別にみる「認定経営革新等支援機関」の活用方法

経営の可視化についての支援

一言で「経営状況の正確な把握と分析」といっても、財務諸表を作成し経営状態を読み解くには簿記や経営診断など専門的な知識が必要になります。「認定経営革新等支援機関」の認定基準の1つに「士業法や金融機関の個別業法において、税務、金融及び企業の財務に関する専門的知識が求められる国家資格や業の免許・認可を有すること(税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士、金融機関のみ本号に該当)」というものがあります。「認定経営革新等支援機関」は税理士や中小企業診断士といったように、財務諸表の作成や経営分析に特化した財務のプロ集団で構成されています。一般的には難解な財務分析も、プロによる支援を受けることでその内容はより信頼性の高いものになるでしょう。

事業計画の策定についての支援

経営者のなかには金融機関からの依頼で「事業計画書」や「資金繰り予定表」を作成したことがある方もいるでしょう。現状の数値から将来の業績や資金繰りを予想するのは簡単ではありません。特に金融機関からの融資を受けたい赤字企業の場合、将来的に業績がこのように改善する、資金繰りがここでショートするから融資をお願いしたい、といったことを事業計画を通して金融機関に示さなければなりません。「認定経営革新等支援機関」のなかには、金融機関自らが認定を受けているケースが数多くあります。「認定経営革新等支援機関」の目的の1つは中小企業の支援です。融資の申込をする金融機関が認定を受けているのであれば、「認定経営革新等支援機関」として積極的に活用するのが良いでしょう。

販売拡大についての支援

「認定経営革新等支援機関」のなかには、創業からその後の事業拡大まで、企業と伴走しながら継続して支援を行うケースもあります。日本政府公式ウェブサイトである「ミラサポPlus」では、認定支援機関である税理士法人が企業の立ち上げから成長過程まで、一貫してサポートを続けてきた事例が紹介されています。創業補助金の申請サポートや運転資金を調達するための事業計画書の作成支援、信頼度の高い財務諸表に基づく適切なアドバイスなど企業の成長に合わせた伴走支援は企業にとって有益なことです。また、このようなアドバイスから「認定経営革新等支援機関」同士のネットワークを利用した新たな販路拡大の可能性も考えられます。

「認定経営革新等支援機関」を活用するメリット

専門家の視点で支援を受けられる

「認定経営革新等支援機関」は国が認定する経営支援のプロ集団です。支援機関を活用する最大のメリットとして挙げられるのが、専門家の視点で経営支援を受けられるという点です。税理士や公認会計士、中小企業診断士などは財務に関する国家資格を取得して業務を行っています。当然、そのアドバイスや伴走支援は専門職としての責任のある品質の高いものとなります。「認定経営革新等支援機関」の活用は無償ではありませんが、会社にとってそれ以上のプラスを生む有益なものであることは間違いありません。

その他にも様々なメリットが

中小企業を対象とした国の補助事業には様々なものがあります。「中小企業経営強化税制」「先端設備等導入計画」といった税制上の優遇措置や、「事業再構築補助金」「月次支援金」といった各種補助金や助成金などで中小企業の経営をサポートしています。企業がこれら補助事業の申請をする際の要件として「認定経営革新等支援機関」を活用することが条件になるケースがあります。例えば「中小企業経営強化税制C類型」の場合、申請する設備がデジタル化設備に適合しているか「認定経営革新等支援機関」に事前に確認してもらう必要があります。「事業再構築補助金」の場合、事業再構築指針に沿った事業計画書の作成を「認定経営革新等支援機関」と協力して行うことになります。補助事業の申請を行う際は支援機関の活用が欠かせないようになっているのです。

まとめ

国としてアフターコロナの中小企業を支援する試みは数多く用意されています。「認定経営革新等支援機関」の制度もその柱の1つとして今なお機能しています。この機会に「認定経営革新等支援機関」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

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