副収入の種類で税金は変わる?個人事業主に副収入があった場合の税金とは

[取材/文責]長谷川よう

会社員だけでなく、個人事業主であっても、アルバイトなど本業以外に副収入があるケースは少なくありません。しかし、個人の場合は、副収入の種類によって、税金の計算方法や納付額が異なってくることがあります。そこで、ここでは個人事業主に副収入があった場合の税金について、ケース別に詳しく解説します。

まずは、個人の税金の考え方を知ろう

個人の場合は、副収入の種類によって、税金の計算方法や納付額が異なります。それは、所得税の考え方によるところが大きいです。そこで、まずは個人の税金の考え方について見ていきましょう。

 

所得税法では、収入の発生原因に応じた課税方法を採用するため、個人の1年間の収入を10種類の所得に区分し、それぞれで所得金額などを計算することになっています。例えば、会社員の給料は「給与所得」、個人事業主の本業による収入は「事業所得」、アパートやマンションの賃貸による収入は「不動産所得」に該当します。

 

個人事業主が本業以外に副収入がある場合は、事業所得と副収入の所得の金額を別々に計算して、所得税の税金を計算していくことになります。

 

なお、所得によっては、所得金額の計算は所得ごとに行うもの、つまり複数の所得の所得金額を合算したものに税率を乗じて税金の計算をするものと、税金の計算も別に行うものとがあります。

個人事業主で複数の収入がある場合の税金

ここからは、個人事業主で複数の収入がある場合の税金について見ていきましょう。まずは、個人事業主の副収入で多い2つのケースをご紹介します。

副収入がアフィリエイトやネットオークションの場合の税金の計算方法

個人事業主の副収入で多いのが、アフィリエイトやネットオークションによるものです。まずは、それぞれがどの所得に該当するのかを判別する必要があります。

①アフィリエイト

アフィリエイトとは、ブログやホームページなどに広告を掲載し、それにより報酬を得るものです。では、アフィリエイトの収入は、どの所得になるのでしょうか。アフィリエイトの収入が副収入の場合は、「雑所得」になります。

※アフィリエイトの収入が本業の場合は「事業所得」になります。

 

雑所得の所得金額の計算は、事業所得と同じです。アフィリエイトの収入からアフィリエイトにかかった経費を差し引いたものが所得金額となります。また、所得税は事業所得と雑所得を合算したものにかかります。

 

例)事業所得500万円、アフィリエイトの所得100万円の場合

事業所得500万円+アフィリエイトの所得100万円=600万円に所得税が課されます。

②ネットオークション

ネットオークションでの売り上げは、何を売却したのかによって、所得の種類が異なります。

本業で売却したもの、例えば小売業で商品をネットオークションで販売した場合は、「事業所得」に該当します。生活用動産(家で使っていた家具、衣服、電化製品、時価30万円以下の宝石など)をネットオークションで販売した場合、そもそも生活用動産には、所得税が非課税のため税金はかかりません。

個人事業主でアルバイトやパートの収入がある場合の税金の計算方法

個人事業主で、アルバイトやパートの収入がある場合、アルバイトやパートの収入は「給与所得」になります。

 

給与所得は、原則、事業所得のように経費の計上が認められていません。その代わりに、給与金額に応じた給与所得控除があります。1年間のアルバイトやパートの収入から、給与所得控除を差し引いた金額が、給与所得金額です。令和2年以降の給与所得控除金額は次のとおりです。

 

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超 8,500,000円以下 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超 1,950,000円(上限)

 

所得税は事業所得と給与所得を合算したものにかかります。

 

例)事業所得500万円、アルバイトの1年間の収入が50万円の場合

アルバイトの1年間の収入が50万円の場合は、給与所得控除55万円より低い金額になります。そのため、給与所得は0円です。この例では、アルバイトの収入があっても、事業所得にだけ所得税がかかります。

個人事業主でアルバイトやパート以外の副収入がある場合の税金

次に、アルバイトやパート以外の副収入がある場合について見ていきましょう。

副収入で株やFXを売却している場合の税金の計算方法

アルバイトやパート以外の副収入でよくあるのが、株の売買やFXによる収入です。株の売買とFXは、税金の計算方法などは似ていますが、税金の申告方法などが異なります。
それぞれ見ていきましょう。

①株の売買

株の売買による所得は「譲渡所得」になります。譲渡所得とは、資産の譲渡(売却)による所得のことですが、譲渡した資産の種類によって、所得や税金の計算方法が異なります。株式の売却による譲渡所得の金額は、次の計算式で求めます。

 

譲渡所得金額=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)

 

株式の売却による譲渡所得の税額は、事業所得とは別に計算します。譲渡所得金額に20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税率を乗じて、税金を計算します。

 

株の売買については、証券会社で特定口座を開き、源泉徴収されている場合は、確定申告の必要はありません。

②FX

FXとは、2国間の通貨を使って利益を上げる取引のことです。FX取引による利益は「先物取引の雑所得」に該当します。先物取引の雑所得は、FXの収入から手数料などの経費を差し引いて計算します。

 

また、先物取引の雑所得の税額は、事業所得とは別に計算します。所得金額に20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税率を乗じて、税金を計算します。

 

FX取引には、株の売買のように特定口座はありません。そのため、確定申告が必要です。

土地や建物の売却があった場合の処理方法とは

使っていない土地や建物の売却収入も副収入といえるでしょう。土地や建物の売却収入も、株の売却と同様、「譲渡所得」になります。土地や建物の売却収入から、取得費や譲渡費用を差し引いたものが、所得金額になります。

 

譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

 

※特別控除とは、居住用の土地や建物を売却した場合の3,000万円控除など、土地や建物の状況によって、適用がある様々な控除のことです。

 

土地や建物の売却による譲渡所得も事業所得とは別に、税金を計算します。土地や建物の売却では、その土地や建物の所有期間によって税率が異なります。

 

譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合を長期譲渡所得、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の場合を短期譲渡所得といいます。それぞれの税率は、次のとおりです。

 

  所得税 復興特別所得税 地方税 合計
長期譲渡所得 15% 0.315% 5% 20.315%
短期譲渡所得 30% 0.63% 9% 39.63%

 

土地や建物の譲渡所得がある場合は、確定申告が必要です。

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副収入の種類で税金は変わる?個人事業主に副収入があった場合の税金とは,3分でわかる!税金チャンネル

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まとめ

所得税は、収入の種類によって、10の所得区分に分かれています。それぞれの所得によって所得金額や所得税の計算方法が異なります。個人事業主で本業以外の副収入がある場合は、まずその副収入がどの所得に該当するのかを考える必要があります。

 

同じ副収入でも、事業に関連するものかどうかや、所有期間がどうかなどで、大きく税金の金額が異なってきます。場合によっては、思ってもみない大きな金額の税金を支払わないといけないこともあります。

 

副収入がある場合で、計算方法などが不明な場合は、必ず税理士などの専門家に相談するようにしてください。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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