地方交付税とは?概要と交付されない不交付団体について解説

[取材/文責]松崎ぶっち

地方交付税とは地方団体の財源が不均衡であることを踏まえ、この差を可能な限りなくすために国から支給される税金です。このお金があることにより、それぞれの団体は自治体として安定したサービスが提供できます。しかし地方団体のなかには、地方交付税が交付されない不交付団体があります。今回はこの地方交付税の概要と交付されない不交付団体について解説します。

地方交付税とは

地方交付税の概要

地方交付税は国が地方自治体に代わって徴収する地方税を指します。地方公共団体間の財源は平等ではないため、この不均衡を調節するために利用され、どの地域に住む人でも一定のサービスを受けられるようにする仕組みです。地方交付税の財源には国税が利用され、以下の割合で捻出されています。

  • 所得税および法人税の33.1%
  • 酒税の50%
  • 消費税の19.5%
  • 地方法人税の全額(法定率分)

 

なお、地方交付税は地方自治体の一般財源として扱われます。そのため、それぞれの団体が自分たちの判断で地方交付税を自由に利用可能です。

地方交付税の種類

地方交付税には、普通交付税特別交付税の2種類があります。
まず、普通交付税は基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた際に、財源が不足すると交付される税金です。地方交付税総額のうち、94%が普通交付税として扱われます。計算式は以下のとおりです。

  • 各団体ごとの普通交付税額 = ( 基準財政需要額 - 基準財政収入額)=財源不足額
  • 基準財政需要額 = 単位費用(法定) × 測定単位(国調人口等) × 補正係数(寒冷補正等)
  • 基準財政収入額 = 標準的な地方税収入見込額 × 原則として75%

 

なお、基準財政需要額や基準財政収入額は、それぞれ地方交付税法第11条と第14条の規定により算出されます。特定の計算式に基づいて算出した金額から、地方交付税を交付するかどうかや具体的にいくら交付するのかを決定する仕組みです。
続いて、特別交付税は普通交付税では賄えない災害などのトラブルに対して交付される税金です。地方交付税総額のうち6%が特別国税に割り当てられ、特別の財政需要がある団体に対して交付されます。具体的な交付額は、団体の置かれている状況を踏まえて算出される仕組みです。

地方交付税の不交付団体とは

国から地方交付税が支給されない市町村

地方団体のうち地方交付税が交付されない団体を「不交付団体」と呼びます。基本的にはすべての団体に地方交付税が交付される仕組みですが、地方交付税を交付する必要がない団体には交付されません。交付する必要がない団体とは、地方自治体の独自税収だけで運営できる団体を指します。地方公共サービスを安定して提供できるだけの税収があるため、国から地方交付税を交付する必要がないわけです。

2022年は73団体が対象

地方交付税が交付されない不交付団体は、2022年度で73団体です。2021年度は54団体であったため、比較すると増加しています。具体的な団体名は以下のとおりです。

都道府県 団体名
北海道 泊村
青森県 六ヶ所村
宮城県 大和町
福島県 広野町,大熊町,新地町
茨城県 つくば市,神栖市,東海村
埼玉県 戸田市,和光市,八潮市,三芳町
千葉県 市川市,成田市,市原市,君津市,浦安市,袖ケ浦市,印西市 芝山町
東京都 東京都,立川市,武蔵野市,三鷹市,府中市,昭島市,調布市,小金井市,国分寺市,国立市,多摩市,瑞穂町
神奈川県 川崎市,鎌倉市,藤沢市,厚木市,海老名市,寒川町,箱根町
新潟県 聖籠町,刈羽村
福井県 美浜町,高浜町
山梨県 昭和町
長野県 軽井沢町
静岡県 富士市,御殿場市,長泉町
愛知県 岡崎市,碧南市,刈谷市,豊田市,安城市,小牧市,東海市,大府市,高浜市,日進市,みよし市,長久手市,豊山町,大口町,飛鳥村,幸田町
三重県 四日市市,川越町
滋賀県 竜王町
京都府 久御山町
大阪府 田尻町
兵庫県 芦屋市
福岡県 苅田町
佐賀県 玄海町
※都道府県の中では東京都のみが該当し、それ以外は市町村が該当しています。

税収の変化により交付団体に戻る場合もあり

地方交付税の不交付団体になった場合でも、税収が変化すると交付団体に戻る可能性があります。地方交付税を交付するかどうかは毎年の算出結果をもとに決定されるため、一度、不交付団体になったからといって二度と交付されないわけではありません。
説明したとおり地方交付税が交付されるかどうかは、基準財政需要額と基準財政収入額によって算出されます。これらの算出額は毎年変わるものであり、交付されるかどうかのみならず交付額についても毎年見直されます。

地方交付税の不交付団体になる理由例

住民税の増加

住民税が増加することで財政が安定し、地方交付税の不交付団体となる場合があります。人口や法人が多く住民税が増加するケースです。
特に注目してもらいたい点は、法人の数が多いケースです。法人が納める住民税には「法人住民税の均等割」と呼ばれるものがあり、法人の売上や所得にかかわらず納めなければなりません。休眠している法人や赤字の法人でも納める義務があるため、法人数の多い団体は法人住民税も増えていく仕組みです。
実際の不交付団体を確認してみると、東京都のように法人数の多い団体や愛知県豊田市のように大手企業も中小企業も多いと考えられる団体が不交付団体に該当しています。住民税の額が地方交付税の交付額に大きな影響を与えている状況です。

固定資産税の増加

固定資産税の増加により団体の財政が安定し、地方交付税の不交付団体となるケースもあります。法人が保有するビル、マンションや工場などが多く存在するケースです。
固定資産税の多い団体は観光地や工業地帯が多く見受けられます。観光地であれば、観光施設のみならずホテルなどの宿泊施設が栄えることで固定資産税が増加する仕組みです。また、工業地帯では工場が建設されることはもちろん、従業員が住むための住宅地が建設されることでも固定資産税が増加しています。

☆ヒント
地方交付税の不交付団体は税収入が多く、固定資産税などに複雑な税率が定められている場合があります。該当する地域で事業を営んだり住居を構えたりする際は税金について確認しておくと安心です。

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まとめ

地方交付税の概要と地方交付税が交付されない「不交付団体」について解説しました。基本的には地方サービスを提供するために地方交付税が国から交付されますが、税収入が多い一部の地方団体については地方交付税が交付されません。
基本的に不交付団体は税収入が多く安定した地方サービスが提供されています。そのため、サービス内容について心配することは多くないはずです。ただ、今後、何かしらの影響が加わる可能性はあるため、自身が関係する団体が不交付団体であれば、状況を把握するように努めてみましょう。

立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。

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