年金が3年ぶりにアップ!増える金額はいくら?実質的には目減りする理由
年金額が3年ぶりにアップしました。67歳以下の人は+2.2%、68歳以上の人は+ 1.9%の増額改定です。年金額アップは嬉しいものですが、実は喜んでばかりもいられない理由があります。今回は、年金についてくわしく説明します。また、年金生活者支援給付金についても確認しておきましょう。
年金支給額が3年ぶりにアップ!
2023年4月分から、公的年金の支給額が3年ぶりにアップしました。2023年度に年金を受け取り始める67歳以下の人は前年比+2.2%、年金をすでに受け取っている68歳以上の人は前年比+1.9%と増額改定されています。年金額のアップは4月分からですが、4・5月分があわせて6月に振り込まれることになりますので、改定後の年金額が適用されるのは6月支給分からになります。年金支給日である6月15日の年金額をよく確認してみてください。具体的には、以下のようにアップします。
【67歳以下の人の年金額(例)】
2023年度(月額) | 2022年度(月額) | 前年比 | |
---|---|---|---|
国民年金(老齢基礎年金(満額)) | 6万6,250円 | 6万4,816 円 | +1,434円 |
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) | 22万4,482円 | 21万9,593円 | +4,889円 |
なお、表中の「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額」とは、平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準を言います。
また、68歳以上の人の国民年金(老齢基礎年金(満額))は月額6万6,050円で、前年比+1,234円です。
年金額は、毎年物価や賃金に応じて改定が行われます。原則として67歳以下の人の年金額は賃金の変動に、68歳以上の人の年金額は物価の変動に応じて改定されることになっています。今回の改定は、2023年1月に発表された総務省の「令和4年平均の消費者物価指数」を受けて厚生労働省が決定しました。
年金は実質的な目減り?
3年ぶりに年金額がアップしたわけですが、実は実質的には目減りしているのです。目減りの理由として、「マクロ経済スライド」が発動されたことがあげられます。マクロ経済スライドとは、年金額の増加を抑えるために年金の給付水準を自動的に調整する仕組みを指します。年金の担い手である現役世代の人口が減るなか、将来の財源確保が目的です。2023年の改定では、このマクロ経済スライドが3年ぶりに発動されたため、本来よりも年金額の増加が抑えられているのです。
具体的に見ていきましょう。年金額が賃金と物価の変動に応じて改定されるのは前述したとおりですが、2022年の賃金と物価は以下の上昇率でした。
賃金:+2.8%
物価:+2.5%
しかし、賃金や物価の上昇率ほど年金額はアップしていません。賃金+2.5%の上昇率に対して67歳以下の人の年金額は+2.2%ですし、物価+2.5%の上昇率に対して68歳以上の人の年金額は+1.9%です。本来より0.6%抑えられていることになります。
なお、この0.6%は以下の内訳から成ります。
- 2023年分のマクロ経済スライドによるスライド調整率:▲0.3%
- 前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:▲0.3%
2021年と2022年は賃金と物価が下落していたため、調整がありませんでした。2021年分と2022年分が今回まとめて適用されたこともあり、今回の調整分とあわせて0.6%抑えられることになったのです。
年金が3年ぶりにアップ,年金生活者支援金も
年金が3年ぶりにアップしたわけですが、年金生活者支援給付金はどうでしょうか。説明します。
年金生活者支援金とは
そもそも年金生活者支援給付金とは、公的年金などの収入金額やそのほかの所得が一定基準以下の人に上乗せされて支給される給付金を指します。消費税引き上げ分を活用しており、生活支援を目的としたお金です。年金生活者支援給付金には、以下の3種類があります。
- 老齢年金生活者支援給付金
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
それぞれの支給要件も見ておきましょう。支給要件は次のとおりです。
【老齢年金生活者支援給付金の支給要件】
- 65歳以上の老齢基礎年金受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入額(障害年金や遺族年金などの非課税収入は除く)とその他の所得の合計額が88万1,200 円以下であること
【障害年金生活者支援給付金の支給要件】
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(障害年金などの非課税収入は除く)が472万1,000円以下であること
【遺族年金生活者支援給付金の支給要件】
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(遺族年金などの非課税収入は除く)が472万1,000円以下であること
年金生活者支援金もアップ
年金生活者支援給付金の基準額は物価の変動に応じて毎年改定されます。2023年度は年金生活者支援給付金もアップしました。+2.5%の改定になっています。具体的な金額は以下のとおりです。
【老齢年金生活者支援給付金】
2022年まで基準額は5,020円でしたが、2023年から基準額が5,140円になっています。実際の給付額は、次の2つを合計した金額です。
- (1)保険料納付済期間による月額=5,140円÷480月
- (2)保険料免除期間による月額=1万1,041円×保険料免除月数÷480月
【傷害年金生活者支援給付金】
2022年まで給付月額は障害等級1級の場合6,275円、2級の場合5,020円でした。2023年からは1級の場合6,425円、2級の場合5,140円です。
【遺族年金生活者支援給付金】
納付月額は5,020円から5,140円にアップしています。2人以上の子どもが遺族基礎年金を受給している場合、5,140円を子どもの数で割った金額がそれぞれ支給されます。
年金生活者支援給付金の増額について、あらためて表で整理しましょう。以下のとおりです。
2023年度(月額) | 2022年度(月額) | |
---|---|---|
老齢年金生活者支援給付金 | 5,140円 | 5,020円 |
傷害年金生活者支援給付金 | 1級:6,425円 2級:5,140円 |
1級:6,275円 2級:5,020円 |
遺族年金生活者支援給付金 | 5,140円 | 5,020円 |
まとめ
年金額はアップしましたが、賃金や物価の上昇率を踏まえると本来の伸び率より抑えられているのが実際です。また、来年度以降も同じように目減りする可能性があります。今回の年金改定を喜ぶだけで終わらせるのではなく、お金について改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。収支の見直しや節約について考える機会を持ち、さらに良い老後生活を送ってください。
▼参照サイト
新着記事
人気記事ランキング
-
「新型コロナ」10万円給付申請に必要な書類は?~申請・給付早わかり~
-
売上半減の個人事業主に、100万円の現金給付!中小企業も対象の「持続化給付金」を解説します
-
「新型コロナ」対策で、中小企業の家賃を2/3補助へ世帯向けの「住居確保給付金」も対象を拡充
-
「新型コロナ」対策でもらえる10万円の給付金には課税されるのか?高所得者対策は?
-
法人にかかる税金はどれぐらい?法人税の計算方法をわかりやすく解説
-
新型コロナで会社を休んでも傷病手当金がもらえる!傷病手当金の税金とは
-
増税前、駆け込んでも買うべきものあわてなくてもいいものとは?
-
法人が配当金を受け取った場合の処理方法税金や仕訳はどうなる?
-
【2024年最新版】確定申告と年末調整の両方が必要なケースとは?
-
もしも個人事業主がバイトをしたら?副収入がある場合は確定申告が必要