株主優待を受けたら確定申告は必要?株主優待と確定申告の関係とは
上場企業などの株を保有している場合、配当のほかに株主優待を受けることがあります。配当は、あらかじめ税金が徴収されていますが、株主優待であらかじめ税金が徴収されることはありません。
それでは、株主優待には税金がかかったり、確定申告が必要になったりするのでしょうか。この記事では、株主優待と確定申告の関係について解説します。
そもそも株主優待とは
株主優待と確定申告の関係について見ていく前に、まずはそもそも株主優待とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
株主優待とは、会社が株主に対して自社製品や優待券、サービス券などを無料で進呈するものです。すべての会社が株主優待を行っているわけではありませんが、株主優待制度を採用している会社は多いです。
会社が株主優待制度を導入する最大の目的は、株主に株を長期的に保有してもらうことです。株主に株を長期的に保有してもらうことで、安定した経営を行うことができます。ここで、実際の株主優待の例を見てみましょう。
・株式会社DDホールディングス(飲食事業やアミューズメント事業など経営)
持ち株数によって、株主ご優待券6,000円~4万8,000円またはお米5㎏~20㎏を株主優待として受け取ることができます。
・株式会社明光ネットワークジャパン(個別指導塾など経営)
1単元(100株)以上の保有で、QUOカードを株主優待として受け取ることができます。受け取れるQUOカードの金額は、保有株数や保有年数(3年超かどうか)で、500円相当~2,500円相当までとなっています。
・オリックス株式会社(金融サービスなど経営)
1単元(100株)以上の保有でカタログから1点、好きな商品を選べるふるさと優待を受け取ることができます。3年以上継続保有で、ワンランク上のカタログギフトになります。
・楽天グループ株式会社(ショッピングサイトの経営など)
1単元(100株)以上の保有で、楽天市場、楽天トラベル、ラクマなどで使える楽天キャッシュ、または楽天トラベル国内宿泊クーポン(1,500円)を受け取ることができます。楽天キャッシュは、保有株式数と保有期間(5年以上かどうか)で500円~2,500円までとなっています。
このように、株主優待制度では、さまざまな商品を株主に進呈しています。
株主優待は確定申告が必要になることがある
ここまでは、株主優待がどのようなものかを見てきました。実は、株主優待を受け取ったら、確定申告が必要になります。
そこで、ここでは株主優待と確定申告の関係について見ていきましょう。
株主優待は雑所得になる
個人は、1年間に収益を得た場合、収益に対して税金が課されます。株主優待についても、商品や金券などの収益を得ていることから税金が課されるため、確定申告も必要となります。
確定申告をする際に必要となるのが、株主優待がどの所得になるのかを確認することです。なぜなら、所得税では所得区分によって、所得金額(もうけ)の計算方法が異なるためです。
結論から言うと、受け取った株主優待は雑所得になります。雑所得は、給与や事業などその他の、どの所得にも該当しないものをいいます。雑所得の所得金額の計算方法は、次の計算式で求めます。
通常、株主優待はそれを得るための経費は、存在しないため、株主優待の金額がそのまま雑所得金額になります。
株主優待で確定申告が必要なケースと不要なケース
株主優待を受け取ったら原則、確定申告が必要です。しかし、確定申告が不要となるケースがあります。確定申告が必要なケース、不要なケースは、株主優待を受け取った人が会社員なのか個人事業主なのかで異なります。それぞれのケースを見ていきましょう。
・会社員の場合
会社員の場合であっても、株主優待を受け取ったら原則、確定申告が必要です。しかし、例外的に株主優待の(所得)金額が20万円以下の場合は、確定申告する必要がありません。
・個人事業主の場合
個人事業主の場合で、株主優待を受け取ったら、原則、確定申告が必要です。ただし、そもそも納める税金がない場合は、確定申告をする必要がありません。そのため、事業所得と株主優待の雑所得の合計よりも、扶養控除や医療費控除などの所得控除の金額の方が大きい場合は所得金額が0円となり、納める税金がないため、確定申告をする必要はありません。
また、事業で赤字が出ている場合も、その赤字を株主優待の雑所得と相殺できるため、その結果、納める税金がなければ、確定申告をする必要はありません。
株主優待で確定申告をする場合の注意点
多くの場合、株主優待を受け取ったら、確定申告をする必要があります。そこで、ここでは株主優待で確定申告をする場合の注意点について見ていきましょう。
株主優待の金額が分からない場合は?
雑所得金額の計算でも見ましたが通常、株主優待はそれを得るための経費は存在しないため、株主優待の金額がそのまま雑所得金額になります。そのため、確定申告をするためには、株主優待の金額がいくらなのかを知る必要があります。
例えば、商品券などであれば金額が記載されているため、株主優待の金額もわかります。また、カタログギフトなど商品の選択式の場合は、企業の株主優待のページやカタログなどに、おおよその金額が記載されていることもあります。企業の株主優待のページなどに金額が記載されている場合は、その金額を株主優待の金額にして所得金額を計算することも可能です。
しかし、株主優待の性格上、あえて金額が記載されていないこともあります。この場合は、自分で金額を判断するのは難しいです。もし、株主優待の金額が分からない場合は、税理士などの専門家に相談をしたほうが良いでしょう。
株主優待品を転売した場合はどうなる?
株主優待の商品などを自分では使わないため、転売することもあるでしょう。では、株主優待の商品などを転売した場合の税金や確定申告は、どうなるのでしょうか。
株主優待の商品などを転売した場合は譲渡所得になり、税金が課されます。そのため、確定申告が必要です。譲渡所得とは、所有している資産などを売却して利益を得た場合の所得のことです。譲渡所得の所得金額は、次の計算式で求めます。
取得費は、株主優待の取得価格になります。譲渡費用は例えば、オークションサイトの手数料など売却にかかった費用のことです。譲渡所得金額には50万円までの控除があります。そのため、1年間の譲渡所得が50万円を超えなければ、所得税はかかりません。
株主優待にかかる雑所得と譲渡所得を整理すると、次のようになります。
- 株主優待の価格は雑所得
- 株主優待を売却した価格-上記の株主優待価格=譲渡所得
例えば、5万円の株主優待を受け取り、12万円で売却した場合、株主優待5万円は雑所得、売却価格12万円-株主優待5万円=7万円が譲渡所得です。ただし、譲渡所得には年間50万円までの特別控除があります。
まとめ
株主優待とは、会社が株主に対して自社製品や優待券、サービス券などを無料で進呈することです。株主優待では、商品や金券などの収益を得ていることから、税金が課されるため、原則、確定申告が必要となります。
株主優待を受け取った場合には、例外的に確定申告が不要なケースがあったり、株主優待を転売した場合の雑所得と譲渡所得の関係が複雑であったりします。確定申告をする場合は、しっかりと理解したうえで、行うようにしましょう。
▼参照サイト
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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