LGBTQのためのパートナーシップ制度とは?メリットや宣誓手順を解説
LGBTQの方々が暮らしやすくするために作られたパートナーシップ制度。実はお金に関するメリットがたくさんあることをご存知でしょうか。
本記事では、パートナーシップ制度について説明しつつ、お金に関わるメリットを詳しく解説します。また、制度を利用する手順にも触れるので、ぜひ最後まで参考にしてください。
※記事の内容は記載当時の情報であり、現在の内容と異なる場合があります。
LGBTQの方々に役立つパートナーシップ制度とは
パートナーシップ制度とは、法的にパートナーとして認められないLGBTQのカップルを、各自治体がパートナーとして認め、結婚に相当する関係であるとする制度です。これによって、さまざまなサービスや福利厚生、社会的配慮を受けやすくなります。
パートナーシップ制度が作られた背景は、日本では法律上、同性婚が認められておらず、LGBTQカップルが他国に比べて暮らしにくい部分があるためです。具体的に配偶者を異性に限定するような記述があるわけではありません。しかし、民法や戸籍法などで使われている「夫婦」は男女の婚姻を前提としていることから、同性同士の婚姻届は受理されないのです。
実際に2018年5月に政府が閣議決定した答弁書で、「民法や戸籍法において『夫婦』とは、婚姻の当事者である男である夫及び女である妻を意味しており、同性婚をしようとする者の婚姻の届け出を受理することはできない」としています。
そこで東京の渋谷区と世田谷区が2015年にパートナーシップ制度を開始しました。その後、導入する自治体は広がっていき、2023年9月1日時点で、導入自治体は少なくとも343になっています。
パートナーシップ制度がある自治体かどうかは、インターネット上で探すことが可能です。
お金に関するパートナーシップ制度のメリット
パートナーシップ制度のお金に関するメリットはたくさんあり、以下のとおりです。
- 生命保険の受取人にパートナーを選べる
- 各種サービスの家族向け特典が適用できる
- 住宅ローンの適用がされる
- パートナーが必要な企業の福利厚生を受けられる
パートナーシップ制度は、LGBTQの方々の金銭的な支援にもつながります。
生命保険の受取人にパートナーを選べる
パートナーシップ制度を利用すれば、LGBTQのパートナーを生命保険の受取人にできる場合があります。もしどちらかのパートナーが先立ってしまったときに、もう一方のパートナーを保険金で援助することが可能です。
例えば、保険金を住宅ローンや老後の資金などに充てられます。その他、相続税対策として活用することも可能です。ただし、すべての生命保険会社が、LGBTQのパートナーを受取人に認めているわけではありません。
同性パートナーを生命保険の受取人にすることについて詳しく知りたい人は「同性のパートナーを生命保険の受取人に そのメリットと注意点を解説」の記事をご覧ください。
各種サービスの家族向け特典が適用できる
家族に対することが前提である民間企業の各種サービスの特典を、LGBTQのパートナーでも適用させることができます。
例えば、クレジットカードの家族カードの発行やスマホの家族割などです。
パートナーシップ制度を利用することで、民間企業の家族向けサービスを受けられ、金銭的なメリットがあります。
住宅ローンの適用がされる
パートナーシップ制度でパートナーとして認められれば、銀行によっては、住宅ローンを組みやすくなります。
例えば、パートナーの収入を合算して住宅ローンの審査を受けられたり、ペアローンを組んだりすることが可能です。
これによって、LGBTQカップルが物件を購入しやすくなります。
パートナーが必要な企業の福利厚生を受けられる
パートナーシップ制度を利用すれば、企業によっては、パートナーが必要な福利厚生を受けることができます。
例えば、結婚祝い金や結婚休暇、家族手当などです。他にも、社宅での同居を認められる企業もあります。
パートナーシップ制度があることで、会社の福利厚生を最大限活用することが可能です。
パートナーシップを宣誓しても国の制度は対象外
とはいえ、パートナーシップを宣誓したとしても、国は同性婚を認めていないため、国が管轄している制度は対象外です。
例えば、以下のようなことが認められません。
- 所得税の配偶者控除
- 遺産の法定相続人として認めること
パートナーシップ制度でLGBTQカップルが少しずつ暮らしやすい社会になりつつありますが、まだまだ不便な点は残っています。
企業主体のパートナーシップ制度が広がっている
実は自治体だけでなく、企業が主体となったパートナーシップ制度が広がっています。自治体だけでは行き届かない支援を、企業が自主的に行っているのです。
例えば、任天堂ではパートナーシップ制度を導入し、同性パートナーを社内制度において婚姻と等しく扱うことにしました。また、アウティング行為を禁止し、LGBTQの方々が働きやすい環境を整えています。
→性的指向や性自認に関する差別的な発言や性的指向を本人の了承なく第三者に公表すること
他にも、NTTドコモやメルカリ、楽天などの日本企業で、LGBTQ向けの福利厚生が広がっています。
自治体ではカバーできないLGBTQの方々に対する支援を、企業が主導して補いつつあるのです。
パートナーシップ制度を利用する手順
パートナーシップ制度を利用する手順は難しくなく、以下のとおりです。
- 自治体の担当課に連絡して宣誓日を決める
- 必要書類を揃えて、宣誓日に指定の場所へ行く
- 宣誓を行い、パートナーシップ宣誓受領証をもらう
自治体によっては、即日でパートナーシップ宣誓受領証を交付してくれます。
ただし、細かい手順や条件は、自治体によって異なるので注意してください。例えば、渋谷区の場合、パートナーシップ制度に申請できる人の条件は以下のとおりです。
(渋谷区のパートナーシップ制度に申請できる人の条件)
- 渋谷区に居住し、かつ、住民登録があること
- 18歳以上であること
- 配偶者がいないことおよび相手方当事者以外のパートナーがいないこと
- 近親者でないこと
また、申請の際には、以下のものが必要となります。
- 申請者それぞれの戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書
- 任意後見契約の公正証書と合意契約公正証書の両方の正本または謄本
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード など)
申請条件を満たしていることを確認し、必要なものをそろえたら、住民戸籍課で申請して審査を受けます。審査には3日程かかり、その後、証明書が発行されて受け取る流れです。申請から証明書の発行まで、おおよそ1週間程度かかります。
各自治体での申請方法を確認して、パートナーシップ制度を有効活用しましょう。
まとめ
パートナーシップ制度は、LGBTQの方々が暮らしやすい社会を作るために自治体が主導して行っているものです。まだ不便な部分はあるものの、パートナーシップ制度を活用すれば、さまざまな金銭的なメリットがあります。
さらに、パートナーシップ制度の範囲は、現在も広がっています。例えば、2023年6月には東京世田谷区で、LGBTQカップルも災害時の補償金の対象となりました。
LGBTQの方々はパートナーシップ制度を利用して、少しでも過ごしやすい環境を作りましょう。
青山学院大学教育人間科学部卒。在学時からFP2級を取得し、お金に関わるジャンルを得意とするライターとして活動。その後、上場企業へ入社し、Webマーケティング担当として従事。現在はお金ジャンルを得意とする専業ライターに転身。「お金の知識は知ってるだけで得する」という経験を幾度もしており、多くの人にお金の基本を身につけてもらいたいと思い執筆を続けている。
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