固定資産税の滞納には3つのリスクがある!支払えないときの対処法も

土地や建物など、固定資産を所有している人に課税されるのが固定資産税です。そろそろ支払いを意識したい時期ですが、納付が難しいと感じている人もいるでしょう。滞納にどのようなリスクがあるのか、気になるところです。固定資産税を滞納するリスクに加え、差し押さえまでの流れや支払えないときの対処法を説明します。

固定資産税を滞納するリスクは3つ

まずは固定資産税を滞納するリスクを見ておきましょう。滞納には、以下の3つのリスクがあります。

延滞金が発生してしまう

固定資産税を滞納するリスクの1つに、延滞金の発生があげられます。税率が高く、滞納が長くなると延滞金だけでも大きな金額になってしまいます。
固定資産税の延滞金は、納付期限の翌日から発生します。納付期限から「1カ月を経過する日まで」と「1カ月を経過した日以降」で税率が変わる点にも注意が必要です。参考に、東京都の税率を見てみましょう。令和4年1月1日から令和5年12月31日までは、税額に以下の税率がかけられます。
 

【東京都の延滞金の税率】
納付期限後1カ月を経過する日まで…2.4%(延滞金特例基準割合+1%)
納付期限後1カ月を経過した日以降…8.7%(延滞金特例基準割合+1%)

※納期限までの期間及び納期限の翌日から1カ月を経過する日までの期間については、年「7.3%」と「延滞金特例基準割合+1%」の いずれか低い割合が適用されることになり、「2.4%」割合が適用されます。

納期限の翌日から1カ月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「延滞金特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合が適用されることになり、「8.7%」が適用されます。
延滞金の計算方法もあわせて確認しておきましょう。固定資産税の延滞金は、次のように計算します。
【延滞金の計算式】
延滞金=(税額×日数×税率)÷365日
納付期限後1カ月を経過する日までの間は税率を2.4%で計算します。
また、納期限後1カ月を経過する場合は、納付期限後1ヵ月までの分(税率2.4%)と1カ月を超えた分(税率8.7%)に分けて計算し、合計します。

財産が差し押さえられる

固定資産税の滞納には、財産が差し押さえられるリスクもあります。滞納が続くと、以下の財産などが差し押さえられてしまいます。

  • 給与
  • 預貯金
  • 土地
  • 建物

 

差し押さえは、比較的差し押さえやすい給与や預貯金から行われるのが一般的です。なお、給与が差し押さえられる場合は勤務先に「債権差押通知書」という通知が届きますから、固定資産税の滞納が勤務先に知られてしまいます。固定資産税を滞納すると、社会的信用にまで関わることになるのです。

自己破産しても免責されない

通常、自己破産した場合には負債は免責されますが、自己破産後も残り続ける負債があります。このように破産後も残り続ける債権を「非免責債権」といいます。固定資産税などの公的な税金は非免責債権ですから、自己破産しても支払いは免除されません。自己破産後も支払いの義務が残ってしまうことを、ぜひ知っておいてください。

固定資産税を滞納したときの差し押さえまでの流れ

固定資産税を滞納すると、財産を差し押さえられるリスクがあると前述しました。避けたい事態ではありますが、万が一財産を差し押さえられる場合はどのような流れで行われるのでしょうか。実際の流れを見ていきましょう。

➀督促状の送付

そもそも固定資産税は、その年の1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有している人に課税される税金で、春ごろに納税通知書が届きます。この納税通知書に記載されている納付期限までに支払わないと、期限から20日以内に督促状を発送することが法律で決まっています。督促状には「期日までに固定資産税を支払わない場合には土地や建物を差し押さえる」という内容が記載されています。

②催告が行われる

実は法律上、督促状が発送されてから10日間が経過しても固定資産税が支払われない場合、財産を差し押さえなければならないと決められているのです。ただし納税できない事情がある場合などを考慮して、差し押さえ前に納税の催告が行われます。「催告書」と呼ばれる書類で催告するほか、電話や自宅訪問で行われる場合もあります。

➂財産調査

催告があっても固定資産税が支払われない場合、いよいよ差し押さえの準備が始まります。差し押さえの準備として行われるのが、財産調査です。財産調査とは、滞納者にどれだけ財産があるか調べることを指します。また、滞納者の勤務先や取引先、家族構成、戸籍などを調べる「身辺調査」も行われます。調査は法律に基づいて行われるため、滞納者からの了承は必要ありません。強制的に行われます。

④差し押さえ

差し押さえが実行されます。前述したように、比較的差し押さえやすい給与や預貯金がまず差し押さえられます。給与が差し押さえられた場合、4分の1を上限に徴収されますし、給与が月額33万円以上であれば、それを超えた分は全額差し押さえられます。また、預貯金が差し押さえられると、銀行からお金を引き出すことはできません。
給与や預貯金では滞納分に届かなかったり、ほかに財産がなかったりする場合は宝石や時計などの贅沢品が差し押さえられることもあります。ただし、生活に必要な衣服や寝具などは対象外です。
差し押さえが行われたあとは、自由に財産を処分することができません。土地や建物も、売却や贈与することができなくなります。差し押さえられた財産は公売にかけられ、滞納した税金に充当されます。

固定資産税を滞納してしまった場合の対処法は?

ここまで、固定資産税を滞納した場合のリスクや差し押さえまでの流れを説明してきました。早く対処しなければと感じた人もいるのではないでしょうか。ここで、固定資産税を支払えないときの対処法を紹介します。

自治体に分納の相談をする

固定資産税の支払いが難しい場合、自治体に分納を相談することができます。役所の徴収職員に相談して、分納計画を取り決めていきます。病院の診断書や失業を証明する書類など、固定資産税の支払いが難しいとわかる書類があれば持参するのもおすすめです。徴収職員との打ち合わせだけで取り決めされる分納は、比較的手軽なため利用している人が多い傾向にあります。
ただし、分納計画を守らない場合は差し押さえのリスクがありますし、延滞が解消するまで期間分の延滞金が必要になる点には注意が必要です。

徴収の猶予を申請する

病気やけが、災害など特殊な事情によって固定資産税が支払えない場合「徴収の猶予」を受けられる可能性があります。特殊な事情とは、例えば以下のようなケースがあげられます。

  • 事業で著しい損失が生じた場合
  • 本人または生計を同じにする家族が病気にかかり、多額の費用を支払った場合
  • 財産について災害や盗難にあった場合
  • 事業を廃止・休止した場合

 

徴収の猶予が認められた場合、最大で1年間は納付が猶予されますし、認められている期間は延滞金の一部または全額が免除されます。徴収の猶予を受けるには、「徴収猶予申請書」や猶予に該当する事実があることを証明する書類などを提出して申請します。また、書類の提出のほかに審査を受ける必要もあります。
徴収の猶予のほかに「換価の猶予」という制度もあります。換価の猶予とは、税金を納めることで生活や事業が困難になる人を対象に、差し押さえ財産の換価が猶予される制度です。認められると、生活の維持や事業の継続が難しくなる財産については差し押さえが解除される可能性もあります。また、換価の猶予が認められている期間中の延滞税が軽減されます。

まとめ

固定資産税の滞納には、延滞金の発生や差し押さえなどリスクがあります。役所を訪問しづらい気持ちもあるでしょうが、支払いが難しい場合は分納の相談に行きましょう。事情によっては、徴収の猶予を受けられる可能性もあります。早めに対処して、大切な財産を守っていってください。

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