ふるさと納税でもらった「返礼品」課税対象になるってホント?
寄付を行うと、地域の特産品などが「お礼の品」としてもらえるふるさと納税。“巣ごもり需要”もあって、2020年度の寄付額が、制度開始以降最高を記録するなど、人気を博しています。ところで、もらった返礼品も「所得」であり、場合によっては課税されるというのを、ご存知でしょうか? なぜ、どんなときに税金がかかってくるのか、解説します。
ふるさと納税の返礼品とは?
好きな自治体に寄付できる
2008年に始まったふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行うと、1年間の寄付額のうち2,000円を超える部分が、所得税と住民税から原則として全額控除される(差し引かれる)という制度です(控除には、所得額などに応じた上限額があります)。
原則として確定申告(※1)が必要ですが、サラリーマンは5自治体までなら不要です。また、従来は寄付ごとに自治体から送られてくる「寄付金受領証明書」を基に申告する必要がありましたが、来年(2021年分)の申告からは、国税庁指定のふるさと納税サイト運営者ごとに発行される「寄付金控除に関する証明書」が1枚あれば、手続きができるようになります。
その年の所得を計算して税務署に申告し、税金を納めるための手続き。原則として、翌年3月15日が申告期限となっている。
「寄付額の30%まで」の返礼品
ふるさと納税が普通の寄付と違うのは、寄付額に応じて地域産品などの返礼品がもらえることです。そのおかげで、寄付金額も件数も順調に伸びていると言っていいでしょう。ただ、寄付金集めのために高額な返礼品を用意するといった自治体間競争が過熱したため、現在は、返礼品の金額は「寄付額の3割以下」という制限がつけられています。
返礼品は「一時所得」にカウントされる
なぜ課税対象になるのか?
さて、この返礼品が課税対象になる、という本題に話を進めます。お金を払ってもらったものなのに、どうして課税? という気持ちにもなるのですが、支払ったのはあくまでも寄付金で、返礼品の対価ではありません。言い方を変えると、返礼品はあくまでも自治体の「厚意」で送られるもので、受け取った側は経済的利益を得ている、という理屈になるのです。
さらに、この利益は、「当座預金の利子」「給与所得者の通勤手当(一定額)」のような、所得税法の定める「非課税所得」に該当しません。ですから課税対象で、具体的には「一時所得」にカウントされます。
一時所得とは?
一時所得とは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」をいいます。具体的には、次のようなものがこれに該当します。
- ①懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除く)
- ②競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く)
- ③生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除く)や、損害保険の満期返戻金等
- ④法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除く)
- ⑤遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
所得は、総収入金額から収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、またはその収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額)を差し引いて計算します。
50万円までは非課税
ただし、この一時所得には、最高50万円の特別控除があります。すなわち、50万円までなら税金はかかりません。
税額は、一時所得の1/2に相当する金額を、給与所得などの他の所得の金額と合計して計算します。仮にそうした所得が100万円あったら、
となり、この25万円(「課税所得」)に所得税が課税されます。ちなみに、所得税率(※2)が20%ならば、
になります。
この一時所得があった場合は、サラリーマンであっても確定申告が必要になります。ただし、課税所得が20万円以下の場合には、サラリーマンは申告、納税の必要はありません。給与所得以外に副業などで所得(雑所得)を得ている場合には、それと合計して20万円が基準になります。
「返礼品に課税」の注意点
返礼品は、そもそもいくら?
ところで、ふるさと納税の返礼品は、多くの場合生産者から直接送られてくるため、商品に値札などの金額表示はないのが普通です。いったい、いくらの所得になるのでしょうか?
商品価格の計算方法には、以下の2つがあります。
(1)通常の販売価格
返礼品の生産者がその製品の通常販売も行っている場合には、その価格で計算します。販売価格が不明な場合には、類似品の販売価格が目安になるでしょう。
(2)返礼品の限度額である「寄付額の30%」
166万円の寄付で課税
一時所得は、50万円までは課税されません。今の(2)の方法で返礼品の価格を計算した場合、およそ166万円のふるさと納税をすると、そのラインに近づきます(166万円×30%=49万8,000円)。
しかし、最初に触れたように、ふるさと納税による控除額には上限があって、「総所得金額等の30%」となっています。「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」(総務省ホームページ)によると、例えば給与収入700万円の独身ないし共働きの人で、寄付の上限は10万8,000円。配偶者や子どもなど扶養家族がいる場合には、さらにダウンします。
そう考えると、100万円を超えるふるさと納税というのは、ほぼ「ありえない話」ということになるでしょう。けれども、それで安心するのは、まだ早いかもしれません。
他に一時所得がある場合には、要注意!
さきほど挙げた「一時所得に該当するもの」を、もう一度見てください。これらについては、1年間に発生したものをすべて合算して計算することになっています。つまり「ふるさと納税単独では、一時所得の特別控除の範囲内だけれど、他の所得と合計したらそれを超えていた」ということが、「ありえる」わけです。中でも気をつけたいのが、比較的金額が大きくなる生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金といった「保険関係」です。
「ふるさと納税の返礼品が所得になることなど、知らなかった」といううっかりミスでも、税務署に見つかれば、「申告漏れ」を指摘されることになります。一時所得のあった人は、注意するようにしましょう。
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まとめ
返礼品で「節税」できるふるさと納税ですが、それが一時所得にカウントされることを頭に入れておきましょう。他の一時所得があった場合には、それらの合計額が50万円を超えれば課税対象になります。
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