2023年度の見込みは46.8%!国民負担率とは?国際比較や世界ランキングも

[取材/文責]田中あさみ

近年日本の国民負担率が上昇しており、50年で約2倍になりました。「税金や社会保険料が高くなっているのはなぜ?」「国際的に見るとどうなのだろう」と気になる方は多いのではないでしょうか。
今回は国民負担率とは何か、先進国・OECD加盟国と日本の比較、上昇している理由などを解説していきます。

※記事の内容は2023年8月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。

50年で約2倍に上昇。年々増加する「国民負担率」とは

日本で年々増加している国民負担率とは?

国民負担率とは、国民所得に対する税金と社会保険料を合計した公的負担の比率です。
将来世代の潜在的な負担として、財政赤字を加えたものは「財政赤字を含む国民負担率」と呼ばれています。
財務省のホームページによると、2023年の国民負担率は46.8%となる見込みです。
近年日本の国民負担率は増加傾向にあります。

出典:「国民負担率の推移(対国民所得比)」 ❘ 財務省より筆者作成

上記に国民所得・財政赤字・財政赤字を含む国民負担率・財政赤字を加えると以下のとおりです。

出典:「国民負担率の推移(対国民所得比)」 ❘ 財務省より筆者作成

最近は財政赤字も増えており、それに伴い財政赤字を含む国民負担率も上昇しています。
世界的に見ると、日本の国民負担率はどのような位置にあるのでしょうか?

日本の国民負担率を先進国と比較してみよう

日本と主な先進国の国民負担率を比べてみましょう。

出典:「国民負担率の国際比較」 ❘ 財務省

イギリス・ドイツ・フランスなどと比べると、日本の国民負担率は低めとなっています。

日本は租税負担率が海外と比べて低い傾向にありますが、ドイツやスウェーデンと比べると財政赤字対国民所得比の値が大きいです。

大阪国税局「中学生用租税教育教材 2023年度版わたしたちの生活と税」によると「日本の国民負担率が海外と比べて低いのは、公債の発行で負担を将来に先送りしている」と記載されています。

国債は日本が発行する債券で「国の借金」ともいえるでしょう。
現在は税金など国民負担率をおさえる代わりに国債を発行し、将来に借金を先送りしている状況です。

国民負担率のランキング:OECD加盟36カ国のうち日本は22位

次にOECD(経済協力開発機構)加盟国と日本の国民負担率を比較してみましょう。
欧米や日本など先進国38カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)のうち36カ国の中で、日本の国民負担率は22位となっています。

出典:「国民負担率の国際比較(OECD加盟36カ国)」 ❘ 財務省

上位10カ国と日本、下位5カ国のランキングは以下のとおりです。

 

フィンランドなどの北欧諸国は福祉政策に力を入れているため、社会保障の負担率が高い傾向にあります。
日本は22位で、先進国の中では比較的国民負担率は低めです。
しかし近年は上昇しています。なぜでしょうか?

日本の国民負担率が上昇しているのはなぜ?

日本の国民負担率が上昇している理由として、少子高齢化により社会保障費用の負担が増えていることや財政赤字の拡大があります。

少子高齢化による社会保障費用の増加

内閣府「2023年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は2022年10月1日時点で1億2,495万人、そのうち65歳以上の人口は3,624万人と総人口に対して29%を占めています。

既に総人口は減少しており、今後ますます高齢化率(65歳以上の人口割合)と死亡率は増え出生率は下がる見込みです。

世界的に見ても、日本は65歳以上の人口割合が高いです。出生率はドイツ、南欧・東欧諸国、アジア圏と共に国際的に最低水準となっています。

出典:「我が国の人口について」 ❘ 厚生労働省

高齢者増加の影響で、年金や公的医療保険・介護保険など社会保障のコストは増大します。

社会保障の給付費用には現役世代の保険料や税金などを充てています。しかし、現役世代の負担を軽減するために国債を発行し「借金」をしている状況です。
日本を含めた先進国は、年々高齢化が進んでいますが日本は進展が最も早いです。

出典:「国土交通白書 2020 我が国を取り巻く環境変化」 ❘ 国土交通省より筆者作成

財政赤字の拡大

日本はバブル崩壊以降、財政収支が悪化しています。
内閣府の「2001年度年次経済財政報告書」の冒頭には「財政赤字と公債残高が大幅に拡大」と記載されています。
2022年度は3年連続で過去最高の税収となりましたが、2023年度の予算は3割超を国債でまかなう厳しい状況が続いています。

対GDP比で国民負担率を見てみると・・・

日本では国民負担率の計算で「国民所得」が用いられますが、海外では一般的に対国内総生産(GDP)比で租税・社会保障負担を示しています。

対GDP比の国民負担率を見てみましょう。

日本の国民負担率対GDP比では34.5%

2022年度の国民負担率は47.5%、2023年度は46.8%の見込みですが国民負担率を対GDP比で計算すると2022年度が34.7%、2023年度は34.5%です。

出典:「国民負担率の推移(対国民所得比)」 ❘ 財務省より筆者作成

国民所得で計算した国民負担率より、10%以上低くなります。
なおGDPとは国内で生産された物やサービスの付加価値の合計を意味します。

OECD加盟36カ国では、対国内総生産(GDP)比の国民負担率は17.2%(メキシコ)〜48.3%(デンマーク)です。
対GDP比では日本の国民負担率が高くないことが分かります。

租税負担・社会保障負担も国際的に見ると高くはない

日本は国債で赤字をまかなっていますので、租税負担率は国際的に見ると高くはないといえるでしょう。

出典:「中学生用租税教育教材 2023年度版わたしたちの生活と税」❘ 大阪国税局

社会保障の負担率は年々増加していますが、飛び抜けて高い状況ではありません

国民負担率の上昇に加え物価上昇・・・どうすれば良い?

2023年8月現在、国民負担率の上昇に加えインフレが進んでいます。
2023年6月の生鮮食品を除く消費者物価指数は、昨年の同じ月に比べ3.3%上昇しました。

「家計が苦しい」「なかなか貯金ができず将来が不安」という世帯は多いのではないでしょうか。

家計の収支を改善するために効果的な方法は「固定費の削減」といわれています。
例えば電力・ガス会社を見直す、加入している保険を見直す、スマートフォンの最新の料金プランを確認するなど毎月の出費を減らすことで無理のない節約ができる事例があります。
賃貸住宅に住んでいる方は、家賃の安いアパートやマンションに引っ越すことも検討してみましょう。

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国民負担率の上昇で、手取りが減る?【少子高齢化】

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まとめ

日本の国民負担率は年々上昇していますが、対GDP比で見ると極端に高くはありません。
社会保障のコストは年々増加していますが日本の生み出す物やサービスの付加価値(GDP)により、今後国民負担率が変化する可能性があります。動向を見守っていきましょう。

大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。

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