決算書が理解できれば、税金の金額がわかる?法人の決算書の見方

法人が毎年行う法人税の申告では、決算書を作成し、申告書とともに税務署に提出します。それは、法人の決算書を見れば、大まかな会社の経営状況や税金の金額などがわかるからです。また、経営者にとっても、決算書を理解することでさまざまなメリットがあります。ここでは、決算書を理解するメリットや見方をくわしく解説します。そもそも法人決算とはどのようなものか、概要もあわせて確認していきましょう。

ここでは、決算書を理解するメリットや見方をくわしく解説します。そもそも法人決算とはどのようなものか、概要もあわせて確認していきましょう。
ここでは、法人の決算書の見方について詳しく解説します。

法人決算の目的

そもそも、法人が決算を行う目的はなんでしょうか。法律で決まっているのも1つですが、ほかにも以下の目的があります。

・税金を正しく申告するため

法人が支払う税金として、「法人税」「消費税」「法人住民税」「法人事業税」などがあげられます。計算して納税する必要があるわけですが、多くの税金は決算の所得金額をもとに求められます。正しく納税するために、計算のベースになる決算が欠かせないのです。

・利害関係者に報告するため

決算で確定する財務状況や経営成績は、ステークホルダーにとって重要な情報です。ステークホルダーとは利害関係者のことを指し、主に投資家や株主、取引先、金融機関などが該当します。特に投資家にとって、決算書は意思決定のために欠かせない存在です。投資家をはじめとしたステークホルダーに会社の状況を知らせることも、法人が決算を行う目的です。

・適切な経営判断を下すため

決算書は、会社の経営状況を把握・分析し、適切な経営判断を下すための資料にもなります。決算を行うことで以前からの成長もわかりますし、客観的に会社を知ることもできます。適切な経営判断を下すためにも、法人決算が必要です。

法人決算の流れ

実際に決算を行う際、どのような流れで行えばいいのでしょうか。法人決算の流れを説明します。主に、以下の流れで行ってください。

➀日々の記帳

決算は、日々の記帳を使って行います。決算前にまとめて記帳するのは大変ですから、日頃から記帳しておく癖が大切です。

②試算表の作成

次に、正しく記帳できているか確認するための試算表を作成します。試算表とは、借方と貸方の合計が一致しているかなど、記帳の整合性をチェックするための集計表のことです。入力ミスや仕訳ミスがないか確認することができます。

➂決算整理仕訳を行う

決算整理仕訳とは、事業年度をまたぐ取引について、今期分と来期分に分けることです。支払いが来期に持ち越されている取引があれば、修正しましょう。また棚卸資産があれば、在庫の確認をして帳簿上のデータとズレがないか確認する「実地棚卸」も行う必要があります。

④決算書類の作成

いよいよ、決算書類を作成していきます。法人決算で作成すべき書類は以下のとおりです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 計算書類に係る附属明細書
  • 事業報告書
  • 事業報告に係る附属明細書

 

各書類の作成には時間がかかります。計画的に作成していきましょう。

⑤税金の申告・納税

作成した決算書と法人税申告書を提出して納税します。前述したように、法人にかかる税金は主に「法人税」「消費税」「法人住民税」「法人事業税」の4つになります。税金の種類によって、税務署や都道府県税事務所など提出先が違う点に注意してください。各税金の申告期限と納税期限は、原則期末日から2ヵ月以内です。

⑥決算書の保存

会社法と法人税法によって、各決算書類の保存期間がそれぞれ定められています。書類の種類によって保存期間が変わってきますが、基本的に10年間は保存しておくようにしてください。なお2022年から施行された電子帳簿保存法によって、領収書や請求書などを電子的な方法でやり取りした場合、データで保存しなければならないことになっています。

法人の決算書とはどんなもの?

まず、法人の決算書の概要を見ていきましょう。法人の決算書は、大きく「貸借対照表」と「損益計算書」にわかれます。貸借対照表は、決算時点で法人が持っている資産や負債の残高が記載されたものです。損益計算書は、法人の1年間の売上や経費、利益などが記載されたものです。つまり、貸借対照表と損益計算書を見れば、その法人の資産や収益がわかるということです。

 

では、経営者が法人の決算書を理解すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。決算書を理解する最大のメリットは、自分が経営する法人の経営状態をきちんと把握できることです。経営状態をきちんと把握できれば、経営上の問題点を把握できるようになり、改善策を立てやすくなります。

 

また、複数年の決算書を比較することで、資金や負債残高の変動や収入・経費の増減を把握できるようになります。そうすることで、収益計上に重心を置くか、資金の確保に重点を置くかといった今後の経営の方向性など、経営計画の策定に生かすことができます。

法人の決算書の見方とは

経営者が法人の決算書を確認することで、経営の改善策や経営計画の策定を立てやすくなります。そこで、経営者は法人決算書の見方を知っておく必要があります。法人の決算書には、「貸借対照表」と「損益計算書」の2つがあります。ここでは、それぞれの内容を見ていきましょう。

貸借対照表を見れば、会社の財政状態がわかる

まずは、貸借対照表から見ていきましょう。簡単にいうと、貸借対照表は法人の財政状態を明らかにするための表です。

 

貸借対照表は、右側と左側にわかれています。右側には、現金や預金、固定資産などの「資産の部」が表示されています。左側には、借入金や未払金などの「負債の部」と資本金や利益剰余金などの「純資産の部」が表示されています。

 

貸借対照表は、貸借対照表日(決算日)におけるすべての資産、負債及び純資産を対照表示しており、右側と左側の合計金額が同じ、つまりバランスがとれているため、バランスシートとも呼ばれます。

 

では、貸借対照表から経営上に必要な何がわかるのでしょうか。実は、貸借対照表からは法人の隠れた無駄を見つけることができます。例えば、土地の金額が大きければ、遊んでいる土地があるのではないかと検討することができます。売掛金が大きく、現金や預金が少ない場合は、売掛金の未回収部分や不良債権が多いのではないか、棚卸商品や原材料の在庫は抱えすぎていないかなど、貸借対照表の数字を見ることでわかることが多くあります。

 

このように、貸借対照表の見方がわかれば、法人の隠れた無駄が見つかり、今後の改善策を立てられるようになります。

損益計算書を見れば、会社の経営成績がわかる

次に、損益計算書を見ていきましょう。簡単にいうと、損益計算書は一定期間の法人の経営成績を明らかにするための表です。一定期間の売上などの収入、仕入や経費などの費用の金額の合計額を記載しているほか、収入から費用を差し引いた利益の金額も記載されています。

 

また、損益計算書では本業の利益や本業以外の利益がいくらかわかるように、いくつかの利益が表示されています。それぞれの意味合いは次のようになります。

 ①売上総利益

売上から、販売商品などの仕入や製造原価などの売上原価を差し引いて残った利益のことです。粗利(益)という場合もあります。

②営業利益

売上総利益から、消耗品費や地代家賃、水道光熱費などの販売費や一般管理費を差し引いて残った利益のことです。営業利益は、本業の利益を示したものです。

③経常利益

本業のもうけである営業利益に、雑収入や受取利息などの営業外の収益をプラスし、雑損失や支払利息などの営業外の費用をマイナスしたものが、経常利益です。経常利益は、基本、毎期に発生する本業以外の収入や費用を加味した利益です。

④税引前当期純利益

経常利益に、固定資産の売却損益や過年度の修正損益など、毎期には発生しない特別な損益をプラスマイナスして計算した利益のことです。税引前当期純利益は、税金の計算の基になる利益です。

⑤当期純利益

税引前当期純利益から、税金の納税額に相当する金額を差し引いて残った利益のことです。税金支払い後の、その期間の純粋な利益を示します。

 

では、損益計算書から経営上に必要な何がわかるのでしょうか。損益計算書からは売上や経費の金額だけでなく、その法人の利益がどこから発生しているのか傾向をつかむことができます。

 

例えば、本業である営業利益が黒字でも、営業外の費用が多く、経常利益が赤字ということがあります。この場合は、営業外の費用を抑える施策を考えます、このように、損益計算書の見方がわかると、今後の経営計画の策定に役立ちます。

法人の決算書は自分で作成できる?

決算書は、自分で作成する方法と税理士に依頼して作成してもらう方法があります。それぞれのメリットを説明しますので、ご自身に合ったやり方で作成してください。

決算書を自分で作成することのメリット

決算書を自分で作成するメリットは、やはりコストがかからない点でしょう。専門家の税理士への依頼料は、会社の規模が小さい場合大きな負担になります。自分で作成すれば決算にかかる費用がゼロになるため、コストの負担なく法人決算を行うことができます。

決算書を税理士に依頼することのメリット

法人決算は複雑で、専門的な知識がないとミスが起こりやすい作業です。謝った内容で提出してしまうと、税務調査が入る可能性もあるでしょう。専門家である税理士に依頼すれば、正確に決算してくれますから安心です。また、決算に時間をかけなくて済むため本業への影響も少なくなります。

法人の決算書と税金の関係とは

経営者が法人の決算書を確認する理由の1つに、納める税金がどれぐらいなのかを知りたいというものがあります。ここでは、法人の決算書と税金の関係について見ていきましょう。

まずは、法人税の計算方法を理解しよう

法人税は利益をもとに計算しますが、単純に利益に税率を乗じて求めるというものではありません。利益に税務上の調整(経費にならないものをプラスしたり、収益にならないものをマイナスしたりすること)を加えたもの(課税所得)に税率を乗じて計算します。ここでいう利益とは、税引前当期純利益のことです。

 

つまり、決算書の税引前当期純利益と税務上の調整額、税率の3つがわかれば税額が計算できます。経営者は資金繰りなどのために、おおよその納税額を知りたい場合が多いため、おおよその税務上の調整額と税率を知っておくことが必要です。

 

税引前当期純利益は決算書で確認します。「税務上の調整」とは、例えば一定額以上の交際費や寄附金が経費にならなかったり、受取配当金の一部が収益にならなかったりすることです。その内容や額は法人によって異なりますが、毎年、大きく異なるわけではありません。そこで、自社にはどのようなものがあるのか、あらかじめ税理士などに確認しておきます。税率は、会社の規模によって異なりますが、おおよそ20%~30%です。

法人の決算書を見れば、おおよその税額を計算できる

では、具体例でおおよその税額を計算してみましょう。法人が納付するおおよその税額は、次の計算式で求めます。

おおよその納税額=(決算書の税引前当期純利益±税務上の調整額)×税率

 

例)決算書の税引前当期純利益が300万円。販売費及び一般管理費のうち、10万円が税務上の費用にならないことがわかった。税率はおおよそ20%である。

おおよその納税額=(決算書の税引前当期純利益300万円+税務上の調整額10万円)×税率20%=62万円

まとめ

法人の決算書の見方を知っておくことは、法人の経営上の問題点の把握や、今後の経営計画の策定に役立ちます。また、決算書の税引前当期純利益から、おおよその納税額を把握することができるので、資金繰りのためにも大切なことです。法人の決算書の見方を知っておくことが、企業の成長に欠かせないといっても過言ではありません。ぜひ、この記事を参考に決算書を理解しましょう。

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