外国株投資では二重課税がされる?外国税額控除についても解説

[取材/文責]長谷川よう

資産運用や投資の対象になる商品には、さまざまなものがあります。その中で注目を集めているものに外国株投資があります。
外国の株式に投資をするので、日本と外国の二重で課税されるのではないかと不安に思う人も多いでしょう。
ここでは、外国株投資の二重課税の実態や確定申告など、外国株投資の税金について解説します。

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外国株投資の利益の種類

外国株投資の税金を理解するためには、外国株投資にどのような利益が発生するのかを知っておく必要があります。そこで、はじめに外国株投資の利益の種類を見ていきましょう。

外国株投資は日本でもできる

外国株投資とは、外国株に投資をして利益を得る資産運用の方法のことです。外国企業が発行した株式を購入するわけですが、外国株は日本にいても購入できます。

なぜなら、日本の証券会社では日本企業の株式だけでなく、外国企業が発行した株式も取り扱っているからです。日本の証券会社を通じて外国株に投資できるため、外国語の知識などは必要ありません。

株式に投資することで得る2つの利益

外国株式の投資で得られる利益には「株式売却益」と「配当金」の2つがあります。それぞれについて、見ていきましょう。

●株式売却益

購入価格よりも高い価格で株式を売却したら、売却益が得られます。利益は売却して初めて確定されるため、含み益がいくらあっても利益は確定されていません。そのため、含み益には税金が課されることはありません。

●配当金

日本の証券会社を通して購入できる外国株式の多くは、年に数回、配当金の交付があります。配当金とは、利益の一部を株主に還元するものです。

株式売却益が売却して得る利益であるのに対して、配当金は保有していることに対して得られる利益です。つまり、売却するまでは配当金として利益を得て、その後は売却して、売却益を得ます。

外国株投資にかかる税金

外国株式に投資することで、得ることができる利益は「株式売却益」と「配当金」の2つです。利益が出ているということは当然、税金がかかりますが、「株式売却益」と「配当金」のそれぞれで税金が課される方法が異なります。

ここでは、「株式売却益」と「配当金」それぞれにかかる税金について見ていきましょう。

株式売却益にかかる税金

外国株式を売却して得た利益には、税金が課されます。

給与や事業で得る利益には、累進課税制度により税金が課されます。累進課税制度とは、所得が高ければ高いほど税率も高くなる制度です。しかし、株式売価益に対する税金には累進課税制度制度は適用されず、一律の税率が課されます。

株式売価益に対する税率は、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)です。これは、日本株であっても、外国株式であっても同じです。例えば、外国株式を売却して100万円の利益が出た場合の税額は、次のようになります。

外国株式の売却益にかかる税金=売却益100万円×税率20.315%=203,150円

日本株であっても、外国株式であっても同じ税率です。日本と租税条約を結んでいる国の外国株式は売却益に対する税金がかからず、株式売却益が二重課税されることはありません(ただし、租税条約を結んでいない一部の国では課税されます)。

外国株投資の配当金は二重課税される

次に、配当金の税金について見ていきましょう。

結論から言うと、外国株投資の配当金は二重課税がされます。外国株投資の配当金の税金を理解するために、まずは日本株の配当金にかかる税金について見ていきましょう。

●日本株の配当金の場合

日本株の配当金には、株式売却益と同様に20.315%の税率で税金がかかります。例えば、10万円の配当金に対する税金は、次のようになります。
配当金にかかる税金=配当金10万円×税率20.315%=20,315円

●外国株投資の配当金の場合

外国株投資の配当金の場合の税金は、次のようになります。
(1)配当金から外国の税金が差し引かれる
(2)外国の税金が差し引かれた残りの配当金から、日本の税金が差し引かれる

1つの配当金から、外国と日本の両方の税金が引かれるため、二重課税になっています。外国税の税率については、その国(租税条約)で決まっている税率になります。例えば、米国株なら10%です。

米国株の10万円の配当金に対する税金は、次のようになります。
(1) 配当金から外国の税金が差し引かれる
配当金にかかる外国の税金=配当金10万円×税率10%=1万円
差引配当金=10万円-1万円=9万円
(2)外国の税金が差し引かれた残りの配当金から、日本の税金が差し引かれる
配当金にかかる日本の税金=差引配当金9万円×税率20.315%=1万8,283円

税金の合計金額
外国の税金1万円+日本の税金1万8,283円=2万8,283円
配当金では、日本株の配当金よりも外国株式の配当金のほうが、税金が高くなります。

外国株投資の税金についての注意点

ここからは、外国株投資の税金についての注意点を見ていきましょう。

外国株投資で確定申告は必要?

外国株式では「株式売却益」と「配当金」の2つに税金がかかります。配当金については、配当金が口座に入金される際に、あらかじめ税金が源泉徴収されているので、原則、確定申告は不要です。株式売却益については、証券会社の口座の種類によって、確定申告が必要か不要かが決まります。

証券会社の口座には「特定口座・源泉徴収あり」「特定口座・源泉徴収なし」「一般口座」の3種類があります。このうち、「特定口座・源泉徴収あり」では、売却益が出る都度、売却金額が口座に入金される際にあらかじめ税金が源泉徴収され、確定申告は不要です。
「特定口座・源泉徴収なし」「一般口座」では、税金が源泉徴収されることがないので、確定申告が必要です。

外国税額控除で税金の還付が受けられる

外国株式の配当金は、配当金が口座に入金される際に、あらかじめ税金が源泉徴収されているので、原則、確定申告は不要です。しかし、ここで問題となるのが、二重課税のことです。本来、税金では二重課税は不平等とされています。

そこで、二重課税を解消するために「外国税額控除」の制度が設けられています。外国税額控除とは、外国に支払った税金の一定金額をその年分の所得税から差し引ける制度です。外国税額控除額は、次の計算式で求めます。

外国税額控除額=所得税額×(国外所得金額/所得総額)

注意するのは、外国税額控除を受けるためには、確定申告が必要な点です。「特定口座・源泉徴収あり」の場合でも、確定申告をしなければなりません。戻ってくる税額と確定申告の手間などを考えて、確定申告するかどうかを決めましょう。

NISAやつみたてNISAなどでは外国税額控除は使えない

NISAやつみたてNISAでも、外国株式投資で資産運用ができます。しかし、NISAやつみたてNISAでは、外国税額控除は使えません。なぜなら、NISAやつみたてNISAの課税制度が、株式の投資とは異なるからです。

そもそも、NISAやつみたてNISAは、所得税の非課税制度のひとつです。NISAやつみたてNISAで外国株式に投資をしても、所得税は非課税です。ただし、配当金に対して外国の税金がかかります。つまり、日本の税金は非課税、外国の税金は課税という状況になります。この状況では二重課税にはなっていないため、外国税額控除の対象からは外れます。

まとめ

外国株投資とは、外国株に投資をして利益を得る資産運用の方法のことです。外国株式に投資することで得ることができる利益には「株式売却益」と「配当金」の2つがあります。

「株式売却益」と「配当金」には、それぞれ税金がかかります。株式売却益には日本の税金のみがかかりますが、配当金には日本と外国の両方の税金がかかり、二重課税となっています。そこで、二重課税を解消するために、「外国税額控除」の制度が設けられています。

ただし、外国税額控除を受けるためには、確定申告が必要です。外国税額控除を使わなければ確定申告が不要な場合でも、確定申告をする必要があります。戻ってくる税額と確定申告の手間などを考えて、確定申告するかどうかを決めましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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