税金は何歳から払う?年齢に応じた納税義務について解説

[取材/文責]奥谷佳子

最近では、ネットオークションやアフィリエイト収入など、自宅にいながら収入を得る機会が増えています。パソコンやタブレットさえ操作できれば、子供でも収入を得るチャンスがあり、それに伴い納税義務が生じる可能性があるということです。今回は所得税や住民税の納税義務と年齢制限について解説します。

「所得」にかかる税金について

「所得」にはどのようなものがあるか?

個人や個人事業者が収入を得て「もうけ」が出た場合には、「もうけ」に対して所得税が課税されます。

所得税法ではこの「もうけ」を、分離課税を含め内容に応じて10種類に分類しています。自営業の方が事業として得た所得は「事業所得」ですし、サラリーマンが得る給与は「給与所得」です。不動産の賃貸収入は「不動産所得」、公的年金は「雑所得」に分類されます。

令和4年分の確定申告からは「確定申告書A、B」が廃止されて申告書が一本化されるとともに、雑所得が「公的年金」「業務」「その他」に細分化されました。

もしその年に、申告要件を満たすだけの「もうけ」が出た場合、翌年の3月15日までに確定申告書や青色申告決算書・収支内訳書などを作成し、確定申告をしなければなりません。また、確定申告をすることで所得税が還付になるようなケースでもご自身で確定申告書を作成し申告する必要があります。

「所得」には税金がかかる

税法では「もうけ」に対して税金が課されますが、具体的には「所得税」「都道府県民税」「市町村民税」の3つが課税されます。

「所得税」や「都道府県民税・市町村民税(以下、住民税)」は、原則として「もうけ」を得た個人や個人事業者が、自己申告により税額を計算し、申告から納税までを行う「申告納税制度」をとっています。個人や個人事業者の方が自分で確定申告書を作成し、税務署や市区町村の税務担当窓口まで提出しなければなりません。

ただし、金融機関等から受け取る利子や配当金については、支払を受ける時点で所得税が控除(源泉徴収)されており、納税が完結していますので改めて確定申告をする必要はありません。また、サラリーマンの給与から天引きされる所得税も源泉徴収に該当し、年末調整を通して所得税の納税は完結します。したがって、確定申告が必要なケースを除き、給与所得については、原則として確定申告は不要です。

また、所得税ではありませんが、よくあるケースが親から未成年者である子供への金銭等の贈与です。「教育資金贈与」のうち、非課税枠である1,500万円を超える贈与を行った場合や教育資金以外で贈与を行った場合には贈与税が課税されます。

「所得」「税金」と年齢について解説

「所得」は年齢に関係なく発生するもの

ここで生じる疑問の一つに「税金の納税義務に年齢制限はあるのか?」という点です。納税と言えば労働により収入を得て「もうけ」を出すというイメージがあります。実際に、所得税の納税者のうち給与所得者と事業所得者が納める所得税が約8割を占めているというデータもあります。

しかし、収入を得る手段にも近年少しずつ変化が現れ、インターネット環境を利用した電子商取引やデジタルコンテンツに関連した「もうけ」が生じることがあります。メルカリやヤフオクなどで商品を売買したり、動画配信に関するアフィリエイト収入を得るケースなどは、ネット環境が普及した現代ならではといえます。

パソコンやタブレットなどの操作に慣れ親しんだ若年層であれば、インターネットを通じた商取引にも抵抗は少ないのかもしれません。このように、現在では年齢を問わず収入を得て「もうけ」を出す可能性は高くなっているといえます。

対面による物品販売やサービスの提供と違って、インターネットを介して得る収入はあまり「もうけ」を得たという実感が湧かないかもしれません。ビットコインのような仮想通貨取引で利益を上げた人が確定申告をせず、税務当局に指摘されたという事例もあります。しかし、どのような形であれ、得をしたのであれば、申告要件に該当すれば確定申告をして所得税を納税しなければなりません。

「未成年者」の納税はどのように行うのか?

では、仮に未成年者に所得税や住民税の納税義務が生じた場合、確定申告はどのように行えばよいのでしょうか。

税法で納税義務があるのは「もうけを得た人」や「得をした人」です。例えば、商売をして利益が出れば商売を営む個人事業主に納税義務が生じますし、不動産の売買によって利益が生じれば売却した個人に納税義務があります。確定申告は、納税義務が生じた個人や個人事業者に申告納税義務があります。

したがって、未成年者の確定申告であっても申告納税するのはあくまで「もうけ」を出した未成年者です。その未成年者を扶養している親であっても、替わりに申告義務を負うようなことはありませんので注意してください。

では、親や親族が子供に替わって確定申告書を作成することは可能でしょうか?結論からいうと、たとえ親であっても子供の代理で確定申告書を作成することはできません。確定申告書の代理作成は税理士の独占業務であり、税理士だけが子供に替わって確定申告書を作成することができます。したがって、税法の知識がない子供の確定申告書を作成する際には、税理士に依頼する必要があります。

また、子供の所得税の納税についても制約があります。生活費や教育費であれば別ですが、子供に納税義務がある税金を親が肩代わりして支払った場合、子供が得をしますからこれは親から子供への贈与と認定されます。納税額が、贈与税の基礎控除額である110万円を超えるようなケースでは注意が必要です。

税金と年齢制限について解説

「所得税」に年齢制限はあるか?

では、税金の納税義務と年齢制限について解説します。前述しましたが「もうけ」に対してかかるのは「所得税」と「住民税」の2つです。国内に住所がある「非永住者以外の居住者」という前提で、まずは所得税の納税義務についてみていきましょう。

所得税法では、「非永住者以外の居住者」の場合、所得の発生が国内外を問わず全ての所得に対して納税義務が生じます。ここで注目したいのが、定義には居住地や所得の発生に対する区分はあるものの、年齢についての記載がないという点です。

つまり、所得税には年齢制限がありません。たとえ小学生であっても「もうけ」が生じれば所得税を納税する義務があるということです。アフィリエイトで得た収入に対して、多額の所得税を納税するといったケースも起こり得るわけです。

また、同じく国税として「贈与税」がありますが、受贈者である子供に納税義務が生じる贈与についても年齢制限がありません。非課税枠や基礎控除額を超える贈与を行った際に生じる贈与税は、たとえ小学生であっても納税義務は免れませんので注意しましょう。

「都道府県民税(住民税)」に年齢制限はあるか?

次に「住民税」について見ていきましょう。住民税が課税される納税者のうち、非課税判定に該当する場合には納税義務が免除されますが、その一つに「未成年者」というのがあります。前年中の合計所得金額が135万円以下の未成年者については当該所得が非課税とされ、住民税が免除されます。ここでいう「未成年者」とは、従来は20歳未満でしたが、令和5年1月1日から18歳未満に引き下げられました。ただし、18歳未満であっても既に婚姻している方や婚姻暦がある方は未成年者に該当せず成年の扱いとなるので注意してください。

まとめ

子供が納税というと少し違和感を感じる方もいるかもしれません。しかし「もうけ」に対して税金を払うのは租税公平主義の観点からいえば、当たり前の事なのかもしれません。子供だから納税義務がない、という誤った理解をしないよう注意しましょう。

Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

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