今注目の「デジタルバンク」についてメリットやデメリットを解説
5Gによる通信環境の高速化、大容量化が進み、使用する端末もパソコンからスマートフォン・タブレットと幅広くなる中で、銀行自体をデジタル化しようという動きが出ています。今回は、今後日本国内でも進むと予想される「デジタルバンク」について詳しく解説していきます。
「デジタルバンク」とは何か?
「デジタルバンク」の仕組みについて解説
「デジタルバンク」とはその名の通り、銀行業務のアナログ部分を全てデジタル化することを目指した銀行のことです。従来の銀行といえば、店舗を構え利用者が銀行窓口まで出向いて預け入れや引き出し、振込などを行っていました。預金を動かすには今でも銀行の届出印の押印が必要ですし、振込用紙も自分で記入しなければならないなど、アナログ的なところが残っています。「デジタルバンク」が目指すのは、銀行取引の全てをスマートフォンのような端末から操作することで、こういったアナログ部分を排除しようという試みです。
現に欧米では既に数多くの「デジタルバンク」が存在し、業務を開始しています。日本でも銀行のデジタル化を推進する流れが加速しており、2021年には国内初のデジタルバンク「みんなの銀行」が業務を開始しています。「デジタルバンク」は、まだまだ認知度が高いとはいえませんが、将来的には国内金融機関の主流になる日がくるかもしれません。
「デジタルバンク」で可能となる取引とは?
「デジタルバンク」が目指すところは、全ての銀行業務をスマートフォンをはじめとした端末で全て完結できるサービスを提供することです。銀行が提供する「預金」「為替」「融資」の3大取引がデジタル化されたとします。利用者にとっては、わざわざ銀行に出向いて手続きを行う必要がなくなりますので、時間と労力を減らすことができます。また、現金や実印などの貴重品を持ち歩くことがなくなりますので、紛失や盗難といったリスクも同時に軽減することができるのも魅力の1つです。
銀行にとっても「デジタルバンク」への移行は目指すところでしょう。実店舗を廃止し、業務の全てをデジタル化することができたら、業務の効率化を図れると同時に店舗の維持コストや人件費の削減にもつながります。低金利時代が到来し、利ザヤを稼ぐことが難しくなってきた銀行にとって、固定的に発生する維持管理費や人件費は頭の痛いところです。「デジタルバンク化」することで維持管理費や人件費といった固定経費を削減することができれば銀行も儲けることができます。
「デジタルバンク」と「ネットバンク」の違いとは?
「ネットバンク」と何が違うのか?
「デジタルバンク」は、国内でも既に普及している「ネット銀行」や「インターネットバンキング」と違いを明確に区分することが難しい面があります。結論からいうと、現在では両者の業務内容について、さほど大きな違いはありません。かつて「ネット銀行」や「インターネットバンキング」は、単純な入出金や振込手続きなどを行う機能がメインでした。保険商品や金融商品等の販売機能は付いておらず、また「デジタルバンク」のようにスマートフォン1台で取引を完結させることもできませんでした。今は「ネット銀行」や「インターネットバンキング」でも、銀行が提供するサービスと同じことがウェブ上で完結できるようになりつつあります。
「デジタルバンク」で可能となる取引にはどのようなものがある?
「デジタルバンク」には「チャレンジャーバンク」と「ネオバンク」という2つの形態があります。いずれも店舗を持たず、ウェブ上で銀行業務を完結させるという点は同じですが、いくつかの相違点があります。「チャレンジャーバンク」「ネオバンク」の共通点や相違点と、BaaS機能との関わりについて表で比較してみましょう。
チャレンジャーバンク | ネオバンク | |
---|---|---|
銀行許可の有無 | 許可あり | 許可なし |
実店舗の有無 | なし | なし |
提供するサービス | 預金・為替・融資など | 預金・為替・融資など |
BaaS機能 | BaaS機能ありが多い | BaaS機能ありが少ない |
近年では、銀行が協力企業に対して、API(Application Programming Interface)を通じて銀行サービスを提供する仕組み「BaaS(Bank as a Service)」を取り入れているところが増えてきました。チャレンジャーバンクではこのBaaS機能を提供している企業が多いのに対し、ネオバンクではBaaS機能を提供していない金融機関が多く見受けられます。銀行が協力企業にAPIを通じて銀行情報をする提供サービスとしては、会計ソフトにインターネットバンキングやクレジットカードの取引明細の情報を連携させるのが良い例です。
「デジタルバンク」のメリット・デメリットについて解説
「デジタルバンク」のメリットとは?
・銀行取引を営業時間外にも行うことができる
銀行の窓口で取引を行うためには、銀行の営業時間内に行かなければなりません。その点「デジタルバンク」は、銀行の営業時間外でも取引することができます。特に日中仕事をしている方にとって、24時間いつでも振込や送金ができるメリットは大きいものです。
・店舗に行く手間が省ける
口座開設や銀行窓口で振込をするようなケースでは、従来であればわざわざ銀行窓口に出向いて押印したり、振込用紙に記入したりしていたかと思います。「デジタルバンク」になれば、このような窓口での煩雑な作業をする必要がなくなります。
・銀行側にもメリットがある
「デジタルバンク」の推進は、運営する銀行側にも大きなメリットがあります。実際に店舗を構えるとなると、建物の維持管理費や人件費等のランニングコストを銀行が負担しなければなりません。その点「デジタルバンク」は店舗を構えずウェブ上だけで取引の全てを完結させますので、店舗を構える必要がありません。銀行のコスト削減にもつながります。
「デジタルバンク」のデメリットとは?
高い利便性が期待できる「デジタルバンク」ですが、その反面、デメリットもあります。
・利用がネット環境に左右される
「デジタルバンク」を利用する大前提として、ネットに繋がる環境が必須であることが挙げられます。通信環境の悪い場所や、セキュリティレベルが低いフリーWifiなどでは利用できない点がデメリットとなります。また、通信障害やデジタルバンク側のシステム障害などが起こった時にも取引ができない可能性が高くなります。
・IDやパスワードが漏洩するリスクがある
「デジタルバンク」を利用する際に使用するIDやパスワードが漏洩してしまうと、第三者がなりすまして操作することが可能となってしまいます。いわばキャッシュカードを暗証番号つきで盗まれてしまうようなものです。フィッシング詐欺等により自分の責任で漏洩させてしまうケースや、「デジタルバング」側から漏洩してしまう可能性もゼロではありません。
・「デジタルバンク」自体が周知認識されていない
利便性が高い「デジタルバンク」ですが、そのメリットを理解し活用しようとする人口は今はさほど多くありません。利用者数が増えなければ「デジタルバンク」自体が存続することができませんので、一般的に普及するまで、業務廃止のリスクを抱えることになります。
まとめ
現在では、確定申告や各種行政手続きもパソコンやスマートフォンから行えるようになりました。そういった意味では、銀行業務の「デジタルバンク」への移行は時代の流れなのかもしれません。「デジタルバング」に対する知識を身につけ、メリットを最大限活用できるように準備しておく必要があるでしょう。
Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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