ノンアルコール飲料に税金はかかる?酒税の増税との関係とは

[取材/文責]長谷川よう

お酒のようなテイストを味わえることで人気が高いのが、ノンアルコール飲料です。お酒にはもちろん酒税がかかります。では、ノンアルコール飲料には酒税がかかるのでしょうか。

ここでは、ノンアルコール飲料の内容や酒税がかかるのか、酒税に増税の影響は受けるのかなど、ノンアルコール飲料と酒税について解説します。

そもそもノンアルコール飲料とは

ノンアルコール飲料と酒税について考える場合には、まず、ノンアルコール飲料がどのようなものかを知る必要があります。

ノンアルコール飲料とは、簡単にいうとアルコール度数1%未満かつ、お酒風味の飲料のことです。アルコール度数は飲料によって幅がありますが、アルコール度数の低い飲料で間違いありません。

また、アルコール分に応じて細分化されているものもあり、アルコール分0.6〜0.9%のビールテイスト飲料を「ローアルコールビール(飲料)」、0.5%以下を「ノンアルコールビール(飲料)」とわけて呼ぶこともあります。

酒税法では、アルコール度数1%未満には税金がかかりません。そのためアルコール度数が1%未満と低いものを、ノンアルコール飲料と呼んでいます。ただし、アルコール度数が1%未満であっても0%ということではなく、アルコールは含まれています。

アルコール度数が0%かつ、お酒風味の飲料について、大手ビールメーカーではノンアルコール飲料と区別して「ゼロ」や「フリー」と呼んでいます。

現在の酒税のしくみはどうなっている?

ノンアルコールビールには酒税はかかりません。しかし、酒税は常に法律を改正しています。最近でも大きな改正がありました。

改正の内容を見ていく前に、ここでは、現在の酒税のしくみについて見ていきます。

そもそも酒税とはどんなもの?

酒税とは、簡単にいうとお酒にかかる税金のことです。しかし、製造方法の違いなどを無視して、すべてのお酒に一律に税金を課してしまうと、不公平になってしまいます。そこで、お酒の種類ごとに生産や消費の状況などを考え、製造方法や性状などでお酒を分類し、その分類ごとに税金を課しています。

ただし、新しいお酒の種類や製造方法などが次々と開発されるので、生産や消費の状況などを踏まえ、法律の改正も多く行われます。

酒税では、お酒を発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の大きく4種類に分類し、税率を決定しています。現在の酒税の税率は次のようになります。

酒税の税率

お酒の区分 税率(1㎘あたり) 加算額
(アルコール分1度あたり)
発泡性酒類 発泡性酒類 200,000円
発泡酒
麦芽比率25~50%未満
167,125円
発泡酒
麦芽比率25%未満
134,250円
その他(新ジャンル) 108,000円
その他
(ホップ及び一定の苦味料を原料としない)
80,000円
醸造酒類 醸造酒類 120,000円
清酒 110,000円
果実酒 90,000円
蒸留酒類 蒸留酒類 200,000円 10,000円(アルコール分21度以上)
ウイスキー・ブランデー・スピリッツ 370,000円 10,000円(アルコール分38度以上)
混成酒類 混成酒類 200,000円 10,000円(アルコール分21度以上)
合成清酒 100,000円
みりん・雑酒(みりん類似) 20,000円
甘味果実酒・リキュール 120,000円 10,000円(アルコール分13度以上)
粉末酒 390,000円

 

お酒の4分類の詳細は、次のようになります。

・発泡性酒類

発泡性酒類とは、発泡性がありアルコール分が10度未満の酒類のことです。代表的なものには、ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(ビールおよび発泡酒以外)があります。

・醸造酒類

醸造酒類とは、原料を酵母により発酵させて作られた酒類のことです。代表的なものには、清酒、果実酒、その他の醸造酒(その他の発泡性酒類を除く)があります。

・蒸留酒類

蒸留酒類とは、醸造酒を蒸留させて作った酒類のことです。代表的なものには、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ(その他の発泡性酒類を除く)があります。

・混成酒類

混成酒類とは、醸造酒や蒸留酒に、原料酒や香料、調味料などをまぜて作った酒類のことです。代表的なものには、合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒(その他の発泡性酒類を除く)があります。

酒税のかかるお酒の品目とは

次に、お酒の品目に注目して酒税の税率を見ていきましょう。酒税のかかるお酒の品目には、次のものがあります。

1.ビール系飲料

・ビール
ビールとは、麦芽比率50%以上のお酒のことです。また、副原料の重量の合計が使用麦芽の重量の5%以内でないといけません。

ビールに使うことのできる副材料は決まっており、麦や米、とうもろこし、果実や香味料などです。

・発泡酒
発泡酒とは、麦芽比率50%未満のお酒のことです。ただし、麦芽比率50%以上であっても、ビールに該当しないもの(使用麦芽の重量が5%超やビールに使えない副材料を使用など)は発泡酒になります。

・新ジャンル
新ジャンルとは、ビールや発泡酒に該当しない、ビール風の発泡性アルコール飲料のことです。

現在の税率は次のようになります(2023年9月まで)。

品目 税率(350㎖換算)
ビール 70円
発泡酒 46.99円
新ジャンル 37.8円

2.清酒、果実酒

・清酒
清酒とは、原材料に米や米こうじを使い、発酵して作られるお酒のことです。

・果実酒
果実酒とは、ワインやシードルなど、果実を原料に発酵して作られるお酒のことです。

現在の税率は、次のようになります(2023年9月まで)。

品目 税率(1㎘あたり)
清酒 11万円
果実酒 9万円

3.チューハイ等

チューハイや低アルコール分の蒸留酒類などです。

現在の税率は、次のようになります(2023年9月まで)。

品目 税率(350㎖換算)
チューハイ等 28円

段階的におこる酒税の改正(増税)とは

酒税の税率などの改正は、常に行われています。特に、上述した「ビール系飲料」「清酒、果実酒」「チューハイ等」については、段階的に税率の改正が決まっています。

今後予定されているのが、2023年10月と2026年10月の改正です。お酒の品目それぞれについて、酒税の改正を見ていきましょう。

1.ビール系飲料

ビール系飲料については、徐々に税率の一本化が行われます。まず、2023年10月に新ジャンルの枠が廃止され、発泡酒に統合されます。

次に2026年10月には、ビールと発泡酒が一本化し、ビールとしての税率のみになります。
税率は次のようになります。

2023年10月以降

品目 税率(350㎖換算)
ビール 63.35円
発泡酒 46.99円
新ジャンル ―(発泡酒に統合)

2026年10月以降

品目 税率(350㎖換算)
ビール(系飲料) 54.25円
発泡酒 ―(ビールと一本化))

2.清酒、果実酒

清酒と果実酒は2023年10月、一本化した税率のみになります。2026年10月での改正はありません。税率は次のようになります。

2023年10月以降

品目 税率(1㎘あたり)
清酒・果実酒 10万円
果実酒 ―(清酒と一本化)

3.チューハイ等

チューハイ等については、2026年10月に税率が上がります。2023年10月での改正はありません。税率は次のようになります。

2026年10月以降

品目 税率(350㎖換算)
チューハイ等 35円

実は、この段階的な税率の改正は2020年10月より行われていました。基本的には、段階的に税率の一本化もしくは、増税の方向となっています。

まとめ

ノンアルコール飲料とは、簡単にいうとアルコール度数1%未満かつ、お酒風味の飲料のことです。ノンアルコール飲料だからといって、アルコール度数が0%ということはなく、アルコールは含まれています。

酒税法では、アルコール度数1%未満のノンアルコール飲料に酒税はかかりませんが、アルコール度数1%以上の多くのお酒には酒税がかかっています。「ビール系飲料」「清酒、果実酒」「チューハイ等」については、段階的に税率の改正が決まっており、段階的に税率の一本化、もしくは増税の方向に進んでいます。酒税の改正は過去にも頻繁に行われており、今後も注意が必要です。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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